ウィザーズ番記者はどう見たか。八村塁のNBA1年目【杉浦大介コラム vol.17】

「例外を除けば、塁は堅実な活躍を続けていた」

新型コロナウイルスの影響でNBAのシーズンが中断して以来、再開の見通しは立っていない。再びゲームが行なえるとしても、6月以降になることが濃厚。さらには、NBAが残りのレギュラーシーズンを行なわず、再開後にいきなりプレイオフに臨むのではと予想する関係者も少なくない。そんなシナリオを辿った場合、シーズン中断時点でイースタン・カンファレンス9位だったウィザーズの2019-20シーズンは終了。ファンとしては残念だが、八村塁のNBA 1年目がこのまま幕を閉じてしまうかもしれないのだ。 今季八村は41戦で先発出場し、平均29.7分、13.4得点(FG成功率47.8%、3ポイント成功率27.4%、フリースロー成功率82.9%)、6.0リバウンド、1.7アシストをマーク。鼠蹊部の打撲による長期離脱こそあったものの、1年目としては及第点の数字を残してきたようにも思える。そんな日本人ルーキーのプレイを、現地メディアはどう評価しているのか。今回は『ワシントンポスト』紙のウィザーズ番記者として八村を間近で見てきた女性記者、キャンディス・バックナーに意見を求めた。 「八村はドラフトロッタリー指名で入団した選手として、期待に応えるだけの働きはしてきたと思う。特に故障離脱するまでは、コーチからもまるでベテランのようだと頻繁に称えられていた。そのプレイには安定感があり、おかげでプロへの適応もスムーズだった。シーズン中断直前、2試合にわたってFG成功がゼロに終わるなど、オフェンス時に消えてしまうという弱みも見せた。ただ、そういった例外を除けば、塁は堅実な活躍を続けていた」

日本人選手では初めてライジングスターズ・チャレンジにも出場。堅実が活躍が評価されたからと言えるだろう

2002年以降、様々な媒体でスポーツの取材、執筆を続けてきたバックナー記者は、今季の八村の安定した働きを高く評価しているようだ。 全ルーキーの中で得点は5位、リバウンドは1位。ケガで全休した1月を除き、昨年10月から今年3月まですべての月で平均10得点以上、4.9リバウンド以上を挙げてきたことは特筆に値する。ひと月で13戦というハードスケジュールだった11月はすべての月の中で最低の平均10.6得点だったが、12月に17.3得点とバウンスバックしたことも評価されてしかるべきだ。 コンスタントな働きを継続する過程で、随所にハイライトと呼べるゲームも生み出した。開幕戦でいきなり14得点、10リバウンドのダブルダブルをマーク。12月2日のクリッパーズ戦では、カワイ・レナード、ポール・ジョージといったスーパースターを擁する強豪相手にキャリアハイの30得点を挙げてアピールした。オールスターのライジングスターズ・チャレンジに日本人として史上初めて選出されると、先発出場して14得点を挙げるなど、新たな歴史の1ページを開いている。 新人王の有力候補になったジャ・モラント(メンフィス・グリズリーズ)、ザイオン・ウィリアムソン(ニューオーリンズ・ペリカンズ)のようなインパクトこそなかったものの、故障離脱期間を除き、八村は計算できる存在であり続けた。バックナー記者の指摘通り、シーズン中断直前の3月6、8日に2試合でFG14本すべてミスに終わったのは限られた例外。それ以外は総じて堅実で、今季はイースタン9位と予想以上の頑張りを見せたウィザーズに様々な形で貢献したといって良い。

入団前から言われていた八村の課題

そんな八村にももちろん課題はある。プロ1年目を過ごす中で欠点も少なからず指摘され、特にディフェンスはその中の1つとされた。 2月19日、『ブリーチャーズ・レポート』は今季のNBAにおける各ポジションの「ワーストディフェンダー」を選定。『ESPN』、『バスケットボール・リファレンス』などの分析を基準にしたこの企画で、PF部門には八村の名前も含まれていた。ポジショニングの拙さ、スピードのある相手への対応など、八村の守備には改善の余地が大いにあるのは確かなのだろう。 もっとも、ディフェンス面でも向上の跡は見られる。昨年10~12月のディフェンシブ・レーティングはすべて122台だったのが、2月は105.8、3月は113.2と改善。2月24日のバックス戦ではマッチアップしたヤニス・アデトクンボをも苦しめたように、今後の伸びしろは感じさせている。 それでは来季以降に向け、22歳のルーキーが改善していかなければいけない最大のポイントはどこにあるのか。この点に関し、バックナー記者の答えは明確だった。 「2年目に向けて、入団前から言われていた通り、外角からのシュート力を向上させなければいけない。また、第3クォーター以降も積極的にオフェンスに絡もうとする姿勢も必要。今季は好スタートを切っても、後半に存在感を無くすゲームが多すぎた」  シーズン中に何度も指摘されてきた通り、ロングジャンパーとゲーム終盤のプレイが八村のさらなる成長の鍵になるに違いない。今季の3P成功率は27.4%で、一般的に精度が上がるはずのキャッチ&シュートでも28.6%に過ぎない。ミドルレンジのシュート精度の高さは話題にはなったが、ロングジャンパー全盛の現代NBAにおいて、3ポイントが苦手なのはやはり大きなハンデではある。

課題に挙げられるディフェンスだが、中断前には改善の兆しもみられていた

これもバックナー記者が話している通り、今季の八村は“後半に消えてしまうゲーム”が非常に多かった。数字を見ても、第1~3クォーターの平均得点は3.8~4.2だが、第4クォーターだけは1.9得点。このように勝負どころで攻撃に絡めなかったことと、ロングジャンパーが苦手なことは無関係ではあるまい。 ディフェンスのプレッシャーも厳しくなる終盤で活躍するには、自身のスペースを上手に作り出すことが不可欠。ウィングでのプレイが多い八村にとっても、相手の警戒を促すだけのシュート力はやはり必須に思える。 このように課題と呼べる面も少なくないが、取り組まなければならないチェック項目がはっきりしていることはポジティブにも捉えられる。ディフェンス、3ポイントをより自信を持ってこなせるようになれば、さらなる飛躍も可能。1年目でそう言い切れるだけの能力を誇示したのだから、ルーキーシーズンはやはり成功だった。 「今季を通してNBAでもスターターを務められる実力があると証明してきた。オールスターレベルまで到達できるかどうか、何年か待ってみる必要がある」 バックナー記者もそう語り、八村がさらに大きく成長するポテンシャルを持っていることは認めている。スターになっていく選手は、たいてい1~2年目の間に大きく伸びるもの。今夏に今季が再開しようと、このまま終了しようと、八村にとっては来季が非常に重要なシーズンになることは間違いなさそうだ。

杉浦大介:ニューヨーク在住のフリーライター。NBA、MLB、ボクシングなどアメリカのスポーツの取材・執筆を行なっている。『DUNK SHOOT』、『SLUGGER』など各種専門誌や『NBA JAPAN』、『日本経済新聞・電子版』といったウェブメディアなどに寄稿している。

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