【WINDY CITY BLUES】渡邊雄太と馬場雄大が初めて語るNBAライフスタイル

NBAレベルの日本人選手は八村塁だけではない。NBAメンフィス・グリズリーズとGリーグのメンフィス・ハッスルで2ウェイ契約を締結している渡邊雄太。NBAを目指して同じくGリーグテキサス・レジェンズに所属する馬場雄大。おとぎ話のようだったNBAが、まるで陸続きの物語になったように身近に感じられるようになったのは、予想を裏切るほどの活躍を見せる八村塁と、切磋琢磨する渡邊そして馬場の姿があってのことだ。日本人が世界に通用することを証明した彼らのチャレンジにおける本音は、3月15日18時から配信される特別対談をチェックしてもらいたい。ここでは、放送で語られなかったプライベートな表情や等身大の姿をお届けしよう。

NBA選手の日常

3名の日本人選手がNBAとGリーグでプレイするようになったが、過酷なスケジュールで日々繰り広げられる彼らのオンコートでの活躍はご存知の通り。しかし、ひとたびコートから出た選手はどのようなライフスタイル送っているのだろうか? 「基本的には、試合が2日に1回のペースであるので(ゲーム以外の時間と言っても)移動が多いです。選手みんなめちゃめちゃ仲は良いんですけど、同じ寮に住んでいた大学時代に比べて、オフコートでチームメイトと時間を共有する機会は減りました。家族を持っている選手も多いので、移動中にFaceTimeで子供と楽しそうにしゃべっているのを見るといいなぁと思います」

 

アメリカ生活6年目の渡邊は、ハードスケジュールに耐えられるコンディションを維持するため、ウェイトトレーニングなどでケガをしない体作りを心がけているという。2ウェイでプレイする渡邊は、「NBAだとマンツーマンでコーチが付くし、トレーナー陣もたくさんいるので問題箇所があればいつでも見てくれます」と日常のフィジカルメンテナンスについて教えてくれた。 一方の馬場は、食事の面も気にかけていて、「バスケットボールをするうえで自分の体に何が必要なのか、何を栄養として摂るのかにフォーカスして生活できていますね。まだ(アメリカでは)遊ぶところも開拓できてないですし(笑)、バスケットボールに100%集中できる環境があります」と、これまでのアメリカ生活について語った。 「正直Bリーグでプレイしていたときは、自分の時間を設けて試合に集中するのが当たり前で、それがプロフェッショナルのあるべき姿だと思っていたんですが、Gリーグではホテルは常に2人部屋なんですよ。お互いにコミュニケーションを取る計らいでもあると思うのですが、なかなか自分だけの時間を作れない難しさを感じましたが、いまは楽しみながらやっています」

 

アメリカ人は音楽がないと生きていけない

試合前のウォーミングアップ時に会場で流れる音楽のリズムに乗って踊るNBA選手の映像が頻繁にSNSにアップされているが、試合以外にも練習や移動中など、とにかく欠かせないのが音楽だ。例えば現在はアップル傘下のBeats by Dr. Dreは、最初にレブロン・ジェームズと契約してレブロン本人からNBA選手に手渡されて広まっていった。いまではほとんどの選手がウォーミングアップで着用する姿が見られるほど、ワイヤレスイヤフォンはNBA選手から流行ったと言っても過言じゃないのではないだろうか。彼らにとって音楽はライフスタイルであり、ある種コミュニケションツールにもなっているという。 「ラップミュージック、ヒップホップはチームメイト全員が聴きます。みんな本当に好きなんですよ。試合前とかは僕も一緒に全員で盛り上がっていますね。(ぼくは)日本にいたときはほとんど(ヒップホップを)聴いたことなかったんですが、アメリカに来てから聴き出して今となっては結構聴くようになりました」と言う“今の”渡邊はドレイクとポスト・マローンがお気に入りとのことだ。 同じ音楽を共有・共感することによって一体感が生まれるのは間違いないだろう。チームで競うバスケットボールというスポーツにおいて、それがプレイにも影響してくるのは当然で、「信頼関係を築くことがバスケにも影響しているなと(思いました)。アメリカに来て言葉もうまく通じないなかでしたが(そうしたオフのコミュニケーションによって)、だんだんと仲間意識を感じてきました」と馬場も肌で感じている。 「チームメイトに教えてもらったロディ・リッチというアーティストの曲が、どの体育館でも流れてるんですが、試合前はほとんどみんなが聴いていますね。アメリカ人は音楽がないと生きていけないんですよ。ロッカールームでも常に爆音ですし、バスでも大声で歌ったりしていて、みんなが乗っているのにすごいメンタルだなって(笑)」

 

まず、みんな足元を見るんです

普段からNBA選手を羨望の眼差しで見ている僕らにとって、プレイ以外で一番気になるのは選手がオンコートで履きこなすバスケットボールシューズ。選手たちにとってシューズは大事な相棒であり成功の証でもある。オフコートでもスニーカーはスタイルを決める重要なファッションアイテムであり、ストリートではレアなスニーカーを履くことがステータスとも言える。 エアジョーダンのなかでもⅠかⅪが好きだという渡邊は「選手同士でスニーカーの話は結構しますね。ジョーダンブランドが好きな選手が多くて、僕もあまり種類は多くないのですが、新しいのを履いていくと『どこで見つけたんだよ?』って話によくなります(笑)」

 

バスケットボールの神様と称されるマイケル・ジョーダンの偉大さを毎日感じているという馬場は「ほとんどの選手がジョーダンのスニーカーだったりウェアを身に着けている」と、渡米直後はその影響力の強さに驚いたという。「発売前のジョーダンⅪの赤黒を履いて行ったときなんかはチームメイトから『えっ?なんで持ってんの?それフェイクだろ!』なんて言われましたよ(笑)」 「やっぱりアメリカ人はスニーカー大好きだなと実感しています。まず、みんな『何を履いているのか?』と足下を見るんですよ。珍しいものを履いていたりすると『どこでゲットしたんだ?』と言われますし、『ちょっと貸してみろ』と足のサイズが違うのに(無理やり)履こうとトライするんです(笑)」

カルチャーを愛することで、憧れのライフスタイルに近づく

日本にいた時とは比べものにならないくらいスニーカーに興味がでてきたという2人だがそれもそのはずだ。いくらNBA・Gリーグ選手といってもまだ25〜6歳の若者。日本の同世代でいうと社会人にも慣れてきて自分の好きなものを自由に買えるようになった年頃だ。僕も同じ年頃には毎週末バスケットボールに情熱を注ぎ、アメリカの流行りの音楽を貪りほって、NBA選手と同じ最新のバッシュをいつでも身につけたかった。プロフェッショナルのバスケットボール選手ということで、当然競技中心の生活ではあるものの、ヒップホップやブラックミュージックを仲間と楽しみ、レアスニーカーを競うように手に入れる様子は、NBA選手も日本の選手たちも(もっと言えば僕や読者のみなさんも)本質はあまり変わらないのかもしれない。日本においてもいまよりさらにバスケットボールカルチャーがライフスタイルになれば、憧れのNBAの世界に少しでも近づけるかもしれない。

ライター 秋元凜太郎 / RINTARO AKIMOTO 1976年、埼玉県出身。バスケットボールカルチャーマガジン「FLY」編集長。小学校でバスケットボールに出会い、高校時代にはストリートボールの虜になる。大学卒業後、外資系スポーツメーカーを経て、2014年に「ABOVE」を発刊。バスケットボールとそれに纏わるカルチャーを多角的にフィーチャーした日本で唯一の雑誌として注目を浴びる。2017年3月、「ABOVE」と同一スタッフで「FLY」をスタート。

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