【独占インタビュー】ウォリアーズのスティーブ・カーHC、「常に優勝争いできるように心掛けている」

「NBA Rakuten」はゴールデンステイト・ウォリアーズのスティーブ・カーHC(ヘッドコーチ)に独占インタビューを敢行。ウォリアーズの強みや昨季の振り返り、リーグの趨勢、自身のメンターなどについて語った。※インタビューは6月26日に実施。インタビュアー:大西玲央。写真提供:ゴールデンステイト・ウォリアーズ

まずはディフェンスを向上させる必要がある

──ウォリアーズだけが持つ「個性」「強さ」とはどのようなものですか? カーHC:我々の強みは3ポイントだ。パスを多く出してボールをよく動かす。ここ10年ほど、アシスト数では常にリーグ上位にランクインしており、気持ちの良いスタイルでプレイしているよ。 最も過小評価されているのは、ディフェンスの良さだろう。優勝というのは得点するだけではできず、常に良いディフェンスが必要だ。我々はそれを武器にここまでやってきている。チームのベストプレイヤーたちの年齢が高くなり、リーグのトップチームたちと競争するのが簡単ではなくなってきているが、常に優勝争いできるように心掛けているよ。 ──昨季はプレイオフ出場を逃してしまいました。今後ウォリアーズとしてはどこに重点を置くのでしょうか? カーHC:まずはディフェンスを向上させる必要がある。昨季はそこで苦戦した。強いNBAチームというのはディフェンスでリーグトップ10にランクインしている必要がある。これまではその座を維持してきたけど昨季は達成できなかったので、まずはそこを修正していく。 ──昨季は若手を多用するというのも、新たな試みだったかと思います。 カーHC:ここ2年くらいかな。だいぶ若手を起用するようにしている。就任から最初の7、8年はベテラン選手にかなり頼って、あまり若手を起用することはなかった。でも今、チームは過渡期にある。多くの若手が加わり、彼らを育成しようとしている。それは必然的にプレイタイムの増加に繋がる。

トレンドは3ポイントを打てるセンターを見つけること

──約10年前のウォリアーズが3ポイントを多用するという近年のNBAのトレンドを作りましたが、今後リーグはどのようなトレンドに変遷していきそうですか? カーHC:今一番感じているリーグのトレンドは、3ポイントを打てるセンターを見つけることだろう。今年優勝したボストン(セルティックス)には、アル・ホーフォードとクリスタプス・ポルジンギスがいた。 ボストンはどのラインナップでも、基本的には5人の3ポイントシューターがいる状態だった。この10年間、3ポイントが重視される傾向にはなっていたけど、ここまでのラインナップは誰もやったことのないことだった。全員が打てることでよりコートが広がり、リングへのレーンが生まれる。その傾向がより強まっているように感じるね。

──最近ではニコラ・ヨキッチ、ウォリアーズではドレイモンド・グリーンなど、センターやインサイド選手のパス能力もかなり重要になっているように感じます。 カーHC:それもあるね。でも形は違えども、昔からそうだと思っている。私が選手だった頃もパスの上手いセンターは多くいたけど、彼らは大体ポストアップしていた。だからトライアングル・オフェンスのように、ポストにボールを入れて組み立てていくような形が作られていた。 現代では、センターを3ポイントラインの頂点であるトップ・オブ・ザ・キーに配置している。今までポイントガードのプレイエリアとされていた場所だ。それによってオフェンスの組み立て方が反転されたような形になった。ウォリアーズでも、私が就任してから数年間、アンドリュー・ボーガットでそれをやっていた。彼も優れたパサーだったね。 私はサッカーが大好きでね。完全に同じではないかもしれないが、プレミアリーグなんかを見ていると、現代のチームはよりゴールキーパーをオフェンスに組み込むようになっているんだ。彼らがどんどん縦にボールを出していくようになっている。ゴールキーパーがプレイメイクの起点となっているように、それと似たコンセプトで今はセンターがトップからプレイメイクするようになっているんだ。

我々が成功してきた大きな理由のひとつが…

──プレイオフではお互いのミスマッチを見つけて突いていく傾向がより強まっています。全選手が、すべてのことをできるように要求されるようになってきたと感じますが、そのあたりはチーム作りする時に重視していますか? カーHC:間違いないね。この10年間で我々が成功してきた大きな理由のひとつが、サイズがあり複数のポジションを守れる多才な選手が揃っていたことだ。アンドレ・イグダーラ、ショーン・リビングストン、ドレイモンド・グリーン、ケビン・デュラント、クレイ・トンプソン。彼らはどのポジションでもスイッチで守ることができる上に、ボールを持ってプレイメイクもできた。 今年のボストンの強さもそこにある。攻守でいろいろできる大型選手が揃っていた。今はどのチームもそのモデルを目指している。シュート、ドリブル、パスでプレイメイクができるサイズのあるウィング。そういった選手をできるだけコートに出せるようになれば、攻守で強さを発揮できるんだ。 ──個性の強い選手たちを抱えながらも成功してきたわけですが、どのようにそういった選手たちをマネジメントしているのですか? カーHC:コーチとして、それぞれの選手の性格だったり、どうすればモチベーションを上げることができるかだったりを理解する必要がある。そして結束させるためには、チームが守るべき価値観やルールを設けるようにしている。全員がそれを理解し、チームの一部になるのだという想いを持たせることが重要だ。 バスケットボールはチームスポーツなので、成功するには自分のためではなく、お互いのためにプレイする必要がある。基本的には選手たちもそうしようとしていると思う。コーチとしては、そうするにあたって、正しい習慣や価値観を持って行なえるようにしてあげるんだ。

ZOOMでのインタビューに応じてくれたウォリアーズのカーHC

──コーチ・カーは試合中、チームがうまくいっていない時間帯でも選手たちに任せて、自ら解決策を見つけさせるようにしている時もありますよね。 カーHC:私は根が共同作業者というところがあってね。彼らに解決策を見つけさせるようにしているというよりも、その力を与えているという認識だ。タイムアウトを取ったら選手たちに「どう思う?」と問いかける。そうすることで、選手たちは自分たちも答えを探すことに責任を持たないといけないという気持ちが生まれる。NBAはコーチと選手の協力が成立する世界。良いチームというのは、コーチも選手もそれを理解した上で、それぞれがチームに全力を尽くすものだ。

リンゴとオレンジを比べるようなもの

──勝つためにはやはり優れたリーダーが必要です。ウォリアーズにはステフィン・カリーがおり、現役時代にはマイケル・ジョーダンともプレイしています。彼らのリーダー像の違いについてお聞かせください。 カーHC:マイケルとステフはもう完全に別人だよ。 ──それは見ていてもわかります(笑)。 カーHC:様々な形のリーダーシップが機能するのだという表れだよね。ただ共通しているのは、練習意欲、競争心、そしてバスケットボールへの愛情の深さだ。どちらもとにかく勝ちたいという気持ちが強かった。 ステフはもちろん過去形ではなく、今もその気持ちはとても強い。勝ち続けるために、毎日必死にワークアウトに取り組んで、今後に備えている。ステフをコーチできることはとてもスリリングだね。それと同時に、マイケルだったり、ティム・ダンカンにスコッティ・ピッペンだったりと、凄まじい意志と競争心を持った素晴らしアスリートと一緒にプレイできたのは最高だった。 ──よく聞かれるとは思うのですが、選手の時に在籍していた1995-96シーズンのブルズと、コーチした2015-16シーズンのウォリアーズ、対戦したらどちらが勝つと思いますか? カーHC:これは難しいんだ。当時と今ではルールがかなり違うからね。いろいろな人に聞かれるのだけど、どちらも素晴らしいチームで、時代は大きく異なる。リンゴとオレンジを比べるようなものだと思う。

コーチ・ポップは本当に良き友人

──コーチになってから、当時のフィル・ジャクソンHCに対するリスペクトや想いに変化はありましたか? カーHC:フィル・ジャクソンはスポーツ史全体において、最も素晴らしいコーチのひとりだ。彼の下でプレイするのは最高だった。コーチするすべてのチームの最大限を常に引き出せる、とても優れたリーダーだね。 ──あなたはコーチ経験がない状態からヘッドコーチに就任した数少ない人物のひとりです。コーチとしては誰がメンターに当たるのでしょうか? カーHC:メンターとなるとグレッグ・ポポビッチ(サンアントニオ・スパーズ)だね。フィル・ジャクソンも私に大きな影響を与えてくれたが、ポップは今でもリーグでコーチしていることもあって、しょっちゅう会っているよ。東京五輪では彼の下でコーチする機会もあった。彼からは多くを学んでいて、メンターと言えばやはり彼だね。 世界の見え方なんかも、同じ価値観を共有していると思っている。コーチすることに対して、選手たちに対して、そして共同作業をすることに対して、同じくらいの愛情を持っている。だからコーチ・ポップは自分にとって、本当に良き友人であり、メンターであると思っているよ。

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