トレーディングカード、映画に続き『シーズン停止中もNBAを楽しもう』シリーズ第3弾は人気ゲーム『NBA 2K20』を取り上げる。トレーディングカード編では実際にカードコレクターに話を聞き、映画編ではコラムニストに選んでもらった作品を鑑賞したが、今回の『NBA 2K20』編では初心者の私が実際にプレーした感想をお届けする。
eスポーツなる単語が広く知られるようになった。その中でも『NBA 2K』は人気のあるシリーズで、先日は現役NBA選手による大会も行われた。観戦以外の楽しみ方を紹介するなら、真っ先に取り上げてもいい題材のはずである。しかし、私は躊躇していた。なにせ大学卒業以来15年間、私は一度もゲーム機に触れていなかったのだ。最後に触ったゲーム機はPS2。鈴木京香も真っ青のセカンドバージンだが、今回は一念発起してゲーム機購入に踏み切った。 まずはゲーム機の選定である。これは意外と簡単だった。『NBA 2K』をプレーできるのはPS4、Nintendo Switch(以下スイッチ)、Xbox ONEの3機種である。国内の人気はPS4とスイッチに二分されているらしいのだが、現在スイッチは品薄で手に入れることが難しい。今すぐに『NBA 2K20』をやりたい人はPS4を買う以外選択肢がないのだ。ちなみに私は買って早々同僚から「プレステ5出るのに、なんで4買ったの?」とツッコまれた。コロナ禍が販売時期に影響する可能性はあるが、PS5の発売が年末に予定されているらしい。
早速PS4を開封してみる。昔ゲーム機を買ったときのような興奮はない。むしろなんだかそわそわしていることに気づき苦笑する。年を取るのは怖いものである。思ったよりすんなり接続に成功したことで少しホッとしたが、その後に落とし穴が待っていた。PS4を買ってもなかなかゲームを開始できないのだ。PS4購入後は、まずPS側の設定をする必要がある。しかし、出てくる単語がわからない。フレンド、PlayStation Plusなどという怪しげな言葉が当たり前のように使われている。そういった独自の用語に突き当たる度にいちいちネットで検索しながらようやく設定が終わると、今度はソフトのダウンロードが待っている。PS2の時代と違い、ソフトはゲーム機上でダウンロードできる。随分便利になったものだと呑気に思っていたが、ダウンロードには2時間ほどかかった。使える時間がここで終わってしまった私は、結局一度もプレーしないまま購入初日を終えた。
2日目、いよいよプレーを始める。まずは2KUと呼ばれるチュートリアルをプレーしたが、これが予想の数十倍充実している。シュート、ドリブル、トリプルスレット、パス、フリースロー、ピックアンドロール、ポストプレイ、ディフェンス、リバウンド、オフボール時の移動という大項目に対し、さらにいくつもの小項目がある。例えばシュートの項目だけでもジャンプシュート、バンクシュート、ノーマルレイアップ、ランニング/フロータシュート、リバースレイアップ、ユーロステップレイアップ……といった具合に15個の技を練習できるのだ。 チュートリアルが充実しているのは素晴らしいが、いくらなんでも数が多すぎる。早々に全項目を覚えることを諦めた私は、習うより慣れろの精神でスクリメージを始めた。スクリメージはゴールデンステイト・ウォリアーズを相手にトロント・ラプターズを使用して行うことができる。言わずと知れた昨シーズンのファイナルの顔合わせである。スクリーメージを始めて真っ先に躓いたのがディフェンスである。チュートリアルではオンボールのディフェンスしか練習できない。しかし実際のプレーでは常にボールが動くので、適切なプレイヤーを選択して適切なプレーを行うことが必要になってくる。そのプレイヤー選択のスピードが、ボールスピードに勝てないのだ。動かしたいプレイヤーを選択した頃にはボールは移動している。ディフェンスを上手く操作できるようになる日は遠そうである。
一方、オフェンスはチュートリアルの成果をそのまま試すことができるので、初心者でも楽しむことができる。チュートリアルで用意されている動きの中から目ぼしいものを拾っては一つずつ試してみた。いくつか素人ながらに使える技を手に入れたが、その過程でわかったのは選手の能力値がリアルに再現されているということである。例えばマルク・ガソルはマッチアップのウィリー・コーリー・ステインに対して優位性を持っている。押し込んでいけば高確率でシュートを決めることができるのだが、同じことをパスカル・シアカムでやろうとしても難しい。マークマンのドレイモンド・グリーンを押し込むことができないのだ。そういうことなら、選手の特性を知っているチームを使う方がプレーしやすいだろう。贔屓のグリズリーズを使ってプレーするのが楽しみになってきた。
2KUで一通りの動かし方を覚えたら、いよいよゲーム開始だ。すぐに試合を楽しむことができるクイックマッチ、過去から現代までお気に入りのNBA選手を使ってチームを作るMy TEAM、My PLAYERを作成して次代のNBAスターを目指すMy CAREER、プロチームのシーズンを体験できるMy LEAGUEの中から、まずはMy CAREERで遊んでみることにした。 My CAREERは、主人公となるMy PLAYERの設定からスタートする。スマホのアプリ『MyNBA2K20』で自分の顔をスキャンすれば、My PLAYERとして自分を操作することもできると聞いて、早速試してみた。スキャンの仕方は簡単で、スマホのカメラを見つめながら首を左右に振るだけである。結果は画像の通り。不細工なのもさることながら、顎のラインにショックを受ける。スマホの待ち受けにでもしてダイエットのモチベーションにしようかな……。
スマホに向かって顔を左右に振りスキャンする
顔が決まったら、体型やプレイヤーのおおまかな能力値のバランスを決める。私は身長206cm、ウイングスパン230cmのスモールフォワードに設定した。ウイングスパンは長ければ長いほどいいと思ったが、ウイングスパンを長くするとその分能力値が削られる仕様になっていた。能力値の方は基本的な方向性とポテンシャルの設定が可能だ。私はゲームのスキルが無くてもチームに貢献できそうなスリーポイントシューターに味付けしてみた。設定が終わると実在のプレイヤーとの比較が出てくる。私のMy PLAYERはクリス・ミドルトンやゴードン・ヘイワードに近いタイプらしい。
設定が終わりMy CAREERをスタートすると、いきなりドラマが始まる。大学4年生のMy PLAYERは最後のNCAAトーナメントに臨む。しかし、チームメイトの処遇を巡りヘッドコーチと対立、試合をボイコットしてしまうのだった……。てっきりただ練習と試合を繰り返すものだとばかり考えていた私の予想は、いい意味で裏切られた。まるでドラマの主人公にでもなったようで楽しい。
ドラフト・コンバインやプレドラフト・ワークアウトに参加しながら操作に慣れることができて、My PLAYERと共に自分も成長している気分になれる。このモードは初心者でも楽しめること請け合いだ。私はドラフトまでプレイしたが、無事グリズリーズに入団することができた。ジャ・モラントからパスをもらってスリーを決めるのが楽しみである。
正直なところ、最初は15年ぶりのゲームに全く自信がなかった。しかし、この『NBA 2K20』には初心者を置き去りにしない工夫が随所にある。今のところトレーディングカードや映画より人に薦めやすいと感じているが、果たしてその感触は正しいかどうか。次週は、他のモードやオンライン対戦を試してみる予定である。
大柴壮平:ロングインタビュー中心のバスケ本シリーズ『ダブドリ』の編集長。『ダブドリ』にアリーナ周りのディープスポットを探すコラム『ダブドリ探検隊』を連載する他、『スポーツナビ』や『FLY MAGAZINE』でも執筆している。YouTube『Basketball Diner』、ポッドキャスト『Mark Tonight NTR』に出演中。