躍動するラプターズの新エース、パスカル・シアカム

2ウェイプレイヤーとして急成長を遂げているパスカル・シアカムが、王者トロント・ラプターズにとっての最重要選手だったカワイ・レナードの抜けた穴を埋める活躍を披露している。 わずか1年しかチームを共にしなかったが、シアカムはレナードの弟子的な存在だ。ラプターズを初優勝に導いたレナードとの時間は、チームを背負うことについて学ぶには十分な期間であったことを、その座を受け継いだシアカムが証明している。 レナードもこの事実を喜んでいると思われるが、現地11日（日本時間12日）にロサンゼルスで開催されるラプターズとクリッパーズの一戦では、実際に敵として対戦する大変さを味わうことになるかもしれない。クリッパーズ移籍後初めて古巣と対戦するレナードと、シアカムのマッチアップはこの試合における最大の着目点となる。 「今まで彼と対戦する機会はあまりなかったけど、彼と一緒にプレイできたことは本当に光栄なことだった」とシアカムは語る。 シアカムは現在、平均27.4得点、9.4リバウンド、3.2アシストを記録するなど、様々な形で試合にインパクトを残し、レナード同様の万能性を披露している。チームにおけるファーストオプションとしての座を揺るぎないものとしているが、カイル・ラウリー、サージ・イバカが負傷で離脱する今、彼の重要性はさらに高まっている。 レナード移籍後のラプターズは、ここまで7勝2敗と王者の意地を見せているが、迎えるクリッパーズ戦でもシアカムの存在は必要不可欠だ。 「カワイがいなくなり、彼には自分にはより自由が与えられた」と語るのはシアカムと同期のフレッド・バンブリート。 「当然昨季はカワイのチームだったが、今はパスカルがチームの中心。僕らの想像通り彼は活躍している。毎年成長を見せているけど、今季も例外ではなかったね。彼にとっては自信をもって気持ちよくプレイすることが大切なんだ。彼が上手くなればなるほどチームは強くなる」 想定以上の早さで成長するシアカムだが、チームはその活躍に驚いていないはずだ。先月、4年1億3000万ドルで契約延長を締結したという事実が、シアカムに対する信頼を表している。またキャリア4年目を迎える25歳のシアカムは、その金額に見合う価値を持った選手といえるだろう。 彼は昨シーズンのNBAファイナルで、その真価を発揮した。自身初のファイナルとなったシリーズ初戦で32得点、優勝を決めたゲーム6では26得点を叩き出すなど、ファイナルMVPに輝いたレナードをしっかりと援護し、今はそのレナードの役割を引き継いでいる。 今季は9試合で30得点以上を4度、現地11月8日の試合ではキャリアハイの44得点をマークしているシアカムだが、レナードと共にプレイしたこと、その活躍を間近で見ていたことが、自身にとってかけがえのない経験になったと語る。 「とても多くのことを学んだ。特に彼のどんな時でも焦らない冷静さは、自分も取り入れようとしている。何本シュートを外そうが自信を持ち続ける。彼はそのタフさを持っていた」 シアカムとレナードにはいくつか共通点がある。ともにロッタリー指名ではなくスター選手として見られていなかったことや、選手育成に定評のあるチームに所属していたこと。身体能力を生かしたプレイが得意で、努力で今の地位に上り詰めたこと。またレナードはティム・ダンカン、そしてシアカムはレナードと、優秀なメンターに恵まれたことなどが挙げられる。 ラプターズのニック・ナースHCは2人の関係性について、「プロとしての在り方を学んだと思う。カワイは努力家で、休みの日でも練習していた。カワイはパスカルが自分に似ていると感じていたんじゃないかな。今年の夏、彼らは一緒に練習していたようだしね。パスカルはコート内外で多くのことを学んだと思う」とコメントした。 平均4.2得点を記録したルーキー時から毎年成績をアップさせ、今季27.4得点まで数字を引き上げているシアカムのオフェンス面における劇的な成長についてナースHCは、「スコアラーとして本格化した」と称賛している。 バンブリートは躍進する新エースをチームで支えていくと宣言する。 「彼のように才能があり、努力家であれば失敗するなんてあり得ない。自分としては彼が毎日気持ち良くプレイできるよう、どんなことがあろうと彼をサポートするよ。ミスすることもあるだろうけど、彼の後ろには僕らがついている。彼は地に足がついていて、人柄の良さは会った時から変わっていない。それが彼が特別である理由のひとつだね」 リーグのトップ選手として認められるには、最高の選手たちから学ばなければいけない。シアカムが、レナードに自身の力を示す時がやってきた。 「きっと面白くなるよ」とシアカムは語った。