NBAの運営理事会が、タンパリングや交渉期間外の交渉を行った選手やチームに対する罰則を強化することを、全会一致で決定した。 新たな罰則規定はまだ詰めの段階ではあるが、タンパリングの罰則は最高で1000万ドル(約10億8000万円)に、不適切な契約の罰則は最高で600万ドル(約6億5000万円)に、他チームの選手を誘惑するような発言をした際の罰則は最高で500万ドル(約5億4000万円)に、それぞれ増額されるそうだ。 しかし、厳罰が課せられるのは、リーグの30球団がそれを望んだ場合に限るようだ。 タンパリング等の罰則が最初に規定された1996年と現在のリーグの状況を比べると、リーグの収益は600%アップし、NBAチームの価値も1100%アップしているので、罰金の額もそれ相応にアップすべきではないかと、NBAは主張していた。 アダム・シルバー・コミッショナーは今年7月に「我々リーグ側が力を持たないルールでは意味がない」という考えを示し、リーグの公平性を保つために罰則を強化する可能性を示唆していた。 その際に、シルバー・コミッショナーは「フリーエージェント交渉が解禁される6月30日の午後6時以前に、幾つかのチームと選手が既に話し合いを済ませていた形跡がある」と指摘し、フリーエージェントの仕組みに手を加える必要性を説いた。 チームと選手間の期限前交渉に対してリーグ側が抑止力を持っていなかったため、何年もの間こういった動きが野放しになっていた。特に今夏のフリーエージェント市場はその動きが顕著で、フリーエージェント解禁後のわずか90分の間に総額14億ドル(約1500億円)以上の契約が矢継ぎ早に交わされるという異常事態が起こった。しかも、それらの契約は既に暗黙の了解として知れ渡っていたものばかりだった。 また、今オフのフリーエージェントでは、契約金額以外の理由で移籍先を決める選手や、トレード先を所属チーム側に申し出る選手も現れた。こういった状況について、シルバー・コミッショナーは以下のように警笛を鳴らしている。 「我々1人1人が、このリーグのコンプライアンスを作り上げるという強い意志を持たなければならない。各チームは、平等で公平なフィールドの上で競い合うことを望んでいる。また、時に忘れられがちだが、リーグに所属する約450人の選手たちも、競争力のある状況を望んでいます。特定のチームが他のチームよりも有利に戦っているという感覚を生むシステムを、彼らは望んでいません。そんな状況では、一部の有利なチームに所属する選手だけが良い思いをするからです」 「今回の罰則強化は『リーグ・オフィス対NBAチーム』という構図を意味していません。我々が望むのは、NBAの文化を変えることです。どんな業界でも、誰かが卑怯な手口を使ったり、どんな手段を使ってでも成功を収めようとする人が現れると、その影響で損な役回りになる人々が必ず出てきます。我々は、そういった損な役回りの人々に救いの手を差し伸べたいと思っています。どこの世界にも完璧なシステムというものは存在しません。ですが、少なからず、誰もが誠意ある同業のパートナーたちに支えられています。そして、それこそが、人々が公平に競い合いたいと願っている文化なのです」