NBA2018-19シーズン 【注目トピック ウェスタン・カンファレンス編】

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2018-19シーズン ウェスタン・カンファレンス注目トピック

ウェスタン・カンファレンスに属する各チームの選手や監督情報や特徴など注目トピックを詳しく解説!三連覇がかかっているゴールデンステイト・ウォリアーズは新星デマーカス・カズンズを加え、どのようなプレイメイクをしてくるのだろうか。そしてレブロン・ジェームズがロサンゼルス・レイカーズに移籍したことは、激戦区といわれるウェスタン・カンファレンスにどのような風を吹かすのだろうか。

ダラス・マーベリックス

・2018-19シーズンで、ダーク・ノビツキーはNBAタイ記録となる現役生活21シーズン目を迎えることになる。また、彼は、1つのチームだけで21シーズン現役生活を続けたNBA史上初の選手になる。(それまでの最長記録は、レイカーズのコービー・ブライアントの20シーズンだった。) ドイツ出身の40歳のノビツキーは、今シーズンからチームに加わるルカ・ドンチッチ(19歳)の人生よりも長く現役を続けている。キャリア通算の総得点でNBA歴代6位にランクしているノビツキーは、今シーズン中に233得点決めれば、歴代5位のウィルト・チェンバレンを抜くことができる。更に、彼は今シーズン中に歴代4位のマイケル・ジョーダンを抜く可能性もある。だが、ノビツキーは僅か150点差でレブロン・ジェームズに追われている。 ・過去の活躍を見れば、ルカ・ドンチッチがNBAデビュー早々から活躍することは目に見えている。昨シーズン、19歳のドンチッチは、ユーロリーグのMVPとユーロリーグ・ファイナルのMVPを受賞する活躍で、レアルマドリードをユーロリーグのチャンピオンに導いた。更に、そのシーズンの前には、彼はマイアミ・ヒートのゴラン・ドラギッチと共にセルビア代表を牽引し、母国に初のユーロ・バスケットボール・チャンピオンの栄冠をもたらしている。今シーズン、ノビツキーとドンチッチという2人の『ヨーロッパの至宝』が、マーベリックスで共にプレーすることになる。 ・今年のNBAドラフトの最後の指名順位(2巡目全体60位)で指名されたコスタス・アデトクンボは、マーベリックスと2WAY契約を結ぶことに成功した。20歳のコスタスがNBAデビューを果たすと、アデトクンボ家から3人目のNBAプレーヤーが誕生することになる。アデトクンボ家の長男は、ミルウォーキー・バックスのスター選手のヤニス・アデトクンボだ。次男のタナシスは2016年にニューヨーク・ニックスの選手として2試合に出場した経験があり、現在はギリシャでプレーしている。四男のアレックス・アデトクンボは、ウィスコンシン州の高校バスケのスター選手で、つい先日、セルビアで開催されたバスケットボール・ウィズアウト・ボーダーズ・キャンプにも招待されている。

デンバー・ナゲッツ

・ナゲッツは、2シーズン連続でウェスタン・カンファレンスの9位でシーズンを終えた。そのどちらのシーズンも、彼らはプレーオフ進出最後の椅子となる8位シードまで僅か1ゲーム差という悔しい結果だった。しかし、素晴らしい若手中心選手達(ニコラ・ヨキッチ、ゲーリー・ハリス、ジャマール・マレー)と、健康な状態のポール・ミルサップの復活、そして2度のオールスター出場歴を誇るアイザイア・トーマスの加入により、ナゲッツは5シーズンぶりにプレーオフに進出する可能性が高い。 ・ニコラ・ヨキッチは、オールスター出場経験は無いが、非常に素晴らしい選手だ。今シーズン、ナゲッツは例年以上に頻繁に全国放送される予定なので、きっとこの23歳のセルビア人選手の知名度もアップするはずだ。彼は、いわゆる『現代版ビッグマン』だ。彼は、長距離シュートやパス、ボールハンドリングまでこなす。ここ2シーズンの間にヨキッチは16回トリプルダブルを達成しているが、彼以上にトリプルダブルを成功させているのは、ラッセル・ウェストブルック(67回)、レブロン・ジェームズ(31回)、ジェームズ・ハーデン(26回)という、いずれもMVP受賞歴のあるスター選手だけだ。 ・ナゲッツには、ドラフトで低評価を受けながらも、そこから這い上がってきた選手が沢山いる。アイザイア・トーマスは、2011年のNBAドラフトの最下位(60位)でキングスにドラフトされたが、2016-17シーズンのMVP投票で5位にランクされるまでに成長した。2014年のNBAドラフト2巡目全体41位でナゲッツにドラフトされたニコラ・ヨキッチは、ナゲッツ史上最高の掘り出し物と言えるだろう。また、4度のオールスター出場歴を誇るポール・ミルサップ(2006年のドラフト47位)や、有能なシックスマンとして活躍するウィル・バートン(2012年のドラフト40位)もドラフト以降に大躍進した選手だ。

ゴールデンステイト・ウォリアーズ

・3連覇を狙うウォリアーズは、もし今年もNBAファイナルに進出すると、5年連続でNBAファイナルに進出したNBA史上2番目のチームになる。5年以上連続でNBAファイナルに進出したのは、1957年から1966年までの10年連続でNBAファイナルに進出したボストン・セルティックスだけだ。ちなみに、過去に3連覇以上を達成したのは、セルティックス(1959年から1966年)、ブルズ(1991年から93年までと1996年から1998年まで)、レイカーズ(1952年から1954年までと2000年から2002年まで)の3球団のみだ。 ・2年連続でNBAファイナルMVPを受賞したケビン・デュラントは、開幕前の9月29日に30歳を迎えた。30歳の時点でデュラント以上の総得点を記録したのは、レブロン・ジェームズ、コービー・ブライアント、ウィルト・チェンバレンの3人しかいない。また、デュラントはスコアラーとしてだけでなく、ディフェンダーとしても成長している。2017-18シーズン、彼は平均ブロック数でNBA5位にランクインし、NBAオール・ディフェンシブ・チームの1位票を7票獲得した。 ・ウォリアーズは、アキレス腱断裂の大怪我を負ったデマーカス・カズンズの復帰を待っている。彼が不在の間は、若手のジョーダン・ベルが先発センターを務める可能性がある。昨年のNBAドラフトの2巡目で指名されたベルは、プロ入り1年目から良い活躍を見せた。ベルはオレゴン大時代にPac12の年間最優秀守備選手賞を受賞しているが、彼はNBAでも同様の賞を受賞したいと願っているはずだ。ここ3年の間にウォリアーズがドラフトやNBA Gリーグで発掘した選手達(ベル、キボン・ルーニー、パトリック・マコー、クイン・クック)は軒並み活躍している。今年のNBAドラフト1巡目で指名したヤコブ・エバンスにも期待がかかる。

ヒューストン・ロケッツ

・クリス・ポールの親友のカーメロ・アンソニーがロケッツに加入したが、その代わりにチームは長年先発を務めたフォワードのトレバー・アリーザを失うことになった。ポールとアンソニーの2人は、自身にとって初めてのNBAファイナル進出を狙っている。ポールは今年のプレーオフでNBAファイナルまであと一歩のところまで迫ったし、アンソニーは約10年前のナゲッツ時代に1度だけカンファレンス・ファイナルに進出したことがある。今シーズン、ポールは総アシスト数でNBA歴代7位に浮上する可能性がある。現在、総得点でNBA歴代19位にランクしているアンソニーは、近いうちにケビン・ガーネット、ポール・ピアース、ティム・ダンカンらを追い抜く可能性がある。 ・センターのクリント・カペラは、2017-18シーズンに大ブレイクした。彼は1試合平均13.9得点10.8リバウンドを記録し、フィールドゴール成功率でNBAトップの65.2%をマークして、昨シーズンのMIP賞の投票の2位にランクインした。ゴールに向かって走り込むセンスとディフェンス意識に長けたカペラは、特別なセットプレーがなくても活躍できるタイプの選手だ。昨シーズンのロケッツは、カペラとジェームズ・ハーデンとポールの3人が揃って出場した試合は42勝3敗という高勝率を上げている。両親がアンゴラとコンゴ出身のカペラは、2017年のNBAアフリカ・ゲームにも参加した。スイス国籍の24歳のカペラのアイドルは、同じくスイス出身のタボ・セフォローシャ(ユタ・ジャズ)だ。 ・フォワードのジョウ・チーは、2017-18シーズンの開幕ロスター入りに成功した唯一の中国人選手だ。プロ入り1年目の昨シーズン、彼はロケッツで18試合プレーした他、NBA Gリーグでも24試合に出場した。2年目の飛躍が期待されたチーだが、プレシーズンゲームの上海・シャークス戦で膝を故障してしまった。

ロサンゼルス・クリッパーズ

・2年前まで、クリス・ポール、ブレイク・グリフィン、ディアンドレ・ジョーダンというコアメンバーを揃えたクリッパーズは、5シーズン連続でシーズン50勝以上を達成し、6年連続でプレーオフに進出していた。だが、今シーズンまでにその3人全員を失ったクリッパーズは、ここから新たな時代を築き上げることになる。昨シーズン、怪我人やグリフィンのトレード等の影響でリーグ最多の37種類の先発の組み合わせを余儀なくされたクリッパーズは、その苦しい状況の中でもプレーオフ戦線に生き残った。これは、ドック・リバースHCの20年に及ぶコーチ・キャリアの中でも最も良い仕事だったと言えるだろう。 ・昨シーズン、ベテランのルー・ウィリアムスが1試合平均22.6得点と大活躍し、自身にとって2度目のシックスマン賞を受賞した。31歳のウィリアムスは、キャリア13シーズン以上した選手で平均20得点以上を記録したNBA史上初の選手となった。クリス・ポールが絡んだトレードでロケッツから移籍してきたウィリアムスは、今年2月にクリッパーズと延長契約を結んでいる。 ・クリッパーズのルーキーのシャイ・ギルジアス・アレクサンダーとジェローム・ロビンソンに期待が集まっている。今年のNBAドラフト11位で指名されたギルジアス・アレクサンダーは、カナダ出身の長身ポイントガードで、高いバスケットボールIQに定評がある。同じく今年のNBAドラフト13位で指名されたロビンソンは、即戦力として期待されている。彼は、ドラフト前の段階からジェリー・ウェスト球団社長に気に入られていた。

ロサンゼルス・レイカーズ

・レイカーズのライバルチーム達は、レブロン・ジェームズがレイジョン・ロンドやランス・スティーブンソンと上手くやっていけるのかどうか興味津々だろう。今年のNBAファイナル期間中の会見で、ジェームズは、ロンドの高いバスケットボールIQと、試合に向けた姿勢を褒め称えるコメントをしていた。また、ペイサーズ時代にスティーブンソンがジェームズの耳に息を吹きかけた一件に代表されるように、ジェームズとスティーブンソンの間には様々な因縁があった。 ・レブロン・ジェームズは、チームのロスターを経験豊富なベテラン選手で固めようとする傾向がある。例えば、昨シーズンまでの2シーズンは、ジェームズが所属していたクリーブランド・キャバリアーズが、開幕時点で最も平均年齢が高いチームだった。実際、この夏もレイカーズは数名のベテラン選手を補強している。だが、今のレイカーズは、カイル・クーズマ、ロンゾ・ボール、ジョシュ・ハート、ブランドン・イングラムら若くて才能溢れる選手にも恵まれている。彼らベテランと若手がいかに上手く融合するかが、今後のレイカーズの躍進の鍵になるだろう。 ・今年のNBAドラフト1巡目25位で指名されたドイツ人フォワードのモリッツ・ワグナーは、ドイツ人選手の大先輩にあたるダーク・ノビツキーに関して「彼は俺にとってのMJ(マイケル・ジョーダン)だ。彼がいたおかげで、俺はNBA選手になる可能性を信じることができたんだ」とコメントしている。ワグナーは、ノビツキーのポスターを自分の部屋の壁に貼っていた。彼らは、2017年にデトロイトで初対面している。レイカーズとマーベリックスの試合は現地10月31日に予定されているので、ワグナーとノビツキーの初対決はすぐに実現するかもしれない。

メンフィス・グリズリーズ

・マーク・ガソルは、地中海で漂流していた難民に救いの手を差し伸べたことで、今オフに話題になった。この彼の救出劇は、ESPNの放送で大々的に取り上げられている。一方、コート上でもガソルは目覚ましい活躍をしている。昨シーズン、彼は総得点、リバウンド、アシスト、ブロックの4部門でチームトップの成績を残した。グリズリーズで11シーズン目を迎える33歳のガソルは、チーム史上最多の通算得点記録をマークしている。 ・マイク・コンリーは、チームにとって最も重要な選手だと永らく考えられてきたし、オールスターに選ばれたことがないNBA選手の中で彼が最も優れた選手であることは疑いの余地がない。彼の存在価値は、グリズリーズの昨シーズンの成績を見ても明らかだ。昨シーズンのグリズリーズは、コンリーがいた試合は7勝5敗だったが、彼が負傷離脱して以降は15勝55敗と大きく負け越しているのだ。2007年のNBAドラフト1巡目全体4位でコンリーが入団して以降、グリズリーズは、コンリーが出場した試合は375勝313敗(勝率54.5%)で、彼がいない試合は66勝132敗(勝率33.3%)という成績になっている。昨シーズン、グリズリーズはメンフィス移転以降で最悪のシーズンを送ったが、コンリーが踵の怪我から復活する今シーズンは、一味違う内容になるだろう。 ・ルーキーのジャレン・ジャクソンJr.は現地9月15日に19歳の誕生日を迎えた。彼は今年ドラフトされたNBA選手の中で最年少の選手だ。今夏に出場したユタとラスベガスのサマーリーグで、ジャクソンJr.は、シュート力、クイックネス、ショットブロック能力の高さを見せつけた。彼は、NBAで12年間プレーしたジャレン・ジャクソンSr.と、現在はWNBPAの運営主任を務めるテリー・カーマイケル・ジャクソンとの間に生まれた息子だ。

ミネソタ・ティンバーウルブズ

・カール・アンソニー・タウンズは、将来有望なNBAスターの1人だ。昨シーズン、22歳のセンターはオールスターに初選出され、リーグトップのダブルダブル回数を記録する大活躍で、チームを2004年以来初のプレーオフ進出に導いた。彼は、プロ入りから3シーズンの間に通算5000得点、2500リバウンド、スリーポイントシュート250本成功という記録を同時に達成した史上初の選手になった。彼は今オフに超大型複数年契約で契約延長し、名実共にチームの顔となった。 ・昨シーズン、アンドリュー・ウィギンスは、2017-18シーズンの開幕ロスターに入ったカナダ人NBA選手の中で最多となる1試合平均17.7得点を記録した。彼は、プロ入りから4年間で1試合しか欠場していない。彼は2017年にウルブズと延長契約を結んでいるため、彼のサラリーは今シーズンから大幅にアップする。まだ23歳という年齢を考えると、ウィギンズには攻守両面でまだまだ伸び代が残っていると見て良いだろう。チームが昨年に引き続いてプレーオフに進出できるかどうかは、彼の成長にかかっているだろう。 ・ティンバーウルブズは、2018-19シーズンで球団創設30周年を迎える。彼らは、特別なロゴや1996-2008シーズンのユニフォームを復刻する等して、特別なシーズンを祝うそうだ。

ニューオリンズ・ペリカンズ

・昨シーズンの最後の2ヶ月間で、ペリカンズはウェスタン・カンファレンスのチームの中で2番目に良い成績を残した(20勝8敗)。彼らは、シーズン途中にオールスター・センターのデマーカス・カズンズをアキレス腱断裂で失ったが、エースのアンソニー・デイビスとシーズン途中に獲得したニコラ・ミロティッチを軸としたスモールボールとアップテンポな試合展開に戦略をシフトし、苦しい状況を打開した。昨シーズン、ペリカンズはNBAで最も早いペースでプレーしたチームだった。今オフにカズンズとロンドが移籍したが、彼らはポイントガードにエルフリッド・ペイトンを加え、インサイドに得点力の高いジュリアス・ランドルを獲得したことで、戦力の維持に成功している。 ・ジェームズ・ハーデン、ラッセル・ウェストブルック、ステフィン・カリー、デイミアン・リラードといった優秀なガードがひしめくウェスタン・カンファレンスでプレーしているので目立たないかもしれないが、ドリュー・ホリデーは非常に良いガードだ。何より、彼は攻守両面でチームにインパクトを与えられる点が素晴らしい。昨シーズン、28歳のホリデーはキャリアハイの1試合平均19得点を記録し、NBAオール・ディフェンシブ・ファーストチームにも選出されているのだ。彼は、昨シーズンのプレーオフで平均得点を23.7得点にアップさせ、ペリカンズが10年ぶりにカンファレンス・ファイナルに進出する原動力になった。 ・果たしてアンソニー・デイビスは今シーズンのMVPを受賞できるのだろうか。25歳のデイビスは、昨シーズン、MVPと最優秀守備選手賞の投票でどちらも3位にランクし、2年連続となるオールNBA・ファーストチーム入りも果たしている。また、彼は昨シーズン、2000得点以上800リバウンド以上150ブロック以上100スティール以上を同時に達成している。これは、1995-96シーズンのデイビッド・ロビンソン以来のことだ。この成績を見たデイビスは、自らのことを「最強の選手だ」とコメントしている。

オクラホマシティー・サンダー

・ラッセル・ウェストブルックは、2シーズン連続でシーズン・トリプルダブルという偉業を達成した。2年連続でシーズン・トリプルダブルを達成したのは、NBA史上で彼が初めてだ。現在、ウェストブルックはキャリア通算で104回トリプルダブルを達成しているが、これはNBA歴代4位の数字だ。彼は、あと4回トリプルダブルを達成すれば、ジェイソン・キッド(107回)を抜いてNBA歴代3位にランクアップする。NBA歴代2位はマジック・ジョンソンの138回で、歴代1位はオスカー・ロバートソンの181回だ。 ・サンダーのサム・プレスティGM(ゼネラルマネージャー)は、ここ数年に渡って大型補強を繰り返している。昨年のオフに、彼は、1年後にはフリーエージェントになることが濃厚だったポール・ジョージと(今オフに彼はジョージと再契約を結ぶことに見事成功している)、スター選手のカーメロ・アンソニーをトレードで獲得した。また、彼はこの年に早々とウェストブルックの延長契約にも成功している。そして今オフ、プレスティGMはアンソニーをトレードで放出してホークスからデニス・シュルーダーを獲得した他、若くて将来有望なビッグマンのナーレンズ・ノエルもラインナップに加えた。プレスティGMは、ウェストブルックが全盛期の間に何とか優勝しておきたいと考えているようだ。 ・シュルーダーは、ウェストブルックの激しさと闘争心の高さに憧れていた。サンダーの今オフ最大の補強であるこのドイツ人ガードは、尊敬するウェストブルックのプレーを間近で見ることができるのだ。ウェストブルック同様、シュルーダーも非常に攻撃力の高いポイントガードだ。この2人が同時にコートに立ったら、かなり凄いことになりそうだ。今オフにウェストブルックは膝を手術したため、開幕後しばらくはシュルーダーが先発ポイントガードを任されることになる。ウェストブルック復帰後は、シュルーダーはベンチからの起爆剤としての役割を任されることになるだろう。

フェニックス・サンズ

・セルビア出身のイゴール・ココスコフ新HCは、北米以外の国籍を持つNBA史上初のヘッドコーチだ。NBAでのアシスタントコーチ歴が豊富なココスコフHCは、2017年にスロベニア代表をFIBAユーロ・バスケットの優勝に導いた他、グルジア代表をFIBAユーロ・バスケットボールに3回出場させる等、国際舞台での豊富な経験を誇っている。ココスコフHCは選手育成に定評がある。彼は、サンズでアシスタントコーチをしていた時代にスロベニア代表のスター選手ゴラン・ドラギッチ(現マイアミ・ヒート)を育てたことでも有名だ。 ・昨シーズン、サンズはリーグで最も若いロスターで開幕を迎えた(平均年齢24.49歳)。その状況は、今シーズンも殆ど変わらない。今シーズンのサンズの開幕ロスターに入っている25歳以下の選手は、ドラフト1位のディアンドレ・エイトン、同じく新人のミカル・ブリッジス、エリー・オコボ、デアントニー・メルトン、ジョシュ・ジャクソン、TJ・ウォレン、ドラガン・ベンダー、そしてスター選手のデビン・ブッカーだ。プロ入りから3シーズン続けて1試合平均20得点近くを叩き出しているブッカーだが、彼はまだ若干21歳だ。 ・若いサンズだからといって、ベテランのリーダーシップが欠けている訳ではない。チームには、大ベテランのタイソン・チャンドラーの他、今オフの補強で獲得したトレバー・アリーザとライアン・アンダーソンもいる。10月2日に36歳になったチャンドラーは、2001年のNBAドラフト組の中で、昨シーズンの終了時点までロスターに残った6人の選手のうちの1人だ。19歳でNBAデビューしたチャンドラーは、長くキャリアを続けるコツを知っている。かつて最優秀守備選手賞を受賞したこともあるチャンドラーは、新人のディアンドレ・エイトンの良き指導者になるだろう。

ポートランド・トレイルブレイザーズ

・昨シーズン終盤の39試合を27勝12敗で締めくくったブレイザーズは、ウェスタン・カンファレンスの3位シードでシーズンを終え、5年連続でプレーオフに進出した。ブレイザーズと言えば、強烈な得点力を誇るガードコンビのデイミアン・リラードとCJ・マッカラムが真っ先に思い浮かぶが、昨シーズンのチームを支えたのは間違いなくディフェンスだ。昨シーズン、ブレイザーズはディフェンス・レーティングの順位を2016-17シーズンの29位から一気に8位にまでランクアップさせたのだ。 ・脚の怪我により2017-18シーズンを全休したセス・カリーが、今オフのフリーエージェントでブレイザーズと契約した。2年前、彼はドラフト外で入団したマーベリックスで1試合平均12.8得点を叩き出して見事に大ブレイクした。その年に彼が記録した42.5%というスリーポイントシュート成功率は、2度のMVPに輝く兄のステフィン・カリー(41.1%)を上回る数字だった。今夏、兄のステフィンは「セスはきっと大復活するぜ」とツイートしている。 ・今年のNBAドラフト2巡目全体37位で指名されたゲイリー・トレントJr.は、かつて自分の父親がプレーしたチームでプロとしてのキャリアをスタートする。ゲイリー・トレントSr.は、9年間のNBAキャリアの最初の2シーズン半をブレイザーズでプレーした。息子のトレントはデューク大で1年間プレーしており、その間にJJ・レディックが同大学で樹立したスリーポイントシュート成功数の1年生記録を破っている。

サクラメント・キングス

・マービン・バグリー3世は今年のNBAドラフト1巡目全体2位指名でキングスに入団したが、彼の母方の祖父にあたるジョー・コールドウェルも1964年のNBAドラフトでピストンズに2位指名されている。ジョーは、NBAとABAの両方でオールスターに選出された名選手だ。19歳のバグリーは、デアーロン・フォックス(20歳)、スカル・ラビシエー(23歳)、ジャスティン・ジャクソン(23歳)、バディ・ヒールド(24歳)、ウィリー・コーリースタイン(25歳)、ボグダン・ボグダノビッチ(26歳)ら、キングスの若いコアメンバー達と共に、キングスにとって2006年以来となるプレーオフ進出を目指す。オフコートで、バグリーは作詞と曲のレコーディングを趣味としている。彼のラップのスキルには定評があるようだ。 ・ハリー・ジャイルズが今年のNBAサマーリーグで活躍したことは、キングスにとって嬉しい出来事だった。ジャイルズは2017年のNBAドラフト1巡目全体20位でキングスに指名されたが、怪我の影響でプロ入り1年目の昨シーズンを全休していた。高校時代、ジャイルズは全国ナンバーワンの選手との呼び声も高かったが、度重なる膝の故障により本来の輝きを失っていた。彼はデューク大で1年プレーした後、クリス・ポールのAAUチームで何度かプレーしていた。ジャイルズとポールは非常に親しい関係になっていたため、ジャイルズがドラフトされた時、ポールは嬉しさで泣き崩れそうな勢いだったそうだ。今シーズン、ジャイルズはバグリー3世やラビシエーといった若手ビッグマン達と出場時間を争うことになる。 ・昨シーズン、セルビア出身のボグダノビッチは大活躍を見せた。NBA入り1年目の2017-18シーズンに、彼は1試合平均11.8得点を記録した他、スリーポイントシュート成功率とスリーポイントシュート成功数の2部門で全ルーキー中4位につけた。26歳のボグダノビッチは、NBAに来る前にトルコの名門プロチームのフェネルバプチェ等でプレー経験があるため、純粋な『NBAルーキー』とは言えないかもしれない。ちなみに、今シーズンからキングスに加入するネマニャ・ビエリツァ(同じくセルビア出身)とは、フェネルバプチェ時代に一緒にプレーしている。今年のライジングスターズでMVPを受賞したボグダノビッチは、優れた試合勘を持ち、チームメイトにも気に入られている。彼は、今オフに膝の治療をしたため、開幕には出遅れる見込みだ。

サンアントニオ・スパーズ

・スパーズはこれまで21シーズン連続でプレーオフに進出している(1997-98シーズンから2017-18シーズン)。これは、ポートランド・トレイルブレイザーズ(1982-83シーズンから2002-03シーズン)と並んでNBA史上2番目に長い記録だ。今シーズン、もしスパーズが再びプレーオフに進出すれば、彼らはNBA史上1位の記録に並ぶことになる。プレーオフ連続出場記録のNBA歴代1位は、シラキュース・ナショナルズ(現フィラデルフィア・76ers)の22シーズン連続だ(1949-50シーズンから1970-71シーズン)。 ・新加入のデマー・デローザンは、スパーズの新たなスターになるだろう。数年前にブレイザーズから移籍してきたラマーカス・オルドリッジも同じような経歴を持っている。長年チームを支えたマヌ・ジノビリ、トニー・パーカー、カワイ・レナードの3人が去った今、デローザンとオルドリッジの2人がスパーズの顔になることは間違いない。彼ら2人は、昨シーズンのNBAオール・セカンドチームに選出されている。また、彼らは中距離シュートの名手としても知られている。昨今はスリーポイントシュート全盛だが、彼らはミドルシュートを武器に今後も生き抜いていくだろう。 ・ガードのデジョンテ・マレー(2016年のドラフト)とデリック・ホワイト(2017年のドラフト)は、共にドラフト29位で指名されている。2人は、スパーズが得意とする『下位指名の掘り出し物』だ。若干22歳のマレーは、プロ入り2年目の昨シーズンにNBAオール・ディフェンシブ・チームに選出されている。24歳のホワイトは、昨シーズン、オースティン・スパーズをNBA Gリーグのチャンピオンに導いている。マレーがプレシーズンゲームで前十字靭帯を断裂したため、今シーズンはホワイトの活躍に期待がかかる。今年のNBAドラフト18位で指名されたロニー・ウォーカー4世も、プレシーズンゲームで右膝内側半月板の断裂という大怪我を追っている。

ユタ・ジャズ

・昨シーズン、主力の怪我に悩まされたジャズは、現地1月23日の段階で19勝28敗と負け越しており、順位もウェスタン・カンファレンスの10位に沈んでいた。しかし、彼らは、そこから29勝6敗というNBA全チーム中2番目に高い勝率でレギュラーシーズン終了まで快進撃を続け、ウェストの5位シードでプレーオフを迎えることに成功した。ジャズは、2年連続でプレーオフ1回戦を突破している。彼らは、今シーズン更なる飛躍を遂げるはずだ。昨シーズンの新人王レースで惜しくも次点に終わったドノバン・ミッチェルは今シーズンは開幕から先発を務めることになるし、昨シーズン26試合に欠場したにも関わらず最優秀守備選手賞を受賞したルディ・ゴベアも健康な状態を取り戻している。NBA有数のスピードと高いディフェンス力を誇るダンテ・エクサムは、昨シーズンは怪我で14試合にしか出場できなかったが、彼も万全の体調でシーズン開幕を迎えられる見込みだ。 ・エクサムは、今シーズンのジャズの切り札になるだろう。2014年のNBAドラフト1巡目全体5位で指名されたエクサムは、度重なる怪我により直近の2シーズンをほぼ丸々棒に振ってきた。健康な状態であれば、彼の優れたディフェンス力とオフェンスでの爆発力は、必ずやジャズの武器になるはずだ。まだ若干23歳のオーストラリア人ガードには、まだまだ多くの可能性が秘められている。 ・ジャズは国際色豊かなチームだ。今シーズンの開幕時点で、アメリカ国外の7カ国の選手がジャズのロスターに入っている。これは、ラプターズと並んでNBA最多の数字だ。ルディ・ゴベア(フランス)、ジョー・イングルス(オーストラリア)、リッキー・ルビオ(スペイン)、ダンテ・エクサム(オーストラリア)、ハウル・ネト(ブラジル)、タボ・セフォローシャ(スイス)の6名は、既に今シーズンの契約が保証されている。

NBAジャーナリスト/イラストレーター 西尾瑞穂 雑誌・テレビ・インターネット等の媒体で活動するフリーランス・イラストレーター。イラストを通じてNBA選手やNBA球団と親交を深めており、NBAの現役選手に頼まれてイラストを制作する機会も多数。ファン歴25年以上という熱狂的なユタ・ジャズのファンだったが、最近ではイラスト制作をきっかけにチームと密接な繋がりを持つようになり、昨年はジャズの球団社長から直接依頼を受けてチームの公式イラストを制作した。NBAジャーナリストとして8年前からNBAの現地取材をスタートし、NBAオールスターゲームは毎年現地で取材している。

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