オフシーズンの一大イベントであるNBAドラフトが、日本時間6月27日(現地26日)と28日(同27日)に開催される。今年は昨年のビクター・ウェンバンヤマ(サンアントニオ・スパーズ)のような圧倒的なタレントが不在で、一部メディアでは不作と評されている。しかし、ウェンバンヤマのような知名度こそないものの、実際には将来性豊かなプロスペクトが数多く揃っている。 昨季のウェンバンヤマは新人王に加えて、最優秀守備選手賞でも2位の票数を獲得し、オールディフェンシブ1stチーム入りを果たすなど前評判以上の活躍を見せた。そんな“フランスの至宝”に続き、今年上位指名が確実視されているのがフランス出身のアレックス・サー(パース・ワイルドキャッツ/オーストラリア)とザカリー・リザシェイ(JL Bourg-en-Bresse/フランス)の2人だ。
最も高いポテンシャルを秘めていると評されるのがサー(19歳)である。身長213cmと大柄ながらも外からのシュート力があり、近年のNBAにフィットするビッグマンだ。特にディフェンス面では223.5cmのウィングスパンを活かしたリムプロテクター役だけでなく、軽快なフットワークを駆使してペリメーターにも対応できるため、ウェンバンヤマのようなインパクトを残せるのではという期待も。 昨年の夏に行われたGリーグ・イグナイトとのプレシーズンマッチ2試合では、平均21.5点、8.5リバウンド、6.0ブロックと大活躍。オーストラリアのNBLで昨季平均9.4点(17.3分出場)とオフェンスはまだ荒削りな部分はあるものの、1位指名が有力視される逸材だ。しかし、サー本人が1位指名権を持つアトランタ・ホークスではなく、ロスターがより若く、多くの出場機会が望める可能性が高いワシントン・ウィザーズ(2位指名権保有)への加入を望んでいるとの噂もあり、実際にホークスが指名するかは気になるところ。
一方、スカウト達の間で「一番安全な指名」と言われているのがリザシェイ(19歳)だ。昨季(リーグ&カップ戦)に3ポイント成功率38.9%を記録した身長204cmの大型シューターは、ウィングスパン223.5cmという長いリーチを活かした守備もセールスポイントで、リーグ有数の2ウェイプレイヤーに成長する可能性も。ボールハンドリング力やパスに課題はあるが、まだ若く成長が期待できると同時に、伸び悩んだ場合でも3&Dとして機能するためローリスク・ハイリターンの選手とされている。どんなチームにもフィットするため、サーを抑えてトップ指名されることもあるかもしれない。
今クラスのNo.1シューターが誰かと聞かれれば、多くがケンタッキー大学のリード・シェパード(20歳)の名前を挙げるだろう。父、母ともにケンタッキー大学のバスケ選手(父ジェフはNBAでもプレイ)というサラブレッドは、主にベンチの起爆剤として昨季平均12.5点、4.1リバウンド、4.5アシスト、2.5スティールを記録。また3ポイント成功率は53.6%という驚異の数字を叩き出すなど強豪校ひしめくSECの新人王に輝き、この1年間で大きく評価を上げた。 187cmというサイズや、プレイメイク力、フィジカルレベルに懸念はあるが、完成度は上位指名候補の中でトップクラス。指名するチームによっては即戦力として、大学の先輩であるタイラー・ヒーローや、バディ・ヒールドのような活躍が期待される。なお、垂直飛び(2ステップの助走あり)は106.7cmで、ドラフトコンバイン参加者の中でトップタイだった。
NCAAトーナメントで2連覇を果たしたコネチカット大学からは、まず“クリング・コング”ことドノバン・クリンガン(20歳)に注目だ。身長218cm、ウィングスパン231cmという規格外のサイズを誇るショットブロッカーは、昨季平均13点、7.4リバウンド、2.5ブロックをマーク。オフェンスはペイント内のみと限定的だが、ウォーカー・ケスラー(ユタ・ジャズ)のように1年目からリムプロテクターとして存在感を発揮できるだろう。シーズン中に負った足の怪我もすでに完治しており、上位指名の可能性は非常に高い。 チームメイトのステフォン・キャッスル(19歳)は、ペネトレーションや身長197cmの体躯を活かしたプレイを得意とし、昨季は平均11.1点、4.7リバウンド、2.9アシストを記録。3ポイントこそ成功率26.7%と苦手にするが、NCAAトーナメントの準決勝、決勝の2試合では平均18点とハートの強さも見せた。ディフェンスも秀逸で、昨季は相手チームのエース級をマークするなど、攻守で輝くポテンシャルを秘めている。
その他にも潜在能力がピカイチと言われるロン・ホランド(18歳/Gリーグ・イグナイト)や、フィジカル系ガードのアイザイア・コリアー(19歳/サザンカリフォルニア大学)、コンバインで圧巻の身体能力を披露したデビン・カーター(22歳/プロビデンス大)など有力選手が数多くいる。とはいえ今ドラフトで最大の注目を集めるのはレブロン・ジェームズ(ロサンゼルス・レイカーズ)の長男、ブロニー(19歳/サザンカリフォルニア大学)だ。 昨季は開幕前に心停止で病院に運ばれるというショッキングな出来事に見舞われると、その後治療によって回復したものの、結果的に平均4.8点、2.8リバウンド、2.1アシストと選手としての評価を下げてしまった。しかし、コンバインで見せたパフォーマンスやメディアへの対応を見て興味を示すスカウトも出てきており、ドリュー・ホリデーやデリック・ホワイト(ともにボストン・セルティックス)のような気の利いた選手に成長するのではとの声もあがっている。現状レイカーズが2巡目で指名すると予想されるが、父と子の共演は実現するのか。
そして日本人4人目のNBA入りを狙う、富永啓生(23歳/ネブラスカ大学)の行方も気になるところだ。コンバインには招待されず、各メディアが展開するモックドラフトでも名前が挙がっていないことから、正直なところ指名される可能性は低いと言わざるを得ないだろう。しかし、NCAAの3ポイントコンテストで優勝するなど、シューターとして最高クラスの評価を受けているのは間違いなく、帰国前にはロサンゼルス・クリッパーズ、サクラメント・キングス、シカゴ・ブルズのワークアウトに参加した。指名されるのであれば2巡目になると予想されるが、ドラフトで夢のNBA入りを果たせるか注目だ。
■1巡目指名 日時:日本時間6月27日(木)午前9時 会場:バークレイズ・センター(ニューヨーク州ブルックリン)
■2巡目指名 日時:日本時間6月28日(金)午前5時 会場:ESPNシーポート・ディストリクト・スタジオ(ニューヨーク州ニューヨーク)
■マタス・ブゼリス(19歳 / Gリーグ・イグナイト) 身長・体重:206cm / 89kg ■ジャコービー・ウォルター(19歳 / ベイラー大学) 身長・体重:193cm / 90kg ■ニコラ・トピッチ(18歳 / KK Crvena Zvezda) 身長・体重:198cm / 86kg ■コディ・ウィリアムズ(19歳 / コロラド大学) 身長・体重:200cm / 87kg ■カイル・フィリパウスキー(20歳 / デューク大学) 身長・体重:211cm / 104kg ■ジャレッド・マケイン(20歳 / デューク大学) 身長・体重:188cm / 92kg ■トリスタン・ダ・シルバ(23歳 / コロラド大学) 身長・体重:203cm / 98kg ■ダルトン・コネクト(23歳 / テネシー大学) 身長・体重:195cm / 96kg ■ティジャン・サローン(18歳 / Cholet Basket) 身長・体重:206cm / 94kg ■ザック・イディー(22歳 / パデュー大学) 身長・体重:224cm / 135kg