元ユタ・ジャズのジョン・ストックトンとカール・マローンは、歴代指折りの強力デュオとして語り継がれている。ジェリー・スローンHC(ヘッドコーチ)の下、彼らが得意としたのが「ピック&ロール」だった。バスケットボールにおける基本プレイのひとつを極限まで磨き上げることで“必殺技”に昇華させたが、マローンがそのカラクリを明かしている。 ストックトンはマイケル・ジョーダン(元シカゴ・ブルズほか)と同じ1984年ドラフトの1巡目16位指名、マローンは翌85年の1巡目13位指名でジャズ入り。ストックトンはキャリア序盤こそ控えポイントガード(PG)だったが、1987-88シーズン以降は16年にわたって2人とも不動のレギュラーとして君臨した。 ともにキャリア19年でストックトンは計1504試合に出場して歴代1位の通算1万5806アシストと通算3265スティール、マローンも計1476試合に出場して同2位の通算3万6928得点、同8位の1万4968リバウンドを記録。1年違いでバスケットボール殿堂入りも果たした。 優勝にこそ手が届かなかったが、1996-97シーズンから2年連続でシカゴ・ブルズとNBAファイナルを戦うなど、2人がリーグ史に残るデュオだった所以は、ピック&ロールという絶対的なオプションがあったからだ。マローンはポッドキャスト番組『Pardon My Take』に出演した際、ストックトンとの連係について語っている。 「完璧なピック&ロールを決めるには我慢、我慢、我慢さ。俺はプレイしている時、ボールはあまり持っていなかった。ピック&ロールは常にPG次第なんだ。PGがチームの仕事をしていれば、忍耐強くなる。だから堅実なんだ。俺はそれを肌で感じたよ」 ストックトンは好不調の波が少なく、常に安定したパフォーマンスを披露する堅実派の司令塔として知られていた。マローンはコート上でストックトンとのつながりを感じていたという。 「ジョン・ストックトンを見ると、少なくとも75~80%の確率でドリブルをしていて、手を挙げて俺に待てと言っていた。俺はエネルギーに満ち溢れていたし、準備はできていた。でも、彼は俺を見て言っていたよ。PGが早く動いてしまったら、俺のオフェンシブ・ファウルになるだけだってね。彼は(タイミングを見計らって)俺を守ってくれていたんだ。だから、完璧なピック&ロールは我慢なんだ」 ストックトンとマローンが、ピック&ロールで勝負に来ることは誰もが知っていた。でも、対戦相手のほとんどが完全には止められなかった。分かっているのになぜか。2人の連係をアンストッパブルなものにしていたものこそ、ストックトンの存在だとマローンは語る。 「俺たちにはショーを遂行するためにベストの選択肢を持っていた。俺もしっかりした人間だから、ピック(スクリーン)をかけた。チームメイトたちは全員どこにいるべきか知っていて、彼らがやらなければいけないことはそれだけだった。すべてはジョン・ストックトンから始まっていたんだ」 もしストックトン&マローンがひとつでもタイトルを獲得していたら――。2人の功績とピック&ロールは、ジョーダン&スコッティ・ピッペンのコンビとトライアングルオフェンスに負けないほど、高い評価を受けていたかもしれない。