【WINDY CITY BLUES】エピローグ - 2020年のNBAは、僕たちのすぐ側にある。

“2月のシカゴ”はNBAという文化に染まっていた。八村塁のライジングスターチャレンジの出場や、コービー・ブライアントへの追悼の意を込めたルール変更。一人の日本人としての心境は悲喜交々だが、オールスターへの高まる期待は90年代にNBAへ熱狂を捧げた僕たちにとって聖地ともいえるユナイテッド・センターでの開催が、さらに多くを手繰り寄せて応えてくれた。シカゴ出身のスターたちの登場は、我々世代にとっても感慨深く、シカゴのアイデンティティを感じるオールスターだったと思う。 チームウェアやバッシュだけでなく、オフコートで選手たちが好きなファッションや音楽、そしてプライベートまでもがメディアを通して垣間見れる昨今。この距離感を実感してしまうと、ゲームの興奮だけを楽しむにはもったいない時代に思える。彼らをそしてバスケットボールを取り巻く様々なカルチャーの断面を集めていくことで、それは文字通り大きな文化的価値を持ち始め、やがて日常へ溶け込む。その縮図が“2月のシカゴ”だったのではないか。NBAを取り巻くすべてを楽しむことが、結果的に試合をエキサイティングなものにし、ヒストリーのエデュケーションに繋がることをバスケットボールの母国アメリカは知っている。改めて良いお手本になればいいと願う。 NBAは3月12日以降、予定されていたシーズンの全試合を中断している。この状況を悲観することは簡単だ。しかしSNSを積極的に利用して自分たちが出来ることをファンに届けている選手たちのパーソナルな部分を覗くことができ、見逃したゲームを振り返ることもできる。情報は絶えず発信されており、歴代の名勝負などコンテンツに事欠くことなくマルチデバイスで楽しむこともできる。インターネットの夜明け前の90年代は、アメリカを遠く感じていた。だからこそ憧れや想像が創造を生み出す楽しさがあった。 2020年のNBAは、本質はそのままに、精神的にも物理的にも距離が縮まっているように思う。他の記事でも触れてきたように、カルチャーとの繋がりは密接で、選手たちは相変わらず個性的だ。しかもゲームのレベルは驚くほど高く、興奮せざるを得ない。そこには、少年だったあの頃の熱狂を思い出すどころか、むしろ、大人になった僕たちをさらに夢中にさせてくれる世界が広がっているのだから。

ライター 小澤匡行 / MASAYUKI OZAWA 1978年、千葉県出身の編集者・ライター。大学在学中に1年間のアメリカ留学を経験した後、ライターとして活動を始め、広告や雑誌を始めとするファッション関連の編集・ライティングを行う。2016年、『東京スニーカー史』(立東舎)を発表。2017年に『SNEAKERS』を日本語監修。2020年に新書が発売予定。


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