史上最高のスーパーチームをリードする生粋のスコアラー ケビン・デュラント

オクラホマシティ・サンダーでの生え抜き時代

2006年から高校生によるNBAへのエントリーに制限がかかったことで、テキサス大への進学を選択したデュラントだったが、ガードのスピードとハンドリングスキルを持った長身スコアラーは僅か1年で背番号「35」をテキサス大学の永久欠番に指定させるほどの活躍ぶりを見せた。シーズン平均25.8得点、11.1リバウンドという数字をいずれも全米トップ10入り。主要個人タイトルを総なめにし、もう1人の怪物グレッグ・オデンと共に話題性を独占しながらNBAの世界へと飛び込むこととなる。2007年にドラフト2位指名でシアトル・スーパーソニックスへの入団を果たしたデュラント。 2位指名で入団したスーパーソニックスは、当時レイ・アレンとラシャード・ルイスという2大オールスターを中心にチーム作りを行ってきた古豪。しかしデュラントの入団を機に新時代への移行を決意。両エースを放出し、再建モードで新シーズンを迎えることとなる。 デュラントは入団当初、その線の細さとパワー不足が懸念され、多少の不安要素を抱えてのシーズンインとなった。しかしその後持ち前の得点力を遺憾なく発揮し、ルーキーイヤーから平均得点は20得点を上回る活躍で新人賞を獲得、NBAでも十分に通用する実力があることを証明した。 低迷中のチームは翌年にはオクラホマへ拠点を移すことになる。その後、ラッセル・ウェストブルック、ジェームズ・ハーデンの入団もあり、デュラントと合わせ今では幻のビッグ3を結成したオクラホマシティ・サンダーは、2009-10シーズンには早くも50勝を叩き出し急浮上。デュラントの平均得点は30得点を超え、史上最年少での得点王に輝き、チームも一気にカンファレンスファイナルまで駒を進めることとなる。数年前までリーグ下位に沈んだドアマットチームは、デュラントをはじめとするポテンシャルの高い若手の活躍で見違えるチームへと変貌を遂げたのだ。2011-12シーズンにはファイナルでレブロン・ジェームズ率いるマイアミ・ヒートに完敗するも、デュラントとウェストブルックの成長は止まらず、最も爆発力のある若手コンビとしてリーグを牽引した。 身長211㎝、226cmのウィングスパンを持つデュラントの打点の高いシュートを止めることは困難で、センターのサイズでガード並みのクイックネスを持つ、稀に見る才能に恵まれた。いつしかレブロン・ジェームズに次ぐリーグNo.2プレイヤーへと呼ばれるまでに成長を遂げていた。 2016年のプレイオフ、全盛期へ突入していたデュラントはカンファレンスファイナルで王者ウォーリアーズを相手に王手をかけることになる。勢いに乗るチームは、オクラホマ移転後初となるリーグ制覇へとそのまま突き進むことが予想された。しかし肝心な場面でデュラントとウェストブルックが封じられ、まさかの3勝1敗という状況から3連敗を喫し、無念の敗退を喫することとなるのである。そしてこの敗北が、デュラントに1つの大きな決心をさせることへと繋がる。

リーグ1非難を浴びた移籍の決断

ウォーリアーズとの死闘後、完全フリーエージェントとなったデュラントはあと一歩でファイナル進出、また悲願の優勝も目前とあって、サンダーとの再契約が濃厚と見られていた。しかしデュラントが契約先に選んだのは、まさかのライバルチームのウォーリアーズだったのだ。 この決断にサンダーファンは勿論、多くのNBAファンがデュラントを非難、敵視した。思い返せば、過去にレブロン・ジェームズもマイアミでドゥエイン・ウェイド、クリス・ボッシュと共にスリーキングスを結成し、リーグを支配した。その少し前にはポール・ピアース、レイ・アレン、ケビン・ガーネットがトリオを結成し、リーグにビッグ3を定着させるきっかけを作ったことから、今では各チームにエース級選手が3、4人集まろうが、さほど驚くべき出来事ではなくなっている。 そのような状況下、デュラントの選択がかつてないほどバッシングを受けたのは何故なのだろう。その答えは、つい数ヶ月前までライバルとして熱い戦いを繰り広げていたリーグ最高勝率を更新した王者に、単純にリーグNo.2のプレイヤーが加わってしまったことに他ならない。これは、互いに優勝を目指してスーパースターが1チームに集結したのとは訳が違う。生え抜き選手の台頭で、40年ぶりの優勝を果たし、シーズン73勝という新記録まで樹立した王者に、ダメ押しでトップスターが入団したのだ。もはやリーグの均衡を覆すレベルの出来事に、デュラントにはリーグを代表する”嫌われ者”というレッテルが貼られてしまった。 近年は選手が自らの感情をSNSを通して発信するケースは珍しくないが、ネット上でも感情を素直に表現してしまうデュラントはより一層ヒール役に拍車をかけてしまっている部分がある。しかも本人はネットの炎上も自らの闘争心を高めるモチベーションとしているとのコメントを残しており、今後もスタンスを変えるつもりは一切無さそうである。 注目度の高い選手の移籍にはどうしても批判的な意見が付きまとうものだが、その常識を凌駕するほど、デュラントの移籍はリーグに衝撃を与えたのである。 ただ、現在デュラントはリーグを2連覇、2年連続ファイナルMVPまで獲得中とあって、本人にとっては大成功の移籍だったと言えよう。

リーグの勢力図に影響を与える今後の決断とは!?

今シーズン、ウォーリアーズはロスターにデマーカス・カズンズを加え、更に戦力はパワーアップ。オールスターを5人要する史上最強チームとして開幕を迎えた。3連覇はほぼ濃厚、他チームとは戦力の厚みが違う絶対王者という位置づけだが、一方で過去数年と違い、綻びが見えつつあるのも事実である。 カズンズの出遅れは想定内だったものの、ステフィン・カリー、ドレイモンド・グリーンと主力にケガが続いたことでチームは期待値まで勝率を伸ばせない時期が続いた。また、11月のクリッパーズ戦では、デュラントとグリーンの間で試合終盤のプレイを巡っての口論が勃発。グリーンはその際、今オフにフリーエージェントとなるデュラントへ対して「どうせチームを去るのだろう」、「お前がいなくなっても優勝できる」などといったニュアンスの言葉を投げ放ったとされている。こちらはフロントにとっても非常に繊細な話題であり、チームはグリーンの振る舞いへ対して即座に1試合の出場停止処分を課した。 グリーンはデュラントのウォーリアーズ加入を説得したメンバーでもあり、リオ五輪でもアメリカ代表メンバーとして共にプレイをしている間柄。以前にも衝突した経緯があり、互いに気心が知れた仲ということで2人の関係性はあまり問題視する必要性はないのかもしれない。しかし、その口論直後にチームはスティーブ・カーHC体制で最長となる4連敗を喫したのも事実。チームの歯車、そしてシーズン終了後のデュラントの選択に少なからず影響を与える可能性があることは否めないだろう。 それでも、スーパーチームは必ずや立て直し、プレイオフに照準を合わせてくることは間違いない。年明け以降、チームは今季最長となる11連勝を飾り、デュラントはオールスターでMVPも獲得した。ケガ人も復帰し、新加入のカズンズも今のところうまく噛み合っている。調子を上げてきている王者は3連覇へ向けて、残すは第1シードの確保とメンバーのメンタル面のケアを入念に行うことで万全の体制を整えてくるに違いない。 早くもプレイオフが待ち遠しいのだが、一方でデュラントの今後の動向が気になるのも事実である。レブロンに若干の衰えが見え始めたシーズン後半、実質デュラントを現リーグNo.1プレイヤーと呼んでもおかしくはない。彼が移籍するようだと、再びリーグの勢力図を大きく変えることになる。ウォーリアーズとしても、デュラント、クレイ・トンプソン、そしてカズンズがFAとなる今オフは、戦力維持が最重要課題となるため、デュラントへ対して最高の条件を提示することが予想される。仮に3連覇を実現したとして、史上初の4連覇を狙うことへ炎を燃やすのか。もしくは自らを中心とした体制を作り、且つ優勝争いへ食い込めるチームへの移籍を優先するのか。 現時点ではデュラント自身も結論を出していないだろうが、仮に後者の場合はボストン・セルティックスやフィラデルフィア・セブンティシクサーズなど、既に戦力が整っているチームへの移籍の可能性が高いだろう。もしくは、現在は下位に低迷中だが、ロスターを整理し、十分なキャップスペースが見込めるニューヨーク・ニックスも候補先として挙げられる。一部ではカイリー・アービングと共にニックスでのプレイを希望するニュースが報道されている。ドラフトでレブロン2世と呼ばれるザイオン・ウィリアムソンの獲得も期待されることから、もしかすると移籍先としては最有力と見ても良いのかもしれない。 現在ではコービー・ブライアントやティム・ダンカンのように1つのチームでキャリアを終えるパターンは非常に珍しい。果たして全盛期真っ只中のデュラントはウォーリアーズでの引退も視野に入れ、長期契約を結ぶのか、それともリーグを再び驚かす新たな決断を下すのか。その動向は今オフ間違いなく最も注目されるトピックとなるだろう。

NBAライター ゆーきり 幼少期の10年間をアメリカで過ごす。初めて行ったNBA観戦で間近で見る選手に強い衝撃を受けNBAにどっぷりのめり込み、自身もバスケットボールを始める。ファン歴は20年を超え、これまでの自身の知識を発信しNBAファンを増やしたいという想いから、ブログ「NBA journal」を開設。現地の情報をもとに、わかりやすくもマニアックな内容を届けることを意識し、日々奮闘している。

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