ロサンゼルス・レイカーズのレブロン・ジェームズは今季、プロ17年目にしてアシストランキングでリーグ首位(平均10.6本)を快走した。NBA入りした当初のクリーブランド・キャバリアーズ時代から“ポイントフォワード”として非凡な才能を見せてきたが、1年間を通してポイントガード(PG)を務めたシーズンはこれまでない。もともとアシストに楽しみを持つ“パスファースト”の選手だけに、フランク・ボーゲルHC(ヘッドコーチ)による配置転換は見事に的中した。
リーグ中断前までのレブロンは、リーグ9位の平均26.7得点を挙げているアンソニー・デイビスを立て、ゲームメイクに重心を置いている印象だ。もちろん勝負どころではギアを上げ、圧倒的な決定力でチームをウェスタン・カンファレンス首位(49勝14敗)に導いてきたが、18歳でNBA入りしたレブロンも35歳。自身の連続プレイオフ出場が「13年」でストップした昨季は、股関節の負傷でキャリア最少の55試合の出場に終わっている。今季はプレイ時間を自己最少の平均34.9分に軽減し、孤軍奮闘していた過去のシーズンよりも消耗度を抑えられたのは、ポストシーズンを見据えるうえでは好材料だろう。
フロリダ州オーランドで22チーム参加形式により再開されるシーズンは、シーディングゲーム8試合を経て、プレイオフの戦いに突入する。未曾有の状況で、新型コロナウイルスの不安を抱えながらのプレイとなるが、レブロンは現地入り後のZoom会見で「優勝するためにここにいる」と“頂点取り”を高らかに宣言した。 レイカーズはチーム2位の平均5.0アシストを記録し、セカンドユニットの舵取り役を務めていたラジョン・ロンドが右手親指骨折(全治6~8週間)により離脱。アレックス・カルーソ、クイン・クックと控えの駒はいるが、レブロンに懸かるゲームメイカーの重責はこれまで以上に増すことになりそうだ。
NBA史上初の得点とアシストの両部門で歴代トップ10入りを誇るレブロンは、今年1月25日(日本時間26日)のフィラデルフィア・76ers戦ではコービー・ブライアントを抜いて通算得点で歴代3位に浮上。レギュラーシーズン通算勝利数(836勝)もコービーと並んで歴代9位タイにつけている。その実力に疑いの余地はないが、“神様”マイケル・ジョーダンやコービーとともに、「史上最高のプレイヤー」を巡る議論に名前を挙げられた際には、常々チャンピオンリングの数を指摘されてきた。 シカゴ・ブルズで2度の3連覇を果たしたジョーダンは通算6回、3連覇と2連覇を経験しているコービーが通算5回なのに対し、レブロンは3回(2012、13、16年)。オールスター出場3回を誇るアントワン・ウォーカーが「レイカーズで優勝したら、異なる3つのチームでチャンピオンになる。ジョーダンと同じ“G.O.A.T.”(史上最高)のカテゴリーに括られることになる」と見立てているように、今季一つ数を積み重ねられるかどうかは、残りのキャリアを考えると大きなポイントだ。
また、マイアミ・ヒート時代とキャバリアーズ時代にファイナルMVPを獲得しているレブロンが、今季レイカーズで再びその個人タイトルを手にすれば、異なる3チームでファイナルMVPに輝いた史上初の選手として名を刻むことになる。 今年1月、ヘリコプター墜落事故で急逝したコービーのレガシーを継承していくことを誓ったレブロン。兄貴分へ優勝を捧げ、“真のレイカー”の仲間入りを果たせるか。様々な記録と栄光を懸けた戦いが再び始まる。