NBAの常識を覆したのは、遙か遠くヨーロッパから来た男だった。 高い打点から放たれるボールは、正確にリングを射貫く。まさに伝説のロビン・フッド、異色の名シューター。ダーク・ノビツキー。 ノビツキーは、1978年にドイツのヴュルツブルクに生まれる。はじめはハンドボールとテニスに熱中していたが、ドイツ代表のバスケットボール選手だった母の影響もあり、バスケに転向。当時ノビツキーのアイドルは、マイケル・ジョーダンだった。 16歳の頃、地元チームでプロデビュー。ドイツプロリーグで才能を開花させ、夢のNBAへ挑戦することに。1998年、ドラフト1巡目9位で、ミルウォーキー・バックスから指名を受ける。その直後のトレードで、ダラス・マーベリックスに入団した。 同時期に移籍してきたスティーブ・ナッシュと共に、当時低迷していたチームの再建を託される。しかし1年目は、NBAのフィジカルの強さを目の当たりにし、苦難の日々を送る。
その悔しさをバネに フィジカルとスキルの強化に励んだノビツキーは、2年目で見事NBAに適応。持ち前の高いスキルに加え、身長213センチという大型センターに匹敵する体格は大きな武器となった。 さらにこの男は、NBAの常識を覆す能力を持っていた。当時2メートルを超えるビッグマンの主戦場はインサイド。しかしノビツキーは、ロングレンジのシュートを高い確率で次々と決める。2メートル以上の高さから放たれるフェイダウェイシュートは、誰も止める事が出来なかった。どこからでも正確にリングを射貫くその姿は、伝説の弓の名手ロビン・フッドに例えられるほど。 NBAのスター選手となったノビツキーは、2006-07シーズンに平均24.6得点、8.9リバウンドを記録し、ヨーロッパ出身選手初のシーズンMVPを獲得。 そして2011年、5年ぶりのNBAファイナル進出を決めたマーベリックス。相手はレブロン・ジェームズ、クリス・ボッシュ、ドウェイン・ウェイドという当時最強のビッグ3を擁するマイアミ・ヒートだった。