電光石火、疾風怒濤――。 この男がボールを持つと、コートに嵐が巻き起こる。NBAのトレンドを変えた司令塔。キャプテン・カナダ、スティーブ・ナッシュ。 1974年、父親がプロサッカー選手だった関係で、南アフリカのヨハネスブルグで生まれたナッシュ。その後カナダに移住し、国籍はカナダとなる。少年時代はバスケットボールの他に、サッカーとアイスホッケーにも熱中。中でもバスケで大きな活躍を見せ、アメリカのサンタクララ大に進学することとなった。 大学では2度カンファレンス最優秀選手賞に輝くなど、大活躍を見せる。そして1996年、ドラフト全体15位でフェニックス・サンズから指名され、NBA選手となった。しかし、当時のサンズにはケビン・ジョンソン、ジェイソン・キッドというスターガードが在籍。ナッシュはあまり出場機会に恵まれなかった。
1998年、ダラス・マーベリックスへの移籍を機に、ナッシュの才能が開花する。同じ時期に入団したダーク・ノビツキーと共に、低迷していた球団を強豪に押し上げた。 191cmとNBAでは小柄ながら、広い視野と華麗なパス、正確なアウトサイドシュートなど、ポイントガードとしてトップクラスの技術でチームをリードした。本人は、視野の広さは趣味でもあるサッカーのおかげと語っている。マーベリックス移籍後、チームの攻撃的なスタイルとナッシュの高い技術が噛み合い、移籍3年目に成績が大きく向上。プレイオフ常連に変貌したチームを支えた。 マーベリックスでめざましい活躍を見せるも、2004年には古巣サンズへ戻ることに。そしてこの移籍は、NBAの歴史が変わる瞬間でもあった――。