「日本のバスケットボールは凄いスピードで前進している」ウィザーズCCOビジネス部門代表ジム・バン・ストーン氏インタビュー(前編)【杉浦大介コラム vol.20】

今季から八村塁がプレイするワシントン・ウィザーズは、昨年のドラフト以降、積極的に日本マーケットの拡大に取り組んできた。日本語コンテンツチームのメンバーとして、ザック生馬氏、小野口大衛氏、新川諒氏がスタッフに加入。日本語のウェブサイト、公式ツイッターなどで、試合前後のレポート、Podcast、さらにはビデオシリーズ「ウィザーズ密着24/7」といった様々なコンテンツを展開している。 このような日本語情報コンテンツが生まれた経緯、今季を通じた成果、さらに今後の方向性を探るべく、ウィザーズのCCO兼ビジネス部門代表、ジム・バン・ストーン氏に電話インタビューを行った。日本マーケットに大きな魅力を感じているというストーン氏。現状への手応え、NBAで働きたい若者へのアドバイス、さらにはジャパンゲームにまで熱っぽく話を巡らせてくれた。

「私たちのファンベースを日本にまで広げるチャンス」

――八村塁選手と同様、ウィザーズの日本語公式サイトは今季が1年目でしたが、日本語コンテンツチームの活躍には満足されていますか? ジム・バン・ストーン(以下JS):今季を通じた日本語コンテンツチームの頑張りには胸を躍らされています。ザック(生馬)、(小野口)大衛、(新川)諒の加入は本当に大きく、彼らは上質かつユニークなコンテンツを作り出してくれました。これまでNBAの他のチームは英語以外で多くのコンテンツを作れていませんでした。それを成し遂げてくれた日本語コンテンツチームの加入は、『Monumental Sports & Entertainment(モニュメンタルスポーツ&エンターテイメント。ウィザーズ のオーナー会社』』にとって大きく、ウィザーズという組織にスムーズにフィットしてくれました。彼らのユニークなプログラムのおかげで、選手たちだけでなく、組織の様々な部分を紹介できたことを喜ばしく思っています。 ――日本語コンテンツチームはすでに多くを成し遂げてきましたが、中でも印象深い企画、題材は何でしょう? JS:まず試合後の(八村)塁、スコット・ブルックスHCのインタビューは、もちろん重要なコンテンツです。それに加え、ゲームから離れた部分で、塁や他の選手たちのオフコートの姿や、個人的な部分を紹介してくれたのがとても印象的でした。ワシントンDCでの生活にどう溶け込んでいるのかを見せてくれたり、遠征での姿にも密着する形で紹介してきてくれました。オフコートのコンテンツは素晴らしいですし、おかげでファンはウィザーズの選手たちをより身近に感じられたと思います。

シーズン中、日本語コンテンツチームは八村のインタビュー映像をSNSで発信し続けていた

――少し話は戻りますが、もともとウィザーズが日本語サイトを立ち上げる経緯はどのような流れだったのでしょう? ザック生馬さんは「ドラフト翌日、ワシントンDCで行なわれた八村選手の入団会見に集まったメディアの数にストーンさんは驚き、自分たちが情報を発信していくチャンスだと感じた」と話して下さいました。やはりあの会見のインパクトは大きかったんでしょうか? JS:その通りです。ワシントンDCにあれほどの日本メディアが集まってくれたことには仰天させられました。その後の数週間の間も、多くの日本の人たちが私たちと関係性を持つことに興味を示してくれたんです。そこで、今後は日本のファンと良好な関係を築かなければと感じました。私たちもリサーチを行ない、日本ではBリーグが徐々に人気になり、楽天がNBAを配信し、バスケットボールが大きな発展を遂げようとしていることにも気付きました。これは私たちのファンベースを日本にまで広げるチャンス。その後、チームのメンバーと一緒に日本に飛び、多くの人たちと貴重な時間を過ごすこともできました。その時点で、日本語コンテンツチームに積極的に投資していくという私たちの決断は確かなものとなったのです。

「時間をかけて良好な関係を築いていくことに重点を置く」

――八村選手は1年目から活躍し、今後、日本のマーケットはウィザーズにとってますます重要になってくると思います。日本マーケットにどのような可能性を感じてらっしゃいますか? JS:様々な面で重要です。まず日本のバスケットボールは凄いスピードで前に進んでおり、プロリーグの発展には興奮させられています。特に東京五輪が行なわれ、日本に世界最高のバスケットボール選手たちが集まれば、さらに大きなインパクトがもたらされると考えています。私が初めて日本を訪れたのはラグビーW杯の直前だったのですが、国民全体がイベントをサポートしていることに感心させられました。スポーツへの情熱は素晴らしいですね。 また、日本経済はもともと強く、巨大な企業が日本にも拠点を置いています。そうした背景がある国はもちろん魅力的ですし、塁がウィザーズの一員になったことは私にとっても最善の機会となりました。ただ、どんなに魅力的なマーケットであっても、新しい場所での成功は一夜で成し遂げられるものではありません。まずは正当な投資が必要。だからこそ私たちは日本語コンテンツチームに投資し、何度か来日し、多くの人々に会ってきたのです。今後も時間をかけて良好な関係を築いていくことに重点を置くつもりです。 ――八村選手、日本語コンテンツチームがほぼフルシーズンにわたって活動し、チームには大きなインパクトがもたらされてきました。今後の展開をどのように考えてらっしゃいますか? JS:これまで3つのプラットフォームを日本語でも運営してきましたが、まもなく4つめが加わります。Twitter、インスタグラム、公式サイトに加え、ウィザーズ公式アプリがスタートし、その中には日本語セクションもあります。今後もファンに喜んでもらえる活動を続けていくつもりです。これらのプラットフォームを通じ、日本のファンとの間に良い関係が生まれていることをハッピーに感じています。塁のジャージーは日本でのNBAジャージーの売り上げでNo.1を記録しました。特に若いスポーツファンたちは大きな興味を持ってくれていますし、その関係を継続し、積極的に拡大していきたいというのが私たちの希望です。 (後編に続く)

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杉浦大介:ニューヨーク在住のフリーライター。NBA、MLB、ボクシングなどアメリカのスポーツの取材・執筆を行なっている。『DUNK SHOOT』、『SLUGGER』など各種専門誌や『NBA JAPAN』、『日本経済新聞・電子版』といったウェブメディアなどに寄稿している。

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