デンバー・ナゲッツのニコラ・ヨキッチは、キャリア6年目の2020-21シーズンに自身初のシーズンMVPに輝いた。 MVPを受賞した選手史上、ドラフトの指名順位が最も低い選手としてその名を刻んだヨキッチ。卓越したスキルとバスケットボールセンスでリーグを席巻したビッグマンのシーズンを、『NBA.com』のブライアン・マーティン記者が「MVPシーズンを過ごしたヨキッチの際立った4つのスタッツ」と題した記事にて振り返っている。
平均得点(26.4)、リバウンド(10.8)、アシスト(8.3)でキャリアハイを記録したヨキッチだが、新型コロナウイルスのパンデミックにより圧縮されたシーズンで鍵となったもう一つの能力が可用性だ。今季は540選手がNBAの試合でプレイしたが、全72試合に出場したのが11人しかおらずヨキッチはその1人だった。MVPが全試合に出場するのは、2008年のコービー・ブライアント以来だ。 合計出場時間は、ニューヨーク・ニックスのジュリアス・ランドル、RJ・バレットに次ぐリーグ3位(2488分)。ヨキッチをオフェンスの起点とするチームとマイケル・マローンHC(ヘッドコーチ)にとって、特にジャマール・マレーが4月途中に前十字靭帯断裂でシーズン絶望となって以降、毎試合彼を起用できることは大きな強みとなった。
今季ヨキッチは合計アシスト数でリーグ3位(599)、平均アシストでリーグ6位に入るなど、現代ビッグマン最高のパサーとしての地位を確立させた。もしかしたら史上最高かもしれない。身長208cm以上ある選手で平均7.0アシスト超えを達成したのは、NBA史上ヨキッチとウィルト・チェンバレンしかいないが、チェンバレンが2回クリアしているのに対し、ヨキッチは今季が3回目だ。 バックドアパス、クロスコートパス、タッチダウンパスと、ヨキッチは様々な種類のパスを出すことができる。今季は17選手の得点をアシスト。最も多かったのは、マイケル・ポーターJr.(ヨキッチから136アシスト)で、そのあとはジャマール・マレー(93アシスト)、ウィル・バートン(72アシスト)、ポール・ミルサップ(54アシスト)と続く。 ヨキッチのアシストにつながる可能性のあったパス(996)からのシュート成功率は60.14%。これはチームメイトのシュート精度の高さの証であるが、正確なパスで確率を高めたヨキッチのおかげでもある。
今季ヨキッチ以上にボールに触れた選手はいない。7269回あったボールタッチ数は、1077回という差で2位を大きく引き離している。ちなみにその差は2位だったラッセル・ウェストブルック(ウィザーズ/6192回)と、10位のステフィン・カリー(ウォリアーズ/5123回)との間にある差とほぼ同じだ。101回という平均タッチ数もリーグトップで、こちらも2位のドマンタス・サボニス(ペイサーズ/97.4回)を突き放している。 ナゲッツではほぼ毎ポゼッションでヨキッチにボールが渡る。しかし、その保持時間は平均2.75秒と短く、合計の保持時間もリーグ17位(333分)だった。オフェンスで1人の選手がどれだけ起用されたかを示すUSG%は19位(29.3%)で、MVPに輝いた選手としては54位だった2005-06シーズンのスティーブ・ナッシュ以来最も低い順位だった。 今季自己最高の平均得点を記録したヨキッチだが、これらのデータは彼がスコアラーではなく、本質的にはパサーであることを示している。自分で打つシュートが最前でない限り、彼はパスを出すのだ。 ナゲッツのオフェンシブ・レーティング(116.3)はリーグ6位だったが、ヨキッチの出場時はそれが120.2まで上昇する。
ヨキッチは今季、合計得点、リバウンド、アシストのすべてでトップ5入り。また、その主要3項目の平均スタッツに関しては、すべて上位12位に入っていた。 自ら1898得点を記録し、アシストから1490得点を生み出した。合計3388得点という得点関与数は、ラッセル・ウェストブルック(3402得点)に次いでリーグ2位となっている。 リーグ史上で平均25得点、10リバウンド、8アシスト以上を達成しているのは、ヨキッチ、ウェストブルック、オスカー・ロバートソンの3人だけ。ウェストブルックは2回、ロバートソンは3回達成しているが、26歳のヨキッチがその回数を今後超えていくかもしれない。