【NBA Rakuten解説者インタビュー】佐々木優一さん(専修大学監督)「NBAの進化が止まらないので、すべてが見逃せない」

11月29日(水)のミルウォーキー・バックス対マイアミ・ヒート戦で「NBA Rakuten」の解説に初登場いただいた佐々木優一さん(専修大学男子バスケットボール部監督)にインタビュー。佐々木さんは専修大学のプレイヤーとしてインカレ、リーグ戦、トーナメント戦、新人戦と大学バスケの全タイトルを獲った後、同大でコーチに転身。指導者としても関東大学選手権優勝をはじめ数々の実績を残している。そんな佐々木さんに、コーチ視点でのNBAの見どころなどについて聞いた。※インタビューはバックス対ヒート戦の解説後に実施。

勉強しつつ楽しみながらNBAを観ています

――本日はお疲れ様でした。解説は大学生の頃に番組の企画でゲスト解説を務めた以来とのことでしたが、いかがでしたか? 佐々木:約20年ぶりでしたね。最初はめちゃくちゃ緊張しましたよ。でも試合がすごいクロスゲームで面白かったですし、カズ(中川和之さん)からいろいろアドバイスもらって事前準備をしてきたので、それが良かったです。あとはこれまでNBAの解説をされてきたレジェンドの方々と同じようなことを話してもなぁと思っていました。普段は監督を務めているので、どういう意図でこの選手を出して、その後どういう流れになっていくのか、みたいなところを自分なりの感覚で話せたらと考えていました。 ――監督としてチームの事を考えつつ、さらにNBAまでカバーするのは大変そうです。 佐々木:監督業は大変なこともありますが、そのストレスをNBAを観て発散する感じです。家族からは「バスケのストレスをバスケで解消ってどういうこと?」という目で見られていますが(笑)、最近は勉強しつつ本当に楽しみながらNBAを観ています。 ――特に参考にされているチームなどはありますか? 佐々木:ヘッドコーチやチーム作りという視点で観ることが多いです。グレッグ・ポポビッチHC(ヘッドコーチ)がいるスパーズはずっと好きでしたね。ポポビッチHCは人間性と育成力が素晴らしい。先日もスパーズのホームでカワイ・レナード(クリッパーズ。過去にスパーズに在籍)に対してブーイングが起きた際に、アリーナMCのマイクを掴んでファンをなだめていました。賛否両論あるとは思うんですけど、やっぱり人間力を感じますね。

佐々木監督が注目するポポビッチHC。先日はレナードへのブーイングをいなす発言が話題に

リラードを観る面白みは増している

――佐々木監督のNBAの原体験について教えてください。 佐々木:NBAを見始めたのはマジック・ジョンソン(元レイカーズ)とマイケル・ジョーダン(元ブルズほか)の全盛期ですね。特に自分は現役時代にポイントガードだったので、マジックが好きでした。小学校に持っていく下敷きにはマジックの写真を挟み込んだり。やはりあの変幻自在なパスに魅了されました。あとはティム・ハーダウェイ(元ウォリアーズほか)も好きでしたね。 今日の解説でももしかしたらコメントが偏ってしまったかもしれませんが、ポイントガードのカイル・ラウリー(ヒート)に注目していました。ゲームメイクが素晴らしかった。デイミアン・リラード(バックス)もブレイザーズ時代はスコアリングが主な仕事でしたけど、バックスではしっかりゲームメイクもしています。そういう意味でもリラードを観る面白みは増していると感じていますね。 ――ガード以外で気になる選手はいますか? 佐々木:スパーズのビクター・ウェンバンヤマは観てしまいますね。本当に規格外。今までもNBAは異次元な世界でしたが、さらにその上のレベルに達しているなと。スパーズはあまり勝てていないですが、それでもやっぱりウェンバンヤマは「今日は何をしてくれるだろう」って観たくなります。 もう1人はサンダーのチェット・ホルムグレンです。昨季全休していましたがチームを近くで見ていたということもあって、ウェンバンヤマよりフィットしている印象です。サンダーは若いですが全員が各々の仕事を理解しており、バランスがいい。その中でウォリアーズ戦のようにラストショットを任されているという事実もある。なので、現時点ではチェットの方が一枚上手かなと思っています。

今季が実質1年目のホルムグレン。チームへのフィット具合から、佐々木監督も「現時点ではウェンバンヤマより上」と太鼓判を押す

八村はまだ伸びしろが十分ある

――サンズの渡邊雄太とレイカーズの八村塁についてもお聞かせください。 佐々木:コーチ視点で言うと、やはり渡邊選手のようにコーチが求めることを理解して、それをコート上で全力で出し尽くそうとする姿勢はいいですね。それが結果にもつながっている。役割が明確なので、コーチとしてはとても起用しやすいんじゃないかと思います。先日、デビン・ブッカーのラストショットでニックスに勝った試合でも、渡邊選手は最後までコートにいましたからね。単にプレイタイムが長いか短いかじゃなくて、大事な場面でコートに立っていることが大切。それはコーチやチームの信頼がないとできないことですから。 ――八村はいかがでしょうか? 佐々木:レブロン・ジェームズと一緒にワークアウトを行なうなど信頼も得ているでしょうし、2ndユニットの得点源として確立してきていると思うんですね。脳震盪や鼻骨骨折など不運もありますが、状態が上がってくれば最終盤の局面でレブロン、アンソニー・デイビスに次ぐ第3のオプションとして起用されるというのも時間の問題だと思いますね。もちろん、そのポジションは彼が勝ち取らなければいけないんですけど、あとはディフェンスが良くなってくると本当に不可欠な存在になれるはずです。そういう意味では、まだ伸びしろも十分ありますね。 ――開幕から約1か月が経ちました。佐々木監督が気になっているチームはありますか? 佐々木:ペイサーズはオフェンスに振り切っていて面白いですね。オフェンシブ・レーティングはリーグトップだけどディフェンシブ・レーティングは下位みたいな。攻守のバランスがいいチームは安定感があって強いと思うのですが、何かやってくれるんじゃないかってワクワク感があって魅力的ですね。あとはジョー・イングルズが加わったくらいで主力が昨季から変わらないマジック。ディフェンスもみんなハッスルしているし、チームケミストリーもいい。たまたま勝っているという感じじゃないです。この快進撃がどこまで続くか気になります。

佐々木監督が注目するマジックとペイサーズ。今季序盤戦はいずれも勝率5割超えと結果を残している

――いろいろ移籍があったり新しい選手が出てきたりと慌ただしいNBAですが、特に今シーズンのテーマをつけるとしたら? 佐々木:今こうして話していても、本当に見たいチームが多いなって。なので一言で言うならば、すべてが見逃せないっていう感じです。NBAの進化が止まらないので、すべてが見逃せないです。時間が全然足りないです。

大学の選手たちも練習前などにNBAをチェック

――佐々木監督が指揮されている専修大学男子バスケットボール部ソアラーズは、12月4日(月)から全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)を控えています(専修大学は8日に初戦)。今季のソアラーズはどんなチームですか? 佐々木:うちのチームはすごく個性があります。一見バラバラに見えても、一人ひとりがまとまった時の強さがある。もちろん学生なので未完成な部分はありますが、それぞれの個性とチーム力を合わせて見れば、専修大学らしい面白さを感じて頂けると思います。 ――専修大学の選手たちはNBA観ていますか? 佐々木:めちゃくちゃ観ていますね。練習前などによくNBAをチェックしています。みんなそれぞれ好きなチームがあるので、それらのチームが対戦していると選手同士も一緒になって盛り上がったりしています。先日のウォリアーズ対サンダー戦で第4クォーター最後にチェットが延長に持ち込む3ポイントを決めた時も、体育館が湧いていましたよ。

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