シーズン停止中もNBAを楽しもう。トレーディングカード編その1、カードの楽しみ方【大柴壮平コラム vol.27】

新型コロナウイルスの影響でNBAがシーズンを停止してから、早1ヶ月が過ぎようとしている。アダム・シルバーNBAコミッショナーは未だリーグ再開を諦めていないようだが、もし可能だとしても数ヶ月先になる見込みである。観戦という最大の楽しみを突然奪われ、一体何をして余暇を過ごせばいいのかわからないと途方に暮れている方も多いだろう。そこで当コラムでは、試合観戦以外のNBAにまつわる趣味を折に触れて紹介していきたいと考えている。今回はその第一弾、トレーディングカード編である。

初めてサイン入りのカードを手にした時の興奮は20年経っても色あせない

今回トレーディングカードを紹介するに当たり、友人のコレクターに協力してもらった。私と一緒にポッドキャストをやっている通称にゃお君である。にゃお君は中学1年生だった1996-97シーズンからカードの収集を始めたという。NBA好きの父親の影響で当時BSで放送されていた試合や地上波深夜帯の情報番組などを観ながら、にゃお君自身もNBAに興味を持ち始めた頃の話である。 友人と一緒に寄ったスポーツショップでトレーディングカードが売られているのがふと目に入り、何の気なしに1パック購入したのが全ての始まりだった。当時は、選手の情報を集めるにはシーズン前に出る年鑑を買うか、テレビで断片的に仕入れるしかなかった時代である。元々選手のスタッツに興味のあったにゃお少年は、カード裏面に載っていたスタッツに目を輝かせた。好きな選手のカードを保有する喜びもあったが、それ以上に知らない選手のスタッツを見るのが楽しくなり、毎週小遣いをもらっては1、2パックずつ買い足していくようになった。 いつしか収集用のアルバムを購入し、選手名鑑代わりにそれを眺めるのが日課になったというにゃお君だったが、一過性に終わらずコレクターになったのにはきっかけがあったという。ある日、ブレント・バリー(当時ロサンゼルス・クリッパーズ)のサイン入りカード(以下、トレカ用語のオートを使う)が当たったのである。当時は240パックに1枚しかないという貴重なカードだった。

にゃお君が使用している収集用のアルバム

「その日お母さんに自慢したのを覚えています。すごいでしょ、ダンクコンテストを優勝したNBA選手のサインだよって。20何年経ってもいまだにその日のことを覚えているんです。20年前と今だとカードのサインの出やすさとかいろいろ違うんですけど、感動は多分一緒だと思うんですよね。今から始める人もきっと感動すると思います」

最も充実感を得られる集め方

にゃお君によれば、楽しみ方は大きく分けて3つあるという。そのうち2つは、にゃお君のカード収集の原風景に通ずる。知らない選手のことを知る楽しみ、そして通常なら現地で直接もらわなければ手に入らない憧れの選手のオートを手に入れる興奮である。もう1つは、気に入ったシリーズのカードをコンプリートすることで、にゃお君いわくこれが一番根気がいるものの、最も充実感を得られる集め方かも知れないとのこと。 にゃお君の場合は、まずレギュラーカードをコンプリートした名鑑作りからスタートし、次に特定の好きな選手に絞ってカードを集める方法にシフトした。最初に集めたのがエイブリー・ジョンソンのカードである。にゃお君と同じ左利きのガードで、1999年にはサンアントニオ・スパーズの一員として優勝も経験した。

エイブリーの収集が落ち着くと、今度は同じく左利きのガードということでジェイレン・ローズに移った。さらに2008-09シーズンにはまだまだ粗削りながら伸び代を感じさせた、ルーキー時代のラッセル・ウェストブルックの収集を始める。その後イケメンのチャンドラー・パーソンズやエバン・フォーニエを経由して、最後はビクター・オラディポに辿り着いた。しかし、今はそのオラディポのコレクションもやめたという。

ビクター・オラディポのコレクション

「一人の選手を集めるのは、相当な愛と根気が必要なことに気づきました。その時その時で旬の選手を追いたい気持ちもあるし、何より全部集めようとするとキリが無いんです」 実際に一人の選手を集め続け、にゃお君いわく「変態的に」その道を極めた人もいると言う。そういった変態コレクターになると、アルバムの1面9枚を同じ選手の同じカードで埋めなきゃ気が済まないそうである。このシリーズのこの選手のカードだったら何枚でも手に入れるという意味で、「無限取り」なる専門用語もあるとのこと。にゃお君はそういった本気の選手コレクターを見て、自分には向いてないと悟った。

にゃお君が辿り着いた、現在の収集方法

一人の選手を追いかけることを諦めたにゃお君は、楽しみ方を変えた。好きな選手は複数いる。彼らのオートは欲しい。しかし、全てのオートを集めていてもキリがない。そこで、リストアップした好きな選手のオートを1枚ずつ集めることにしたのだという。リストの中から持っていない選手のオートを探す。仮にすでにコレクションしている選手のオートが新たに手に入った場合は、デザインが好みの方を手元に残し、もう一方は売りに出す。手元に残すカードをマイ・コレクション、略してマイコレ、手放してもいいカードは提供カードと呼ばれる。

オートカードコレクションの一部

「このやり方だと、いつまでっていう期限もないし、どのブランドのカードじゃないと駄目っていうルールもないんです。この集め方に落ち着く方も、結構多いと思います」 長く楽しめることもこの収集方法のいいところだとにゃお君は言う。まず、にゃお君が欲しい選手はレジェンドクラスが多いため単価が高く、簡単には手に入れることができない。さらににゃお君は独自に、「予め自分のリミット額をある程度決めておき、リミット内で入手できるチャンスまで待つ」というルールを設けているそうである。例えば相場が20,000円のシャキール・オニールのオートが30,000円で売りに出ていても、にゃお君の場合は縁がなかったと諦める。 仮にリストアップした選手のオートが全て手に入っても、マイコレのグレードアップを目指すことができる。また、当然ながら毎年ルーキーが入ってくるので、オートが欲しい選手のリストも年々増えていくことになる。にゃお君のコレクター人生はこうして続いていくというわけである。


今回はトレーディングカード編のその1として、楽しみ方に焦点を当てて書いた。お気づきの方も多いと思うが、まだこのコラムだけではトレーディングカードの説明としては片手落ちである。来週はトレーディングカードの売買や交換の根幹となる、カードの価値について説明する。カード収集歴20年超えのにゃお君いわく、近年カードの価格が暴騰しているとのこと。一体カード業界に何が起きているのだろうか。次週へ続く。

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大柴壮平:ロングインタビュー中心のバスケ本シリーズ『ダブドリ』の編集長。『ダブドリ』にアリーナ周りのディープスポットを探すコラム『ダブドリ探検隊』を連載する他、『スポーツナビ』や『FLY MAGAZINE』でも執筆している。YouTube『Basketball Diner』、ポッドキャスト『Mark Tonight NTR』に出演中。

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