ドラフト1位ルーキーのザイオン・ウィリアムソン(ニューオーリンズ・ペリカンズ)がNBAデビューを飾ったのは、シーズン45試合目となる1月22日(日本時間23日)のサンアントニオ・スパーズ戦だった。開幕直前に右ひざ半月板を損傷して以来、久々の実戦だったにもかかわらず、わずか18分間でいきなり22得点、7リバウンド、3アシストをマーク。最終クォーターでは、3ポイントシュート4本を含む17連続得点という圧巻のパフォーマンスも披露した。
デビュー以降、19試合に出場して平均23.6得点、6.8リバウンド、2.2アシスト、シュート成功率58.9%をマーク。2003年にカーメロ・アンソニー(現ポートランド・トレイルブレイザーズ)が打ち立てた記録を抜き、10代の選手としてはリーグ史上初となる10試合連続20得点超えを果たすなど、大器の片鱗を覗かせてきた。 ザイオンの特長は、公称198cm・129kgの強靭な肉体を武器にドリブルでゴールへアタックするだけでなく、ポストアップして自由自在にダンクも叩き込める万能さにある。アスレティックなパワーフォワードとして、チャールズ・バークレー(元フェニックス・サンズほか)、ラリー・ジョンソン(元シャーロット・ホーネッツほか)、ショーン・ケンプ(元シアトル・スーパーソニックスほか)らと比較されるが、ポイントガードとして育ったザイオンは彼らよりもボールハンドリングが上手く、外角からのシュート力も高い。過去のレジェンドたちの“進化バージョン”と言ってもいいだろう。
1998-99シーズンにスティール王に輝いたケンドール・ギルも、「ザイオンはラリー・ジョンソンと同じタイプの肉体を持っている。ラリー・ジョンソンが並外れたアスリートなら、ザイオンは世代に一人の逸材だ」と称賛しており、ポテンシャルは群を抜いている。
リーグ中断前までは、シーズン終盤戦で巻き返せば、ドラフト2位指名で平均17.6得点、3.5リバウンド、6.9アシストを記録していたジャ・モラント(メンフィス・グリズリーズ)との新人王争いは一層激化すると目されていた。しかし、フロリダ州オーランドで再開するシーズンに参加できなかった8チームとの公平性を保つため、MVPや新人王などの投票は再開前に締め切られることが決定。シーズンの半分を休んでいたザイオンは劣勢となったが、彼にとって個人賞はあくまで“チームの二の次”で、メンタル的な影響はないと考えていいだろう。
7月16日(同17日)に家族の緊急な健康問題を理由にオーランドを離れていたため、シーズン再開に間に合うかが懸念されたが、その後、24日(同25日)に再びオーランド入り。現地到着後の隔離期間は4日間になると報じられており、30日(同31日)ユタ・ジャズとのシーズ再開初戦には間に合うと予想されている。自粛期間に義父とのハードなワークアウトで体を絞ったというザイオンが、再開シーズンでどんなプレイを見せてくれるのか期待は膨らむばかりだ。 ペリカンズはカンファレンス8位のグリズリーズと3.5ゲーム差の10位(28勝36敗)でシーズン再開を迎える。ザイオンは7月30日(同31日)に行われるユタ・ジャズとのシーディングゲーム初戦までに再合流し、ペリカンズを逆転でのプレイオフ出場に導けるか。ゴールデンルーキーの双肩にチームの命運が懸かっている。