NBA、MLB、NHL、NFL、アメリカ4大プロスポーツリーグのチームが勢揃いする街、ロサンゼルス。MLBの舞台で野茂英雄(ロサンゼルス・ドジャース)や大谷翔平(ロサンゼルス・エンゼルス)といった日本人がこの街を大いに沸かせてきたが、今年は八村塁がロサンゼルスを熱狂させる番だ。 昨シーズン途中にワシントン・ウィザーズからロサンゼルス・レイカーズへと移籍した八村は、この夏レイカーズと3年5100万ドルの契約延長を結んだ。日本中を熱狂させたFIBAバスケットボールワールドカップ2023は残念ながら辞退したものの、過去最高の充実度といっても過言ではないオフシーズンを過ごした八村の注目の1年が始まった。
八村は昨シーズン、プレイオフで大きな存在感を放った。デンバー・ナゲッツとのカンファレンス・ファイナルでは、1試合平均33.5分の出場で15.3点を記録。ディフェンスでもナゲッツの大黒柱、ニコラ・ヨキッチへのマッチアップを任されるなど、好守を見せたことも契約延長を勝ち取る要因となった。 そんな八村はこの夏、さらなるレベルアップのため“キング”レブロン・ジェームズに弟子入り。一緒にワークアウトを行い、フットワークや体の使い方を中心に多くのことを学んだという。「塁はこれまでワークアウトしてきた中で最悪のヤツさ(笑)」というジェームズのジョークからも、長い時間を一緒に過ごしてきた2人の強い関係性を感じとることができる。 フィジカルもさらに強化され、プレシーズンゲームで対戦した渡邊雄太(フェニックス・サンズ)は「試合始まって一発目のバンプがまじで強すぎてびびりました」とその進化に驚きのコメントを残している。「メンタルも身体も準備はできた」とキャリア最高の状態で新シーズンに臨む。
八村に期待されるのはやはり得点力だろう。特にジェームズやアンソニー・デイビスがベンチにいる時間帯ではその比重はより大きなものになる。そんな中でチームの重要な攻撃オプションとなっているのが、八村最大の武器ともいえるプルアップシュートだ。昨シーズンの成功率はキャリアハイの50%、これはプルアップで2点以上記録する選手(最低50試合出場)の中ではリーグ3位と、NBAでもトップクラスの精度を誇っている。 さらにレブロンとのワークアウトを経て「より攻撃的になろうとしている」と語るなど意識にも変化が生まれている。プレシーズンゲームでは積極的にドライブを仕掛ける姿が散見された。昨シーズン2.3点だったドライブからの得点を増やすことができればより攻撃に幅が生まれ、得点面でチームの助けになるに違いない。 そしてもう一つの大きな鍵が3ポイントだ。2021-22シーズンに44.7%の成功率を記録した3ポイントだが、昨シーズンは31.9%と大幅に低下。レイカーズにおいてはレブロンやデイビスら相手ディフェンスを収縮させる力のある選手がいることから、周りの選手の3ポイント成功率はチームの勝敗に大きく影響してくる。3ポイントを高確率で決められれば、より信頼感が高まり、出場時間の増加にも自ずとつながっていくだろう。 日本時間10月25日(現地24日)にあったナゲッツとの開幕戦では、フィールドゴール10本中3本の成功でわずか6点。「リズムに乗れなかった」と語ったように硬さも見られ、出場時間も14分にとどまったが、まだシーズン初戦とパフォーマンスの良し悪しを判断するには時期尚早だ。昨プレイオフで証明した通り実力は間違いないだけに、今後の奮起に期待したい。
先月、現地メディア「FADEAWAY WORLD」が発表した「2023-24シーズンのパワーフォワードランキングトップ25」で、八村塁は全体18位にランクインした。17位には22年ドラフト4位のキーガン・マレー(サクラメント・キングス)、19位には22年ドラフト3位のジャバリ・スミスJr.(ヒューストン・ロケッツ)と若手有望株に挟まれる形に。 さらにNBA公式サイトが公開した「飛躍しなければいけない選手」のメンバーにも選出。「契約も勝ち取りもう言い訳はできない」と期待感とともに厳しい目も向けられる対象となっている。NBA5年目を迎える日本の至宝・八村塁、今シーズンは一体どんな活躍を見せてくれるだろうか。 ■フェニックス・サンズ対ロサンゼルス・レイカーズ 日時:日本時間10月27日(金)午前11時 会場:クリプト・ドットコム・アリーナ 解説:佐々木クリス / 実況:加藤暁