NBA JAPAN GAMES特集 東の優勝候補、トロント・ラプターズを分析!

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唯一のカナダチーム、トロント・ラプターズの歴史を知ろう

カナダ最大の都市、トロント。自然と都会が融合し、国際的、かつ多文化的な街は、住みやすい街としても非常に有名だ。カナダの5大銀行のすべてがトロントに本社を構えていることもあり、世界有数の金融センターとしても知られる。カナダで唯一、バスケットボール、野球、アイスホッケー、サッカー、カナディアンフットボールと5つのプロスポーツチームの拠点を構えることからも分かる通り、エンターテインメント性も十分に兼ね揃えた街である。NBAではここ数年で強豪という地位を確立したラプターズがスコシアバンクアリーナ(旧エアカナダセンター)を拠点に活動している。 ラプターズの設立は1995年。NBAではシャーロット・ボブキャッツ(現シャーロット・ホーネッツ)の次に新しく、まだまだ歴史も浅いチームだ。設立時に映画ジュラシックパークが大ヒットしていたため、ラプターズと名付けられたというのだから面白い。今ではスマートになったが、設立時のユニフォームにはドリブルをしているラプトルがデザインされており、ファッション性が高いことから今でも当時のレトロなユニフォームはファンの間でも人気が高い。 設立当初は勝ち星が伸び悩み苦しい時期が続いたが、一人の選手がこのラプターズを一躍有名にさせる。1998年にドラフト5位指名され、その後トレードも絡んでラプターズへ入団したビンス・カーターだ。今もなお、現役選手としてプレイするカーターの魅力は何と言っても迫力満点のスラムダンクにある。 ルーキーイヤーから高いポテンシャルを発揮していたカーターだが、世界的にラプターズ、そしてカーターファンが急増したのはやはり2000年の出来事がきっかけだろう。この年、98年、99年とロックアウトにより実施が見送られていたスラムダンクコンテストが復活。カーターの他、スティーブ・フランシス、リッキー・デイビス、そしてカーターの従弟にあたるトレイシー・マグレディ―など、普段の試合でも派手なダンクをかましているそうそうたるメンバーが揃っての開催とあって、会場はお祭り状態だった。 そんな中、カーターは期待以上の圧巻なパフォーマンスを発揮。高さ、速さ、力強さを兼ね揃えた数々の華麗なダンクを披露し、見事優勝を果たす。後に、史上最高のスラムダンカーとして語り継がれることになるのだが、カーターのハイライトシーンで最も目にする映像はやはりこの2000年のダンクコンテストだろう。それほど世の中にインパクトを与えた1日だった。 また、この年の五輪メンバーへ選出されたカーターは、フランス戦で219cmのフレデリック・ワイスを飛び越えてのダンクを炸裂。このプレイは会場の度肝を抜き、歓声と言うよりもどよめきを残した。2000年のダンクコンテスト、そしてこの五輪でのカーターの活躍は、間違いなくラプターズの知名度と人気を大きく押し上げた要因となったに違いない。 その後チームは、レブロン・ジェームズを筆頭に、多くのスーパースターを輩出することとなる2003年ドラフト組の全体4位指名でクリス・ボッシュを獲得する。7年在籍したカーターがチームを去った後は、弱冠21歳にしてチームキャプテンを務め、2006-07シーズンにチーム史上初のディビジョン優勝へ導いたボッシュだったが、プレイオフでは思うような結果を残すことはできなかった。その後マイアミ・ヒートでスリーキングスを結成することを決断するが、奇しくもそれはカーターと同じく、ラプターズへ7年在籍した後の決断だった。 その後のラプターズと言えば、自身の成長と共にチームの低迷を徐々に打破した、忘れてはならない人物がいる。昨シーズンまでラプターズへ在籍していたデマー・デローザンだ。球団最多得点の52得点を記録しているデローザンは、オールスターへも4度出場。近年はラプターズをカンファレンス上位へと導き、昨シーズンはチームを球団最高勝率へと導いた。歴史が浅いこともあり、未だ殿堂入りの選手がいないラプターズ。 デローザンはフランチャイズの顔として今後も長くチームを引っ張る存在と見られていたのだが、昨オフにサンアントニオ・スパーズへ電撃トレードされることになった。このトレードの発端は、サンアントニオ・スパーズとの確執が生まれ始めていたカワイ・レナード側の問題とあって、トレード後、デローザンへ対してはラプターズファンからも感謝の気持ちと熱いエールが送られたのが印象深い。3年連続でレブロン率いるクリーブランド・キャバリアーズに敗退した影響もあり、チームは変革を求めたのだろう。チーム力を押し上げたデローザンの功績は決して忘れてはならないが、新加入のレナードを中心に、2018-19シーズンはかつてないけど好スタートを切ったのである。

ラプターズの実力地と今後の課題

今シーズンのラプターズは球団史上最強の布陣となっている。当初、ラプターズ、スパーズ間で行われたフランチャイズプレイヤー同士のトレードに多少の混乱は生じたものの、エースのレナードは完全にチームにフィット。カイル・ラウリーやサージ・イバカ等のベテラン勢も調子を上げており、なんと言ってもMIP級の活躍を見せるパスカル・シアカムをはじめとする優秀な若手も着実に成長を遂げている。そして、ラストピースと呼ぶにふさわしい、マーク・ガソルも手に入れた。ジェレミー・リンの獲得も大きい。 怪物ヤニス・アデトクンボ率いるミルウォーキー・バックス、ベテランと若手が融合し、ビッグ4を形成したフィラデルフィア・セブンティシクサーズ、選手層ではNo.1のボストン・セルティックスと、昨季までのレブロン独壇体制とは違い、今季のイーストトップ争いは熾烈を極めている。しかし、攻守の安定性という意味で、ファイナル進出のポテンシャルが最も高いといえるのはラプターズだ。レナードも今季は大事をとって60試合前後の出場に留まったが、フルで出場していれば、球団記録となった昨季の勝率をも上回っていたはずだ。 また、プレイオフではより一層、優勝経験を持つレナードの存在が重要となるが、攻守の要という意味で、その存在はボストンのカイリー・アービング以上と言えよう。 そんな東の優勝候補のラプターズだが、今オフには大きな課題が残されている。それは紛れもなくレナードとの再契約だ。シーズン終了後、プレイヤーオプションを保持するレナードは、契約をオプトアウトし、完全フリーエージェントとなる権利があるのだ。 しかし、チーム側はレナードとの契約に自信を覗かせている。昨シーズンを右大腿四頭筋のケガで棒に振ったレナード。今季は長期的目線でレナードが健康にプレイできるよう、ラプターズ側は必要以上にロードマネージメント(健康面を配慮して欠場させること)を行い、慎重にレナードを扱っている。その甲斐あってか、レナードは健康面に一切の不安なく、プレイオフを迎えられそうであり、その状況に本人も感謝しているようだ。また、東で数年間優勝争いを行える布陣が揃っているだけに、レナードにとってもラプターズ残留は決して悪い選択肢とはならないだろう。 マーク・ガソルもまた、プレイヤーオプション付きの契約だが、衰えとは裏腹においしい年俸だけに、行使して残留する可能性が高い。そうすると、ジャパンゲームでも今年と同じ布陣が見られる可能性が高い。 ガード陣の攻撃力がずば抜けて高いロケッツに対して、層の厚いフォワード、インサイド陣はラプターズが優勢だ。今季のレギュラーシーズン2戦は何れもロケッツに軍配が上がったが、力は互角と見て間違いない。 レナードが残留する呈だが、注目すべきは互いにリーグ制覇をできるレベルの絶対的エースがいること。そして、両チーム共にチーム史上最強の布陣を構えているといっても過言ではないほどの戦力を有していることだ。この両カンファレンス上位の注目の決戦を埼玉スーパーアリーナで観られるのだから、これ以上ない世界最高レベルの決戦が待ち受けているに違いない。今回、特に初めてNBA選手のプレイを目の当たりにする子供たちがどのような刺激を受け、何を目指してバスケットをプレイするようになるか。それほど大きな影響力のある最高レベルのプレイヤー達の活躍が待ち遠しくてならない。

NBAライター ゆーきり 幼少期の10年間をアメリカで過ごす。初めて行ったNBA観戦で間近で見る選手に強い衝撃を受けNBAにどっぷりのめり込み、自身もバスケットボールを始める。ファン歴は20年を超え、これまでの自身の知識を発信しNBAファンを増やしたいという想いから、ブログ「NBA journal」を開設。現地の情報をもとに、わかりやすくもマニアックな内容を届けることを意識し、日々奮闘している。

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