今、WNBAで一番の注目を集めている選手は誰か。 リーグ最高の選手とも謳われるエイジャ・ウィルソン(ラスベガス・エーシズ)や、NBAオールスターでステフィン・カリーと3ポイントで対決したサブリナ・イオネスク(ニューヨーク・リバティ)など、名実ともに申し分のないスーパースターがいるなか、それらの選手を差し置いて今季の主役となっているのがケイトリン・クラーク(インディアナ・フィーバー)である。
クラークは、アイオワ大に在籍した4年間で3951点を記録し、ピート・マラビッチ(元ルイジアナ州立大、NBAでは元ニューオーリンズ・ジャズ)が保持していた男女を通じてのNCAA最多通算得点記録を54年ぶりに塗り替えた。それ以外にも、NCAA史上初の通算3000点、1000アシストの達成や、NCAAトーナメント初の40点以上でのトリプルダブルを記録するなど、大学バスケ界の歴史にその名を深く刻んだ。その功績を讃える意味でマラビッチのニックネームである「ピストル・ピート」からもじり、人々は彼女を「ポニーテール・ピート」と呼んでいる。
クラークの影響力はコート内にとどまらない。大学4年生時には、そのプレイを一目見ようとアイオワ大史上初めて全ホームゲームのチケットが完売。今年4月に行われたNCAAトーナメント決勝は、歴代最多となる990万人が視聴した。そしてクラークがトップ指名を受けた今年のWNBAドラフトも、前年から視聴者が3倍以上も増加するなど全米がクラークに熱狂。これらの事象から「Clarkonomics(クラーコノミックス)」という言葉が作られるほど、とてつもなく高い人気をクラークは誇っているのだ。
得点力が高いクラークの代名詞は、大学通算歴代最多となる548本もの数を沈めた3ポイントシュートである。いとも容易く長距離のスリーを決める姿から「女性版ステフィン・カリー」と形容されることも多い。そしてWNBAの舞台でも、シュート力を軸にその実力をいかんなく発揮している。 今季は30試合を終えた時点で、平均18点(リーグ10位)、5.8リバウンド、8.2アシスト(同2位)、1.4スティールを挙げ、オールスターにも選出。その他にもルーキー史上初のトリプルダブルや、WNBA新記録の1試合19アシストを達成するなど、前評判通りの活躍を見せている。チームとしては開幕直後に1勝8敗とスタートダッシュに失敗したが、その後13勝8敗と持ち直してプレイオフ進出圏内(リーグ上位8チームがプレイオフに進出)のリーグ7位と、2018年ぶりのプレイオフ進出を視界にとらえている。
レギュラーシーズン残り10試合となったなか次戦激突するのは、直接対決11連敗中と相性が悪いコネティカット・サンだ。リーグ2位(22勝7敗)の強豪を撃破してプレイオフへ一歩近づけるかは、カリスマルーキーの双肩にかかっている。
■コネチカット・サン vs インディアナ・フィーバー 日時:8月29日(木)午前8時配信