昨年11月に『NBA版穴馬予想のススメ』というコラムを書いた。競馬において、穴狙いの予想屋はあえて要素を絞ることで極端な予想をする。この考え方をNBAに転用して、今シーズンの穴馬ならぬ穴チームを当てようという算段だ。私はそのコラムでハンドラーの数のみに注目し、シカゴ・ブルズの激走を予想した。本稿執筆時点(日本時間2月8日)でブルズはイーストの9位につけているが、果たして後半戦に末脚を披露してくれるだろうか。 今週は来るオールスター・ウィークエンドの予想をしようと思う。もちろん今回も穴狙いだ。まずは14日(日本時間15日)に行われるライジング・スターズ・チャレンジのMVP。本戦に出場するルカ・ドンチッチ(ダラス・マーベリックス)とトレイ・ヤング(アトランタ・ホークス)の出場時間は少ないはずなので、おそらくチームWORLDではシェイ・ギルジャス・アレクサンダー(オクラホマシティ・サンダー)、チームUSAではザイオン・ウィリアムソン(ニューオーリンズ・ペリカンズ)、ジャ・モラント(メンフィス・グリズリーズ)をMVPに予想する人が多いだろう。しかし、私の指名はディボンテ・グラハム(シャーロット・ホーネッツ)だ。 チームUSA対チームWORLDのフォーマットになった2015年以降のMVPは、アンドリュー・ウィギンズ(ゴールデンステート・ウォリアーズ)、ザック・ラビーン(シカゴ・ブルズ)、ジャマール・マレー(デンバー・ナゲッツ)、ボグダン・ボグダノビッチ(サクラメント・キングス)、カイル・クーズマ(ロサンゼルス・レイカーズ)と、外角のシュート力に優れたスコアラーの名前が並ぶ。3ポイントに限って言えば、本稿執筆時点で平均9.4本試投し、3.5本沈めているグラハムはシェイやモラント、もちろんザイオンよりも優れている。昨年の12月にはキャリアハイの40点も記録した。スモールマーケットのエースが全米にその実力を知らしめるチャンスが来ている。
15日(同16日)のオールスターサタデーはさまざまなイベントが行われるが、まずは目玉のダンクコンテストを予想しよう。今年は、2016年にラビーンと死闘を繰り広げたアーロン・ゴードン(オーランド・マジック)が参加する。ベッティングサイトの『オッズ・シャーク』でも、ゴードンが断然一番人気に支持されているが、私の予想はドワイト・ハワード(ロサンゼルス・レイカーズ)である。他のイベントと比べると、ダンクコンテストは圧倒的にリピーターの優勝が多い。過去36年間の中で、複数回優勝した選手が6人。2008年の王者ドワイトが12年振りの優勝で会場を沸かせる。 年によって名勝負と凡戦の差が激しいダンクコンテストと違い、毎年安定した盛り上がりを見せるのが3ポイントコンテストだ。『オッズ・シャーク』では一番人気トレイ・ヤング、二番人気デイミアン・リラード(ポートランド・トレイルブレイザーズ)、三番人気バディ・ヒールド(サクラメント・キングス)という上位人気になっている。過去の王者を振り返ると、ステフィン・カリーやクレイ・トンプソン(共にゴールデンステイト・ウォリアーズ)のようなスター選手もいれば、ジェームズ・ジョーンズ(元マイアミ・ヒートほか)やマルコ・ベリネリ(サンアントニオ・スパーズ)のような職人タイプもいて、全ての選手に可能性を感じる。予想は難しいが、私は競馬で言うところの“ヤリ”に注目することにした。つまり、どの選手が最もモチベーションが高いか、という話である。開催地シカゴの選手で、優勝してダンクコンテストとの二冠を達成すれば史上初となるラビーンは、ヤリと見て間違いないだろう。オールスター選考から漏れた怒りもここで発散してほしい。 スキルズチャレンジは、3ポイントコンテスト以上に予想困難な競技だ。『オッズ・シャーク』の人気も割れている。パトリック・ベバリー(ロサンゼルス・クリッパーズ)、スペンサー・ディンウィディ(ブルックリン・ネッツ)、ジェイソン・テイタム(ボストン・セルティックス)の優勝経験組を予想するのが王道だろうが、私はあえてシェイ・ギルジャス・アレクサンダーを推す。シェイはデリック・ローズ(デトロイト・ピストンズ)の辞退を受けて出場が決まった。この時点で彼は幸運を持っている。競馬でも、皐月賞馬ノーリーズン、菊花賞馬ヒシミラクルは抽選を突破して出走し、見事に勝利した。運気を味方につけたシェイの激走に期待だ。
最後に予想するのは、16日(同18日)に行われるオールスター本戦のMVPである。ベッティングサイト『ザ・ラインズ』では、ヤニス・アデトクンボ(ミルウォーキー・バックス)が他を大きく引き離して人気を集めている。2番人気以下はルカ・ドンチッチ、ジェームズ・ハーデン(ヒューストン・ロケッツ)、レブロン・ジェームズ、アンソニー・デイビス(ともにロサンゼルス・レイカーズ)と並ぶ。 ヤニス・アデトクンボが有力なMVP候補であることは疑いようがない。自分にパスをくれる選手が欲しいと言ってドラフトでハーデンを回避したことからも、モチベーションの高さが感じられる。しかし忘れてはいけないのは、昨シーズンもヤニスは大活躍していたということである。ゲームハイの38得点を挙げたが、肝心の試合に敗れたためMVPを取り損ねた。MVPが勝者から選ばれるとすれば、1番人気のヤニスを信用するのは危険だ。今年のチーム・レブロンはドラフトに成功したように見える。穴を狙うならチーム・レブロンから探すのが賢明だろう。 私が今年のMVPに予想するのは、デイミアン・リラードだ。今年はフォーマットが変更され、1Qから3Qまではそれぞれ独立したピックアップゲームになった。そして4Qは3Qまでの合計得点が多いチームの得点に24点を加えた点数をゴールに設定、そのゴールを目指して点を奪い合うという形式だ。時間が細かく区切られるということは、選手たちは常に最終クオーターのような気持ちで戦うことになる。つまり、全クオーターで“デイム・タイム”が発動する可能性があるのだ。昨年もリラードは、ベンチスタートながら3ポイントを17本試投し、6本成功させている。絶好調で迎える今年は、昨年を大きく超える成功数を記録するはずだ。
以上、今週はNBA版穴馬予想シリーズのオールスターウィークエンド編をお届けした。他にも穴を見つけた方、いやいや私は本命党だという方、是非コメント欄にご自身の予想を書き込んで欲しい。年に一度のオールスターゲーム。今年は日本期待の八村塁選手も参加する。皆で大いに盛り上がりましょう。
大柴壮平:ロングインタビュー中心のバスケ本シリーズ『ダブドリ』の編集長。『ダブドリ』にアリーナ周りのディープスポットを探すコラム『ダブドリ探検隊』を連載する他、『スポーツナビ』や『FLY MAGAZINE』でも執筆している。YouTube『Basketball Diner』、ポッドキャスト『Mark Tonight NTR』に出演中。