“Light the Beam(ビームを照らせ)” このスローガンはサクラメント・キングスが勝利した際、チームカラーである紫の光を本拠地ゴールデン1センターの天井へ差す儀式を指す。これは今シーズンから始まったが、ファンや選手の間では有名な行事になりつつあるほど、今年のキングスは一味違う。 開幕直後に4連敗と暗雲が漂ったが、そこから7連勝のV字回復で貯金生活に突入。1月にも6連勝を記録するなど勝ち星を伸ばし続け、現在31勝23敗でウェスト3位と好調だ。NBAワースト記録の16年連続プレイオフ未出場から抜け出せるチャンスが訪れている。
そんなキングス最大の長所は、破壊力抜群のオフェンスだろう。今季は平均得点がリーグ1位(119.5 ※成績は全て日本時間2月10日時点のもの)、オフェンシブ・レーティングはリーグ2位(117.4)、3ポイント成功率もリーグ9位(36.8%)と高い数字をマーク。今季から就任したマイク・ブラウンHC(ヘッドコーチ)が、ゴールデンステイト・ウォリアーズのアシスタントコーチ時代の経験を活かしチームへと導入した、コート上の5人全員がシュートを打て、ボールを扱えるポジションレス・バスケが浸透してきている。 ブラウンHCは「今の選手はシュート、パス、ドリブルの全てができる。だからシューターとボールハンドラーがいればこのシステムは機能する」と、現代のバスケに沿った戦術をチームにもたらした。指揮官が理想とするその戦い方を選手全員が理解し、遂行できるようになったことが好調の原因だろう。
オフェンスの中心を担うのが、ドマンタス・サボニスとディアロン・フォックスだ。216cmと大柄ながらパス捌きが巧みなサボニスは今季平均18.6点、12.3リバウンド、7.0アシスト、FG成功率61.1%、そしてリーグトップとなる42回のダブルダブルを挙げるなど好成績を残している。また、平均スクリーンアシスト数はリーグ2位の5.5回、パス成功数は4位の64.5回と、潤滑油としてチームを回すキーマンとなっている。
司令塔兼スコアラーを務めるフォックスは、チームトップの平均24.1点、6.2アシスト、FG成功率50.5%を記録。特に今季はクラッチタイム(試合最後の5分間で5点差以内の展開)での活躍が目立っている。同時間帯での平均得点はリーグ1位(最低5試合以上、クラッチタイムを経験した選手が対象)の4.9点で、FG成功率も59.3%と圧倒的に高い。昨季同状況下での勝率がリーグ20位(42.5%)だったキングスだが、勝負強いフォックスの活躍もあり今季は8位(56.7%)と大幅に改善している。 サボニスはフォックスの、フォックスはサボニスの得点を最もアシストするなど、相性も良く、止めるのは至難の業。タレント揃いのウェストでも、危険視されるコンビになっている。
2人以外にも、ベテランのハリソン・バーンズ、シューターのケビン・ハーター、新人キーガン・マレー、起爆剤のマリーク・モンクなど実力者が揃うキングスだが、そのタレントの特徴を活かすブラウンHCは評価されるべきだろう。2005年から2014年までクリーブランド・キャバリアーズとロサンゼルス・レイカーズでHCを務め、その後はアシスタントコーチとしてウォリアーズの3度の優勝に貢献するなど経験豊富な指揮官への信頼は厚い。 フォックスはブラウンHCについて「彼はこのリーグで成功と失敗を全て経験している。だから彼に言われたことは必ず聞く」と語り、ハリソン・バーンズも「彼は試合のタイムアウト中に映像を使って修正するよう要求するんだ。こうやってチームに責任感を持たせることは今までなかった」とチームの変化を実感している。
長きにわたりドアマットと呼ばれたキングス。トレードデッドラインを経て、ウェストはさらに過酷になったが、勢いそのままに17年ぶりのプレイオフ進出という悲願を果たせるのか注目だ。 ■ダラス・マーベリックス対サクラメント・キングス 日時:日本時間2月11日(土)正午 会場:ゴールデン1センター 解説:中原雄 / 実況:永田実 視聴可能プラン:LEAGUE PASS