「八村塁はとても謙虚な若者で、ハードワーカー」ウィザーズCCOビジネス部門代表ジム・バン・ストーン氏インタビュー(後編)【杉浦大介コラム vol.21】

ウィザーズのCCO兼ビジネス部門代表、ジム・バン・ストーン氏へのインタビュー前編では、ウィザーズが日本語コンテンツを制作するにあたった経緯や、日本のマーケットについて訊いた。後編では、実際に制作に携わっている3人の日本人スタッフやNBAで働きたいという人へ向けたアドバイスなどについて語ってもらった。

ウィザーズCCOビジネス部門代表が語る、日本語コンテンツ誕生の経緯(前編)【杉浦大介コラム vol.20】

「ザック、大衛、諒。3人ともNBAに対して情熱的」

――先ほど仰った通り、日本語コンテンツチームはザック生馬さん、小野口大衛さん、新川諒さんという3人で構成されています。この3人がご自身のビジョンにフィットしていると考えた理由はどこにあったのでしょう? JS:この3人に関して素晴らしいと思ったのは、日本だけでなく、アメリカでも活動の実績があったことです。アメリカ国内の知識もあるため、チームがワシントンDCでどんな運営をしていきたいのかをよく理解してくれていました。それに加え、彼らがこれまで成し遂げてきた実績を知ることで、雇用するのに適切な人材だと確信できたのです。ザックは素晴らしいホストであり、多くの貴重なコンテンツを生み出してきてくれました。大衛はファンを惹き付ける制作の方法を理解しており、諒はソーシャルメディアのエキスパートとして私たちのコンテンツがより多くの人々に届くように努力を続けてくれています。彼らは日本の人たちがどんなものを求めているかを熟知し、一方でアメリカのプロフェッショナルスポーツがどう運営されているかも理解してくれています。3人ともNBAに対して情熱的ですし、最高の人材を見つけられたと思っています。 ――ザックさんは彼らが日本語コンテンツチームのパイオニア的な存在になり、同じような仕事を望む人たちが今後出て来るんじゃないかという可能性も語ってらっしゃいました。その点についてはどう思われますか? JS:NBAは非常にグローバルなリーグであり、世界中から選手たちが集まっています。複数の言語でコンテンツを発信すればファンベースを広げることになるので、多くのチームが海外でのブランド作りに目を向けるでしょう。人材への需要はあるはずで、もちろん日本マーケットに関しても同様です。それはNBAに限った話ではありません。日本の大学でもスポーツビジネスに関する興味深い指導がなされていると思います。今後、アメリカのスポーツ界でチャンスは膨らんでくるでしょう。

「3人ともNBAに対して情熱的ですし、最高の人材を見つけられたと思っています」とザック氏、小野口氏、新川氏の貢献を大絶賛

――NBAで働くという夢を持っている日本人に、どんな人材が欲しいか、何を学んでおくべきか、アドバイスのようなものがあればお願いします。 JS:まずはスポーツビジネス学科で学べることはやはり非常に重要だと思います。それに加え、バイリンガルであることはアドバンテージであり、チャンスに恵まれる可能性は高まるでしょう。あとはコミュニケーションに優れていること。ビジネスの世界において、人々と良好な関係性を築くことに興味があるのは大切なことです。特にスポーツは人々の気持ちを1つにしてくれるという特長があります。これまでスポーツビジネスの世界に入りたい学生たちの前で話す機会を持ってきましたが、多くの若者が非常に情熱的です。そのような学ぶことに貪欲な若者にとって、まずはエントリーレベルで経験を積むことにも重要な意味があると感じています。

「日本でゲームを行なう機会があれば、私たちは手を挙げる」

――八村選手にも直接、接してこられたと思いますが、彼にどのような印象を抱いていますか? JS:とても謙虚な若者で、ハードワーカーですね。チームの一員としてよりも、私は主にビジネスサイドから彼を見守っていますが、人間関係を重視する青年だという印象を受けています。それは素晴らしいことで、塁はチームメイトだけでなく、チームの多くの人間と良い関係性を築いてきています。また、彼は自身が生まれ育ったバックグラウンドについて語ることを躊躇わず、故郷やルーツに還元したいという意思も持っています。ワシントンDCのウィザーズファンだけでなく、バスケットボールのファン全体のことを考えている姿勢にも感心させられますね。それらは人に教えられるものではなく、彼がもともと備えていた資質なのでしょう。

ジム・バン・ストーン氏は八村塁について「人間関係を重視する青年」との印象を持っているという

――ウィザーズがいずれジャパンゲームで来日を果たせば、多くのファンを惹きつけると思います。パンデミックで先が読めない現状では難しいですが、ジャパンゲーム開催の可能性についてどう感じられていますか? JS:海外でのゲームはNBAのリーグオフィスによって統括されますが、もしも日本でゲームを行う機会があれば、私たちは手を挙げて希望するつもりでいます。NBAは毎年、4~7の地域で海外ゲームを主催しています。今後、その中に日本が含まれたらそれはエキサイティングなこと。私たちは過去にブラジル、ロンドンでゲームを行ないましたが、日本でも開催できたらファンタスティックな経験になるでしょう。 ――残念ながらパンデミックはもうしばらく続きそうで、今後の具体的な予定を立てるのは難しい状況です。これは日本語チームに限らない話ですが、NBAが活動を停止している間はどんなことを発信していきたいと考えられていますか? JS:現在はまず人々の安全が第一で、そのために動いてくれている人たちへのサポートと感謝を示すことを忘れてはいけません。その点を重視し、これまでウィザーズの選手、職員も様々な形でメッセージを送ってきました。それに加え、私たちはこういった状況で人々を繋ぐ手段としてeスポーツを貴重なものとして捉えています。バスケットボールのeスポーツに関するコンテンツも数多く発信してきました。また、トレーニングのクリニック、チームシェフのレシピ紹介、医療スタッフのインタビュー、過去のチームのハイライトシーンなど、この状況下でも様々なコンテンツを積極的に展開していくつもりです。

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杉浦大介:ニューヨーク在住のフリーライター。NBA、MLB、ボクシングなどアメリカのスポーツの取材・執筆を行なっている。『DUNK SHOOT』、『SLUGGER』など各種専門誌や『NBA JAPAN』、『日本経済新聞・電子版』といったウェブメディアなどに寄稿している。

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