オフシーズンの一大イベントであるNBAドラフトが、日本時間6月23日(現地22日)にブルックリンのバークレイズ・センターで開催される。未来のスター候補が集うドラフトにおいて、今年最も注目されているのが、フランスのメトロポリタンズ92に所属するビクター・ウェンバンヤマだ。サンアントニオ・スパーズが保有する1位指名権でのピックが確実視されるフランスの至宝のルーツを深掘りして紹介する。
ウェンバンヤマはコンゴ民主共和国出身の元陸上選手である父フェリックスと、フランス出身のプロバスケットボール選手だった母エロディーのもと、2004年1月4日にフランスの首都パリから18kmほど離れたル・シェネで生まれた。現在223cmとも言われる圧倒的な身長を誇るウェンバンヤマだが、その才能は身長200cmの父と192cmの母の遺伝子を受け継いだ結果と言えるだろう。なお、21歳の姉イブと16歳の弟オスカーはいずれもプロバスケ選手(弟はU18チームに所属)というアスリート一家だ。 幼少期はサッカーと柔道にも触れていたが、のめり込んだのは母親がコーチをしていたバスケだった。初めて地元のバスケチームに入った7歳の時にはすでに身長が168cmもあり(日本国内7歳男子の平均身長は121.1cm。参照元:厚生労働省)、所属チームのスタッフが彼をアシスタントコーチに間違えるほど際立つ存在に。その後も身長と共に技術も磨いていき、15歳でプロキャリアをスタート。アンダー世代の国際大会でも印象的な活躍を見せていき、評価を上げて現在に至る。
コート上での圧倒的なパフォーマンスばかりが目立ち、その内面はあまり知られていないウェンバンヤマだが、同郷のニコラス・バトゥーム(ロサンゼルス・クリッパーズ)によれば、「家族思いで派手なことはしない。自分のやるべきことに集中する男だ」という。また、実際にウェンバンヤマを取材した『ESPN』のジョナサン・ジボニー記者は「普通の18、19歳とは違う。他人の意見に流されることなく、自分の意見をはっきり言い、周りの声は全く気にしない」と物怖じしない精神力を持っていると語る。
日に日に注目度は増しているが、本人が追求するのは「唯一無二になること」だ。「いつだって自分は他とは違うレベルにいると感じてきた」と豪語するウェンバンヤマは、「全てにおいてオリジナルになりたいと思っているし、それは心で僕が持ち続けている気持ちだ。唯一無二になること。上手く説明することはできないけど、生まれ持った感情なんだ」と自身の飽くなき情熱を説明している。
怪物的な才能ばかりが取り沙汰されるものの、ウェンバンヤマはコート外でも努力を欠かさない。NBAで成功するには英語が必須であると感じた中学の頃から、自発的に英語の勉強を開始。敢えて英語のSNSやテレビ番組などを観るといった自己流の勉強法などで、今では英語でのインタビューも全く苦にせず対応できるレベルとなった。 趣味である読書に対する考えからも、プロとしての生活に役立っている。寝る前にSF系の本を読むことを日課としているのだが、「ファンタジーの本を読むとバスケのことを忘れて違う世界を見ることができる」とし、オンとオフを切り替えるための手段として重要だとした。 「これまで多くのフランス人がドラフトされたが、全体1位指名はない。その歴史を変えたい」と語ったウェンバンヤマ。生まれ持った才能と絶え間ない努力を経て、その夢を果たす時が刻々と迫っている。