今年6月から7月にかけて開催されたFIBA U19ワールドカップ(以下、U19W杯)で、日本代表は過去最高となるベスト8という結果を残した。歴史に名を刻んだチームを、司令塔として牽引したのが岡田大河。15歳の時にスペインに渡り、NBAで4度のオールスター選出を誇るケンバ・ウォーカーが在籍するモナコ(フランス)のU21チームへ今季移籍した異色の経歴を持つ19歳だ。海外挑戦の環境を変えたその理由や、U19W杯という世界大会を通して感じたことなどを語った。
――新しいチームに加入して、今までと違うようなところがあるかどうか教えてください。 岡田:今回はU21のチームなので、(年齢が)1個上だったり1個下だったりという近い年代で毎日練習をしています。その中でもスペインと少し違うのは、1対1の強度ですね。フィジカル的に強くて、一つ一つの練習に対しての強度が高いので、常にいい状態で練習ができているというのをすごく感じています。 ――まだ始まったばかりですが、開幕戦(日本時間9月17日にリーグ開幕)を終えて今後進歩していきたい部分は? 岡田:そうですね。自分は能力的には相手に劣ってしまう部分が多いので、自分から積極的にフィジカル面で成長していかないと、プレイタイムもどんどん確保できないと思います。なので、フィジカル面での成長というのも、今年はすごい力を入れていきたいです。 ――今回最初にモナコから移籍について直接連絡があったということですが、その話を受けた時の感想は? 岡田:最初に連絡が来た時は、ユーロリーグに所属しているチームというのは把握してはいたんですけど、注目して見たことはなかったんです。ただ、自分はマドリードに住んでいたので、レアルとかバルセロナとかのユーロリーグの試合での対戦相手として見ていたので、「モナコってどういうところにあるんだろう?」というのがちょっと気になったりしていました。自分で調べていくうちに、すごくいいチームなんだなと感じたので、素直に嬉しかったです。 ――モナコにはNBAでオールスターにも選出されているケンバ・ウォーカーが加入しました。カテゴリーが違うとは思いますが、実際に会う機会はありますか? また彼からどんなことを学んでいきたいですか? 岡田:トップチームの練習にはまだ参加させてもらえていないんですけど、練習する環境とかは一緒です。自分たちの試合が終わった後とか、トップチームの試合を生で見る機会はあるんですけど、なかなか直接お会いできる機会っていうのが今はないですね。でも、マイク・ジェームズ選手(元フェニックス・サンズなど)というポイントガードの選手とは、挨拶ぐらいですけどお会いする機会があったので、自分がこれからチャンスを掴むことができれば、間近でプレイを感じることもできると思います。試合では(カテゴリーに関係なく)ほとんど同じフォーメーションをやるんですけど、どういう点の取り方をしているか、どういうゲームコントロールしているかをお手本として学べるので、そういう機会はありがたいですね。 ――フランスでの生活で苦労していることはありますか? フランス語が難しいですね。コーチはフランス語で怒って喋る時とかもありますが、基本英語で喋るので、試合中に言っていることは理解できるんですけど。移動中とかでも自分は英語でみんなと喋ってしまうんですが、その時に英語が分からないチームメイトとかに喋る回数が減ってしまうので、フランス語もちょっとずつ学んでいけたらいいなと思います。 ――スペインでキャリアを積まれていた中で、言語も違う別の国に移籍しようと思った理由は? 岡田:環境に慣れてしまったっというのももちろんあります。自分はまだまだ色んなことを学ばないといけないと思うので。新しい環境に行ってみたいという思いが強くてスペインの2部、3部とかのチームを目指していたんですけど、モナコからお話をいただいた時にセカンドチームということで、チャンスがすごくあるとそこで感じました。名門クラブで今までやったことがなく、また誰でも行けるところではないと思うので、ユーロリーグ出場権を持っているチームで、自分が出る出ない関係なく学べるものはたくさんあるのかなと。そういう厳しい環境だと思い、そんなところに惹かれてモナコ行きを決めました。
――U19W杯で日本史上初のベスト8に進出しましたが、そこで感じた課題点、また今後モナコでどのように成長していきたいかを教えてください。 岡田:ヨーロッパの強豪チームとか相手に、良い試合ができたこともありました。ただ、大差をつけられてしまったり、自分たちがやりたいバスケットができなかったりという試合が多かったので、自分的にはちょっと悔しい大会になりました。 U19W杯の時に感じたのは、自分たちのスタイル的にガードが勝負所とかで打開しなきゃいけないということ。勝てた試合では上手く合わせることができたシーンが多かったんですけど、アメリカやセルビアとかと戦った時に自分が崩せない場面が多かった。1対1のスキルはもちろんそうですけど、高いフィジカル強度で戦うという面で、自分は成長しなければと思います。 ――フィジカル面の課題を克服するために、今どんなことをやっていますか? 岡田:体を大きくすることももちろんなんですけど、どんどん自分からコンタクトしていって、そういう環境にまず慣れることですかね。(モナコの)チームメイトも高いレベルでやってきた選手が多いので、その中で自分がフィジカルで食らいつくことができれば、自分のステップアップに繋がると思います。練習中のコンタクトとかスペインに行った時も激しくて、やりにくいって感じました。ガードのコンタクトも激しくて、コースを遮ってもそこからフィジカルで剥がされてしまったり、一歩遅れてしまったりという部分があるので。 自分より常に身長が高い選手とやらさせてもらっていて、U21の練習だともう1人のガードの子が198cmとかなんですよ。その子が練習中からしっかりコンタクトしてくれるので、常にミスマッチの状態での練習ができています。コースを抑えることだったり、ピック&ロールのディフェンスでコンタクトされてもその後追い付くとか、そういうのは回数こなしていかないといけない。体を大きくするというフィジカルも今後やっていくんですけど、自分が戦わないといけないところは常に練習から慣らしていきたいなと思っています。 ――逆に日本の強みとして通用したと思うところがあれば教えてください。 フリーの味方選手にパスできた時は、ほとんどの確率で決めてもらっていたんで、日本の選手たちのシュート力です。勝てた試合とか、いい内容だった試合は、自分が作ったスペースで打ってもらえることもあったので、ゲームコントロールの部分で流れを持ってくるっていうこともできました。
――FIBAワールドカップ(以下、W杯)での日本代表の活躍を見て、どんなことを感じましたか? 岡田:ヨーロッパのチームに勝つというのは本当に簡単ではないですし、それをチーム力で上回った。ガードの質とか、要所で決めきる外の選手とか、インサイドで戦う選手とか、すごい役割がはっきりしていたと思います。自分は直接見ることはできなかったんですけど、ハイライトとか見てもすごいディフェンスや、オフェンスでは速攻など日本らしいバスケットをしているのと同時に、頭を使ってバスケットをやっていたので、すごいなと思いました。 ――W杯では河村勇輝選手(横浜ビー・コルセアーズ)、富樫勇樹選手(千葉ジェッツふなばし)という身長が高くないガード2人で戦っていました。何か参考になったことはありましたか? 岡田:今まで日本って身長が低いから諦めるとか、身長の低さを言い訳にしていたという言われ方をしてきたと思うんです。でもサイズよりもスピードとか、そういう日本人が活かせるところで戦っていくと言っていましたし、富樫選手も河村選手も身長が低くてもできると言っていたので、次世代を担う選手として、身長は関係なくやれるのかなと感じました。 試合を見ていて、もちろん相手に対して身長のアドバンテージを取られてしまうシチュエーションもあるんですけど、その分平面的な部分で貢献できる部分も多いなと。あのチームには1人1人に役割があると思うので、身長が低い選手でも得点に絡めたり、相手にプレッシャーを与えたりと、そういう面での活躍も多いですね。やっぱり見ていて身長っていうのは言い訳にはならないというのは感じました。 ――オリンピックは一つの目標としてありますか? 岡田:パリの次のオリンピックがどこであるか把握できてないんですけど(2028年はロサンゼルスで開催)、自分がもしその代表に相応しいのであれば、トライしたいなと思います。でも自分がやっていかないといけないのは、こういう海外で生き残ること。そういう結果が(代表選出に)繋がっていくと思うので、まずは自分の場所でしっかり結果を出すことが大事なのかなと思っています。 今の目標は(モナコで)トップチームの練習に参加することなんですけど、ユーロリーグへの出場権を持っているチームなのでロスターがすごいんです。リーグは確か12人登録とかなんですけど、チームには14人いて、海外選手枠の選手の方が多く、リーグ戦だとフランス人が優先的に出るので、トップチームの練習に参加するのもすごく大変なんです。コツコツ結果を出していくことができれば、チャンスにも繋がると思っています。 ――憧れの選手とか、理想とする選手がいれば教えてください。 岡田:小さい頃はカイリー・アービング(ダラス・マーベリックス)だったんですけど、今はレアル・マドリード(スペイン)に今年帰ってきた、アルゼンチン代表のファクンド・カンパッソという選手ですね。180cmぐらいで少し小柄なんですけど、その選手にすごく憧れています。 ――将来的にNBA の舞台にコートに立ちたいと言う気持ちはありますか? 岡田:海外のトップリーグで活躍すること。そうすればNBAという道も開けてくると思っています。