OBが“未来のMVP”と太鼓判。プレイオフで男を上げたジェイソン・テイタム【杉浦大介コラム vol.33】

「ジェイソン・テイタムはどんどん成長しているよ。もうリーグトップ10に入る選手で、今後2年以内にリーグのMVPを獲得するだろう」 NBAのシーズンが中断中の6月、ボストン・セルティックスのOBでもあるケンドリック・パーキンスがそう述べていたことがあった。このようにテイタムを推すのはパーキンスだけではなく、同じくセルティックスの看板選手だったポール・ピアースも「中断前はスーパースターのようにプレイしていた」と絶賛。今季後半戦でのテイタムは、それほどに素晴らしかったのだ。 時は流れ、9月。セルティックスが勝負強さの権化のような強敵マイアミ・ヒートを撃破するためには、実際に22歳のテイタムが“NBAのスーパースター”と認められるレベルでプレイし続ける必要があるのは明白だろう。

ケンバも「彼はスーパースター」と認める

2019-20シーズンのイースタン・カンファレンス決勝は、激闘シリーズの雰囲気が濃厚に漂い始めている。最初の3戦を終えてヒートの2勝1敗。2連敗の後の第3戦をセルティックスが制したことで、勝負は一気に面白くなった。ヒートが競り勝った最初の2戦も紙一重の内容であり、戦前の予想通り、両者の実力が拮抗しているのは間違いないはずだ。 セルティックスで目立つのは、やはりジェイレン・ブラウン、テイタムというヤングデュオの働きだ。特にテイタムは第3戦でも25得点、14リバウンド、8アシストを挙げ、これで5試合連続20得点以上、ポストシーズン通算でも23度目の20得点越えとなった。23歳以下で20得点以上が24度というのは、コービー・ブライアント(32度)、レブロン・ジェームズ(29度)についで史上3位の記録。こんなレコードを見ても、新エースのポテンシャルの高さは明らかだ。 スムーズなフットワーク、切れ味鋭いステップバックジャンパー、オールラウンドな得点力は見事。3月11日にシーズンが中断する前まで19試合で平均28.3得点、3ポイント成功率は46.5%、そのうち9戦で30得点以上と大爆発していたが、この勢いをオーランドの“バブル”にまで持ち込んできた感がある。 テイタムが大きく男を上げたのは、昨季王者ラプターズと対戦したカンファレンス準決勝の第7戦だった。天下分け目の一戦で、29得点、12リバウンド、7アシスト。主要3項目のすべてでゲームハイの数字を残しただけでなく、2点リードで迎えた残り約35秒、新人グラント・ウィリアムズが外したフリースローのリバウンドを掴んで、勝利を決定的なものにしてみせた。

ラプターズとのシリーズでは獅子奮迅の活躍を披露し、昨季王者を撃破する原動力となった

「彼はスーパースターだよ。今夜、それを証明してみせたから、もう誰も疑うものはいないんじゃないかな。シリーズで最も重要な第7戦で、最も重要なリバウンドも取ってくれた。特別な選手だ。一生懸命に練習するし、勝利を熱望している。チームメイトと一緒にプレイするのが大好きだし、本当に素晴らしいよ」 試合後、ケンバ・ウォーカーがそう述べていた通り、注目度の高かった一戦でテイタムは多くのことを証明したと言えるだろう。

「センスが良い」と指揮官も太鼓判

2017年のドラフト全体3位でセルティックス入りしたテイタムは、ここまで常に順風満帆のスター街道を歩んできたわけではない。1年目はいきなりプレイオフで印象的な活躍を見せたものの、期待の大きかった2年目の昨季はやや伸び悩み。チームのエースだったカイリー・アービング(現ブルックリン・ネッツ)との噛み合わせが悪く、一時的に評価を落とすことにもなった。 ただ、心機一転で臨んだ今季は再び上昇気流に乗り、自己最高の数字を残してオールスターにも初選出。前述通り、シーズン中盤以降は爆発的な成績をマークし、再び大きな注目を集めるようにもなった。その過程で、課題とされてきたショットセレクションも向上。ブラッド・スティーブンスHCも「彼は本当にセンスが良い。これまで多くのディフェンスを見てきたが、それらにも上手に対処してきた。様々な形でチームを助けてくれているよ」とその働きに目を細めていた。

今季は初めてオールスターにも選出。オールNBA3rdチーム入りも果たすなど、大きく飛躍したシーズンとなった

オフェンス力だけでなく、最近ではリーダーシップでも評価され始めている。カンファレンス決勝でヒートに2連敗後、セルティックスのロッカールームでは怒鳴り合いがあったとセンセーショナルに報道された。しかし、その件について尋ねられた際のテイタムのこんなコメントは、まだNBA3年目ながら、プロアスリート、チームがどうあるべきかを十分に理解した選手の言葉に思えた。 「2連敗したのだから、ハッピーでいるべきではない。もしもハッピーでいられるなら、気にしていないということ。僕はそうじゃない。フラストレーションを感じて当然だし、怒るべきなんだけど、それを個人的なこととして捉えるべきではないんだ」 心身両面で成長を感じさせるテイタムは、スコアラーとしての実績豊富なケンバ、セルティックスの“ハート&ソウル”と呼べる存在のマーカス・スマートといったベテランを押し除け、チームの看板と目されるようにもなった。ディフェンス面ではブラウンが上なため、現時点でチームのベストプレイヤーがテイタム、ブラウンのどちらかは意見が分かれるところではあるのだろう。それでもパーキンス、ピアース、そしてウォーカーが口を揃える通り、セルティックス内でスーパースターに最も近い位置にいるのはテイタムに違いあるまい。

真のスターとなれるか、ブロックされた男となるのか

2020年のプレイオフ中に、テイタムがまた一段、階段を上がる可能性は十分にある。今後もオールラウンドな能力を誇示し、ジミー・バトラー、バム・アデバヨが牽引するヒートをも撃破するようなことがあれば、評価はさらに上がるはずだ。群雄割拠のウェスタン・カンファレンスの王者と激突するファイナルまで到達したなら、デューク大出身の俊才は真の意味で全国区になるだろう。 その一方で、このままヒートの軍門に下った場合には? その際には第1戦のオーバータイムで決まれば同点のダンクを狙いながら、アデバヨに驚異的なブロックで弾き返された姿が象徴的なシーンとして語られることになるのかもしれない。 そのどちらの道を辿るのか、まもなく答えは出る。緊張感に満ちた戦いになるはずの今後の試合では、背番号0の背中に多くの重責がのしかかる。22歳にしてセルティックスを支えるようになった若者の行方に、NBA屈指の名門チームの未来がうっすらと見えてくるようでもある。


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杉浦大介:ニューヨーク在住のフリーライター。NBA、MLB、ボクシングなどアメリカのスポーツの取材・執筆を行なっている。『DUNK SHOOT』、『SLUGGER』など各種専門誌や『NBA JAPAN』、『日本経済新聞・電子版』といったウェブメディアなどに寄稿している。

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