「I'm Back」 たったこれだけの言葉で、世界中の人々を歓喜させた男がいる。1995年3月、バスケットボールのコートを離れ白球を追い続けていたマイケル・ジョーダンが、NBAへの復帰を宣言したのだ。その翌日、インディアナ・ペイサーズ戦でさっそくブルズの一員として試合に出場すると、19点をマーク。1993年のファイナル以来、約1年9か月ぶりとなる試合、当然ブランクはあった。背番号も見慣れた23ではなく45。それでも、ジョーダンが帰ってきたことに、バスケットボールファンが熱狂した。
ジョーダンにとって復帰5戦目の相手は、ニューヨーク・ニックス。チームの大黒柱であるパトリック・ユーイングとは浅からぬ縁があった。ジョーダンがノースカロライナ大でNCAAトーナメントを制した1982年、決勝の相手はユーイング率いるジョージタウン大だった。さらに、その後NBAでもプレイオフで4度対決。いずれもブルズが制していたが、92年の対戦では先に王手をかけるなどその年の王者を最も苦しめた相手となった。 さらに94年のプレイオフでは、ジョーダン不在のブルズを第7戦で破りファイナルへ進出。イースタン・カンファレンスの勢力図を塗り替えていたのだ。 そんななか迎えたニックス戦、直近のアトランタ・ホークス戦でブザービーターを沈めるなど調子を上げつつあったジョーダンは、この日も好敵手ジョン・スタークスのマークを嘲笑うかのように次々とシュートを放ち、沈めていく。対するニックスもユーイングを軸としたオフェンスで対抗し、試合終盤まで同点という好勝負を演じたのだった。 チーム最多の36点を叩き出したユーイングに対し、ジョーダンはリーグ全体でシーズン最多となる55点をマーク。5セント硬貨がニッケルと称されることから、後にこの日のジョーダンの活躍は”ダブルニッケル”と呼ばれることとなる。 同点で迎えた最終盤。誰もが予想だにしていない結末が待っていた――。
「NBA Rakuten」では、今回紹介したブルズ vs ニックス戦をはじめ、下記の試合を配信している。