【徹底討論　あなたはどっち派？】Round2：2019-20シーズン、誰がMVP？

Basketball DinerでMCを務めるダブドリ編集長の大柴壮平氏とNBAライターの大西玲央氏が、毎週ひとつのテーマについて徹底討論する企画。今週のテーマは2019-20シーズンMVP予想！

みんなカリーの凄さに慣れちゃっているんですよね（玲央）

【カリー派　玲央】 めちゃくちゃ迷ったんですが、僕の今シーズンのMVP予想はステフィン・カリーにしました。誰もが彼がすごい選手だということはわかってると思います。でも、みんな慣れちゃってるんですよね、カリーのすごさに。「史上最高のシューターだよね」みたいな認識だと思うんですけど、カリーはそれだけじゃないんです。ディフェンスを寄せ付ける力、周りを上手くする能力もあります。KD（ケビン・デュラント）が去って、クレイ・トンプソンも怪我で出場できないということで「今シーズンのウォリアーズはダメ」という空気になっています。そんな中でこそカリーはめちゃくちゃ活躍するタイプだと思うんです。 2015-16シーズンにMVPを獲った時は本当にすごかったですよね？　平均30点超えで、スリーポイントも402本成功という記録を作りました。今シーズンはあの記録を破ると思います。得点王も獲ります。そういうことを考えると、やっぱりカリーがMVPになるんじゃないかな、と。 それだけカリーは逆境に強いんです。今までウォリアーズには「KDが来て最強チーム作って、なあなあでやってる」という批判がありました。KDがウォリアーズにいた間、カリーは一歩下がるスタンスを取っていましたが、これからは最年長で経験もあるカリーが、チームを引っ張っていくはずです。チームを引っ張る立場になったカリーは恐ろしいですよ。実際、プレシーズンでも25分で40点取った試合がありました。おそらくシーズン中もこの勢いが続くでしょう。MVP投票には記者の感情が入ってきますが、「ダメそうだったウォリアーズをカリーが引き上げた」というストーリーは記者に好かれると思います。 もしカリーがMVPを獲ると、3回目の受賞になります。3回以上MVPを獲った選手は、NBA史上9人しかいません。カリーはそこに並ぶ選手になって欲しいので、そういう希望も含めてカリー推しです。

7フッターのヨキッチがチェンバレンを超えるアシスト数を記録するかも（大柴）

【ヨキッチ派　大柴】 MVPを予想するには、どのチームが強いかというのが大事なポイントだと思います。基本的には各カンファレンスの上位2チームの中から選ばれることが多いです。例外は2016-17シーズンのラッセル・ウェストブルックのように、何十年振りのシーズン・トリプル・ダブル達成といったモンスター・スタッツが出た場合です。そういうシーズンはプレーオフに下位で進出したぐらいのチームからMVPが選ばれることもありますが、基本的には上位チームから選ぶのが定石だと思います。 というわけで私のMVP予想は、デンバー・ナゲッツのニコラ・ヨキッチです。ご存知の通り、昨シーズン優勝したトロント・ラプターズからカワイ・レナードが抜けて、これまで最強だったゴールデンステイト・ウォリアーズからKDが抜けて、優勝争いが混沌としてますよね。確実に上位に行きそうなのは、東だとバックス。西ではナゲッツなのかなと思います。バックスは昨シーズン60勝したんですけど、キー・プレイヤーのマルコム・ブログドンがいなくなったので、同じだけ勝てるかというと微妙です。2シーズン連続MVPを受賞するのはかなりハードルが高いので、60勝できないようならヤニス・アデトクンボは厳しいと思います。 一方、ナゲッツは54勝で西の2位になりました。今シーズンはジェラミー・グラントが加わって、昨シーズン改善されたディフェンスがさらに良くなると思われます。今シーズンのナゲッツは60勝に乗る可能性がありますし、そうなればエースのヨキッチにMVPをあげる空気が出てくるのかな、と。 ナゲッツがいいだけじゃなくて、もちろんヨキッチ自身もすごい選手です。昨シーズンの彼は20点、10.8リバウンド、7.3アシストというスタッツを記録しています。ザック・ロウによると、6フィート11以上の選手で年間7アシスト以上を記録したのが、なんと60年代のウィルト・チェンバレンとヨキッチの2人のみだそうです。超えられない記録をいくつも持っているでお馴染みのチェンバレンの背中が見えているんです。今シーズンさらにナゲッツが良くなって、60勝以上してという良いサイクルができたら、7フッターのヨキッチがあのチェンバレンを超えるアシスト数を記録するかも知れない。チェンバレンを超えたらMVP間違いなしでしょう。誰も超えられないチェンバレンを超えて、9アシストぐらいして欲しいですね。

今シーズンのカリーはゴー・トゥ・ガイ（玲央）

【カリー派　玲央】 上位2チームから選ばなければいけないっていうのはもちろんわかるんですけど、ロサンゼルス・クリッパーズやヒューストン・ロケッツがいる中で、果たしてナゲッツが上位2チームに食い込めるかは疑問ですし、ナゲッツが上位2チームに入らなければヨキッチが選ばれないという理論なら尚更成績面が心配です。 チェンバレンが超えられない壁というのはたしかにそうなんですけど、カリー自身がすでに超えられない壁になっていますからね。誰もカリーを超えられないです（笑）。 補足ですが、今シーズンのカリーはゴー・トゥ・ガイになったので、モチベーションが高いです。さっき今シーズンは自身の持つ402本というスリーポイント成功記録を破ると言ったんですが、あと490本でレイ・アレンの持つNBA歴代最多スリーポイント成功数に並びます。今シーズン、490本決めてもらいたいですね。

リピーターに厳しいMVP投票（大柴）

【ヨキッチ派　大柴】 もちろんご指摘の通り、ナゲッツが上位2チームに入れるという保証はありません。しかし、可能性としては高いと思います。逆にウォリアーズはいくらカリーが引き上げると言っても、上位2位まで行けるかというと、かなり微妙だと思っています。 玲央さんの立論で、3回MVPを獲ったのはNBA史上9人しかいないという話があったんですが、たしかにMVP投票はリピーターに厳しいんです。そういう意味でも獲れば初受賞になるヨキッチの方が、選ばれやすいと思います。 カリーは402本スリーを決めて、チームを勝たせた過去の自分と比較されてしまうので、3度目のMVPは厳しいのではないでしょうか。さっきカリーは超えられない壁だと言ってましたが、カリー自身にとっても過去の自分が超えられない壁になってしまう可能性があります。僕もカリー好きなんで、490本は見たいですけどね（笑）。 あと、カリーは逆境に強いっていう話なんですが、カリーはファイナルMVPを獲ったことがないんですよ。一人でどこまでやれるのかっていう点も心配だなと思います。

　

化物スタッツに期待したいけどね（玲央）

大柴：まあ、カリーのMVP見たいですけどね。僕、カリー好きなんで（笑）。見たいんだけど、ちょっと厳しくない？ 玲央：でも2015-16の時も、クレイ・トンプソンがまだスーパー・クレイになる前だったからね。KDはもちろんいなかったでしょ。だから条件的には、実質今シーズンと変わらないんじゃないかな。 大柴：クレイ帰ってくるのって最後の最後でしょ？ 玲央：多分オールスターぐらい。 大柴：あ、そんな早いんだ。 玲央：早ければそのぐらい。それまでも一応ディアンジェロがいるから。 大柴：ディアンジェロね。合えばいいけど。クレイがすごすぎるからな。ディアンジェロもいいプレーヤーなんだけど、クレイとカリーのコンビがすごいからな。 玲央：そこはリプレイスで考えるべきではないと思う。でも、カリーがずっと一人でポイントガードやって、なおかつ得点もしてっていうのをやらなくて済むじゃん。二人の間では「ディアンジェロがボール持ったらボール運んでいいよ」ってなってるらしい。オフボールの動きもできるし、本来の一人で頑張る動きもできる。単純にアイソレーションも増えるだろうし、カリーの数字は絶対伸びると思う。 大柴：まあ伸びて欲しいね。 玲央：得点王になるじゃん？ 大柴：なるじゃんって言われても（笑）。こないだのウェストブルックの話じゃないけど、クレイはディアンジェロよりディフェンスもいいからね。そこら辺も加味して、カリー云々より勝ち星が心配かな。下位チームから選ぶのは本当に化物みたいなスタッツじゃないと厳しいと思う。 490本決めたらなると思うけど（笑）。 玲央：その化物スタッツに期待したいけどね。ラスがそうじゃん。プレーオフはギリギリだったけど、歴史的な記録を残したってことで選ばれた。カリーが何か歴史的なことをやるのをボンヤリと期待したい（笑）。 大柴：フワッとしてるな（笑）。 玲央：どっちもヤニス選ばなかったけど、特にない？ 大柴：俺はヤニスかヨキッチだと思ったんだけど、去年の60勝が出来すぎな気がする。ブログドンいないのもかなり痛いと思うし。 玲央：チームとして同じことができるか怪しいし、スタンダードが高くなっちゃってるってことね。でも、各種サーヴェイとかだとみんなヤニスを予想してるんだよね。 大柴：玲央さん、ヨキッチは実際のところどうですか？ 玲央：ヨキッチは俺も好きなんだけど、平均20点ぐらいでMVP獲った選手って、だいぶ遡らないといないんだよね。多分スティーブ・ナッシュとかなんだよね。 大柴：俺のイメージはティム・ダンカンがMVP獲った時。スパーズを引っ張ってた結果、ダンカンがMVPになったのと同じケース。 玲央：結局それも20年以上前の話でしょ。 大柴：いやいや、たしか2000年代にも獲ってるはず。 玲央：うーん、2000年初頭とかの話でしょ。最近はスタッツ重視な感じがあるから、ヨキッチみたいなタイプがどこまで評価されるかね。 大柴：だからやっぱりチェンバレン超えを果たしてほしいな（笑）。