NBA2018-19シーズン開幕特集【注目トピック イースタン・カンファレンス編】

シェア

2018-19シーズン イースタン・カンファレンス注目トピック

イースタン・カンファレンスに属する各チームの選手や監督情報や特徴など注目トピックを詳しく解説!中でも人気とされているのは、ボストン・セルティックス。昨シーズンはエース、カイリーアービングやゴードン・ヘイワードの怪我もあり、悔しくもカンファレンス・ファイナルにてレブロン・ジェームズ率いるクリーブランド・キャバリアーズに敗北した。彼らの復帰を経て、今シーズンどのような爆発ぶりを見せてくれるのだろうか。

アトランタ・ホークス

・2014-15シーズンにレギュラーシーズン60勝してイースタン・カンファレンス・ファイナルにまで進出したホークスだが、その当時の選手はケント・ベイズモアしか残っていない。ホークスは、トラビス・シュレンクGM(ゼネラルマネージャー)率いる2年目のフロントオフィスと、就任1年目のロイド・ピアースHC(ヘッドコーチ)という新体制の下、ルーキーのトレー・ヤングとケビン・ハーター、2年目のビッグマンのジョン・コリンズ、3年目のフォワードのトーリン・プリンスといった若いコアメンバーで新たなスタートを切る。 ・一世を風靡した『ビンサニティー』と『リンサニティー』がホークスのロスターに加わった。ビンス・カーターは、NBA最長タイとなる21シーズン目のシーズンを迎える。膝の故障によりブルックリン・ネッツに所属した昨シーズンを棒に振ったジェレミー・リンは、今シーズンに再起をかけている。かつてNBAで話題をさらったカーターとリンの2人は、トレー・ヤングの良き指導者となるはずだ。 ・長年NBAでアシスタントコーチを務めてきたロイド・ピアースが、初めてNBAのヘッドコーチを務めることになる。選手育成に定評のあるピアースは、クリーブランド・キャバリアーズ時代とゴールデンステイト・ウォリアーズ時代にレブロン・ジェームズとステフィン・カリーを育てたことでも有名だ。彼はサンタクララ大時代にスティーブ・ナッシュとプレイしており、NFLグリーンベイ・パッカーズのクォーターバックのアーロン・ロジャースとピックアップゲームをする仲であることも知られている。

ボストン・セルティックス

・セルティックスは本当の強さをまだ披露していない。ベテラン・オールスター選手(カイリー・アービング、ゴードン・ヘイワード、アル・ホーフォード)、次世代のスター候補選手(ジェイレン・ブラウン、ジェイソン・テイタム)、質の高いベンチメンバー(マーカス・スマート、マーカス・モリス、テリー・ロジアー、アーロン・ベインズ)、そしてリーグトップクラスのヘッドコーチ(ブラッド・スティーブンスHC)らを擁するセルティックスは、今シーズンの優勝を十分に狙える位置にいる。 ・足首の怪我で昨シーズンを棒に振ったゴードン・ヘイワードが遂に復活を果たす。複数のポジションを守ることができ、自分の得点だけでなく味方の得点も演出できる多才なウィングプレイヤーのヘイワードだが、セルティックス移籍初年度の昨シーズンは、シーズン開幕戦の試合開始6分のところで足首に酷い怪我を負い、残りのシーズンを全休することになっていたのだ。ユタ・ジャズでプレーしていた当時、ヘイワードは毎シーズン着実に平均得点をアップさせている。彼の平均得点は、プロ入り1年目の2010-11シーズンは5.4得点だったが、NBAオールスターに出場した2016-17シーズンには21.9得点にまでアップしていた。ヘイワードとアービングの復帰により、セルティックスはアービング、ヘイワード、ホーフォード、ブラウン、テイタムという驚異的な先発メンバーを構成することが可能になる。 ・ジェイソン・テイタムは、20歳とは思えないような洗練されたプレーをしている。そのプレーぶりは、セルティックスのレジェンド、ポール・ピアースを彷彿とさせるものだ。2018年のNBAプレーオフで、この身長203cmのフォワードは伝統あるセルティックスの得点を牽引した。特に感心したのは、テイタムが怖じ気づくことなく先発の役目を受け入れたことだ。あのレブロン・ジェームズも、テイタムのことを『必ずスターになる』とコメントしている。今夏、テイタムは、彼の憧れのNBA選手であるコービー・ブライアントとワークアウトした。

ブルックリン・ネッツ

・ニュージーランド出身の元NBA選手のショーン・マークス氏が2016年にGM(ゼネラルマネージャー)に就任した時、ネッツは高順位のドラフト指名権も持っておらず、チームには魅力的なフリーエージェント選手もいなかった。だが、ネッツは限られた人員で『勝てるチーム』の文化を築き上げていく必要があった。そこで、マークスは、デアンジェロ・ラッセル、スペンサー・ディンウィディー、カリス・ラバート、ロンダエ・ホリスジェファーソン、ジャレット・アレン、ジョー・ハリスといった有能な若手選手達を少しずつ集めていったのだ。 ・スペンサー・ディンウィディーは、昨シーズンに大ブレイクを果たした。彼は、昨シーズンのMIP賞の投票でビクター・オラディポ(ペイサーズ)とクリント・カペラ(ロケッツ)に次ぐ3位にランクした。コロラド大のスター選手だったディンウィディーは、大学生の時に前十字靭帯を断裂したため、2014年のNBAドラフトで2巡目まで順位を下げてしまった。彼は、2016年の12月にネッツと契約を結ぶまでの2シーズンは、ピストンズと、ブルズ傘下のGリーグチームでプレーしている。ハーバード大を蹴ってコロラド大に進学したほどの頭脳を持つディンウィディーは、その博識ぶりから、チームメートからは『Siri』というニックネームで親しまれている。 ・今年のNBAドラフトで、ネッツは2人の外国籍選手を指名している。その2人とは、ボスニア・ヘルツェゴビナ出身のダナン・ムサ(ドラフト29位)とラトビア出身のロヂオンス・クルクス(ドラフト40位)だ。16歳の時にクロアチアのチームの選手としてプロデビューしている19歳のムサは、生粋のスコアラーだ。将来的にニックスのクリスタプス・ポルジンギスと共にラトビア代表チームを引っ張ることを期待されている20歳のクルクスは、レベルの高いシューターだ。

シャーロット・ホーネッツ

・今シーズンからホーネッツの指揮を執るジェームズ・ボレゴHCは、ヒスパニック系アメリカ人としては史上2人目となるフルタイムのNBAヘッドコーチだ(1人目はサンズのアール・ワトソン)。ボレゴHCは、ニックスのデイビッド・フィズデールHCやウォリアーズのマイク・ブラウンAC(アシスタントコーチ)らと同じく、サンディエゴ大のバスケットボール部で選手としてプレーした経験を持っている。ボレゴHCとフィズデールHCは、同じ時期にUSD大でアシスタントコーチをしていた。ボレゴHCは、2012年のBWB(バスケットボール・ウィズアウト・ボーダーズ)アジア、2013年のBWBアルゼンチン、2015年のNBAキャンプ・キューバ、そして2017年にバハマで開催されたBWBアメリカに参加している。 ・スパーズで17シーズン活躍したトニー・パーカーが、ホーネッツで新しいチャプターをスタートさせる。彼は、あと57得点で通算19000得点に到達し、あと171アシストで通算7000アシストに到達する。通算19000得点以上と通算7000アシスト以上を両方達成しているのは、NBAの歴史上、ジョン・ストックトン、レブロン・ジェームズ、オスカー・ロバートソン、ゲイリー・ペイトンの4人しかいない。パーカーは、これまでの17シーズンのキャリアで毎回プレーオフに進出している。彼よりも多くプレーオフに進出しているのは、NBAの歴史上、ジョン・ストックトン(19回)、カール・マローン(19回)、カリーム・アブドゥル・ジャバー(18回)、ティム・ダンカン(18回)の4人しかいない。 ・ホーネッツに移籍したことにより、パーカーは長年フランス代表で共にプレーしてきたニコラス・バトゥームとチームメイトになる。パーカーはバトゥームのことを『弟』と呼んでいる。NBA選手になる前から、バトゥームはパーカーのことを心の師と考えていた。パーカーとバトゥームの2人は、共にフランスリーグのASVELというチームの経営に携わっている。

シカゴ・ブルズ

・2017年のプレーオフ1回戦でセルティックスに敗れた時から、ブルズのロスターは一新された。彼らのコアメンバーのうち少なくとも6人(ウェンデル・カーターJr.、クリス・ダン、ザック・ラビーン、ラウリー・マルッカネン、ジャバリ・パーカー、ボビー・ポーティス)は24歳以下だ。19歳のカーターJr.は、今年のNBAサマーリーグで大活躍している。プロ入り2年目の昨シーズン、ダンは目覚ましい進歩を遂げた。昨シーズン、怪我から復帰したばかりでプレーに制限はあったものの、ラビーンは1試合平均16.7得点を記録し、今夏に大型契約延長を結んでいる。マルッカネンは、昨シーズンのNBAオール・ルーキー・ファーストチームに選出された。前十字靭帯断裂から復帰したパーカーは、昨シーズンはラビーンと同じくプレーに制限があったが、健康であれば1試合平均20得点できるポテンシャルを持っている。ポーティスは、昨シーズンの平均出場時間は僅か22.5分だったが、それでも平均13.2得点を記録している。 ・シカゴ出身のジャバリ・パーカーが、今オフにブルズと契約した。彼は、デリック・ローズも卒業したシカゴのシメオン・キャリア・アカデミー高校の出身で、高校時代はシカゴの主要なタイトルを4つも獲得している。パーカーは、NBAデビューしてから2回も左膝前十字靭帯を断裂している。2016-17シーズン、彼は1試合平均20.1得点6.2リバウンドと大活躍していたが、2回目の前十字靭帯断裂により51試合目で戦線離脱することになった。怪我から復帰した昨シーズン、彼はバックスで31試合の出場に留まった。 ・LSU大でベン・シモンズ(現シクサーズ)と一緒にプレーしていたアントニオ・ブレイクニーは、2017年のNBAドラフトで指名を受けることができなかった。だが、NBAサマーリーグとNBA Gリーグで力を証明したブレイクニーは、自らの力でNBAへの道を切り開いた。ブルズと2WAY契約を結んだ昨シーズン、彼はNBA Gリーグの得点王(平均32得点)と新人王に輝き、ブルズの試合にも19試合出場した。今夏、2年連続でブルズのサマーリーグチームの得点王になったブレイクニーは、ブルズと念願のNBA契約を結ぶことに成功した。

クリーブランド・キャバリアーズ

・レブロン・ジェームズが去ったキャバリアーズは、ケビン・ラブを中心に据えることを決めた。ラブは、2014年にキャバリアーズにトレードされる前に、ウルブズで数シーズンに渡ってリーダを務めた経験を持っており、ウルブズ時代には1試合平均26得点以上を2回記録したこともある。今年7月、キャバリアーズはラブと複数年の延長契約を結ぶことで、彼をチームのリーダーとする意志を明らかにした。オフコートでは、ラブは選手のメンタル・ヘルスに関する意識改革を訴えていることで有名だ。最近、彼はケビン・ラブ基金を発足し、この問題に深く関わっていく姿勢を見せている。 ・2018年のNBAドラフト1巡目全体8位で指名されたコリン・セクストンは、キャバリアーズのポイントガード・ポジションに新風を巻き起こすだろう。セクストンは、アラバマ大時代、かつてNBAの名ポイントガードとしてその名を馳せたエイブリー・ジョンソンHCの指導を受けた。ジョンソンHCはセクストンのことを「私が今まで見た中で最も早い選手」とコメントしている。アラバマ大で1年だけプレーしたセクストンは、同大学にとって2006年以来となるNCAAトーナメントでの勝利をチームにもたらした。 ・今オフのフリーエージェントで獲得したデイビッド・ヌワバのこれまでの道のりは険しかった。カリフォルニア・ポリテクニック州立大出身のヌワバは、ドラフト外でNBA Gリーグのトライアウトを受け、Gリーガーとしてプロキャリアをスタートさせた。Gリーグでの活躍が認められ、彼は2017年2月にレイカーズと10日間契約を結び、2度目の10日間契約を経て2016-17シーズンの残りの契約を勝ち取った。開幕からNBA選手としてプレーした2017-18シーズンに、彼はブルズで素晴らしい活躍をしている。元々ディフェンダーとして定評のある25歳のヌワバだが、オフェンスも良くなってきているので、今シーズンはキャバリアーズで今までより長い出場時間を貰えるかもしれない。

デトロイト・ピストンズ

・昨年のNBA最優秀監督賞を受賞したドウェイン・ケイシーHCが、今シーズンからピストンズの指揮を執る。彼は、今オフに5年間ヘッドコーチを務めたラプターズを解雇されていた。ケイシーHCは、9シーズンで2回しかプレーオフに進出できていなかったラプターズを見事に立て直し、球団史上最も成績の良いチームを作り上げた。ピストンズも、最近の9シーズンで1回しかプレーオフに進出していない。ケイシーHCは、ディフェンス戦術のスペシャリストとしてマーベリックスのリック・カーライルHCの元で頭角を現し、チームを2011年のチャンピオンに導いた。彼は、前向きな人間性を持ち、選手と強い絆を築き上げることで有名だ。 ・昨シーズン、オールスター・センターのアンドレ・ドラモンドがフリースロー成功率を38.6%から60.5%へと大幅にアップさせた。彼の次の課題は、スリーポイントシュートを武器に加えることだ。彼は、これまでの6シーズンのキャリアでスリーポイントシュートを僅か5本しか成功させていない。だが、彼は今オフにスリーポイントシュートを熱心に練習しており、今シーズンからは試合で頻繁にスリーポイントシュートを打つことが予想されている。ピストンズのスター・パワーフォワードのブレイク・グリフィンも、2年ほど前からスリーポイントシュートを武器にしはじめている。ドラモンドとグリフィンは、スリーポイントシュートが主流となっている現代バスケットボールに適応しようとしているようだ。 ・今シーズンは、かつてNBAドラフトの1巡目で指名されたスタンリー・ジョンソン(2015年のドラフト8位)、ヘンリー・エレンソン(2016年のドラフト18位)、ルーク・ケナード(2017年のドラフト12位)らにとって飛躍の年になるだろう。優秀なディフェンダーであるジョンソンは、オフェンス力も身に付けつつある。エレンソンは、ピストンズのストレッチビッグとして大きな役割を担うべく、ここ2シーズンはNBA Gリーグで準備を重ねてきた。リーグを席巻したスーパールーキーのドノバン・ミッチェル(ユタ・ジャズ)よりも1つ高い順位でドラフトされたケナードは、昨シーズン、持ち前のシュートセンスを活かして1試合平均36分間の出場で平均14得点という成績を残した。

インディアナ・ペイサーズ

・昨シーズン、殆どのオッズメーカーがペイサーズは30勝程度しかできないと予想していた。しかし、彼らは48勝34敗という素晴らしい成績でレギュラーシーズンを終え、プレーオフ1回戦でレブロン・ジェームズ率いるキャバリアーズをあと一歩というところまで追い詰めた。ペイサーズは、今オフにタイリーク・エバンス、ダグ・マクダーモット、カイル・オクインらを獲得し、見事な補強に成功している。今シーズン、彼らはイースタン・カンファレンスの1位を争う存在になるはずだ。 ・昨シーズン、マイルズ・ターナーは若干伸び悩んだ印象を与えた。だが、彼は今オフにヨガやボクササイズを取り入れ、減量に成功した。以前、ペイサーズのラリー・バード元球団社長は、ビッグマンでありながら多才なスキルを持つ22歳のターナーを称して「ペイサーズ史上最も優れた選手になるだろう」とコメントしていた。ターナーは、その類稀なるポテンシャルを証明しようとしているようだ。 ・今年のターナーと同じように、昨年のオフにはビクター・オラディポが急成長を遂げていた。オフの間に素晴らしい調整をしたオラディポは、2017-18シーズンに大活躍し、NBAオールスターに初出場した他、オール・NBAチームにも選出された。今年のプレーオフ1回戦の第7戦でキャバリアーズに敗れた直後に、彼はトレーナーに「さっそく2018-19シーズンに向けてトレーニングを開始しよう」とメールを送ったそうだ。

マイアミ・ヒート

・ヒートはアンダードッグなチームだ。彼らのロスターの殆どは、ドラフト下位入団の選手やNBA Gリーグ上がりの選手達で構成されている。ドウェイン・ウェイドを除くと、今シーズンのヒートのロスターでNBAオールスターに出場したことがある選手はゴラン・ドラギッチしかいない。そんなドラギッチも、元々は2008年のNBAドラフト2巡目指名の選手であり、キャリア10年目の昨シーズンにようやくオールスターに選出されたところだ。ヒートの強さを支えているのは、そういった選手達を育て上げる選手育成能力の高さだろう。 ・ヒートに来て能力を開花させた選手の1人が、ベテラン・シューティングガードのウェイン・エリントンだ。彼は、7年間のキャリアで6チームを渡り歩いた後、2016年にヒートに辿り着いた。昨シーズン、エリントンは、控え選手によるスリーポイントシュート成功数のNBA新記録となる218本のスリーポイントシュートを成功させ、キャリアハイとなる1試合平均11.2得点を記録した。2014年に父親を銃で殺害されて以降、銃被害の撲滅がエリントンの個人的な目標となっている。そういったコミュニティーへの貢献が認められ、エリントンは、プロバスケットボールの記者協会が選出する「2015-16シーズン・ウォルター・ケネディー市民賞」を2016年に受賞している。 ・エリック・スポールストラHCは、ヒートのヘッドコーチとして11シーズン目を迎える。これは、イースタン・カンファレンスでは現役最長の記録であり、NBA全体で見てもマーベリックスのリック・カーライルHCと並んで2番目の記録にあたる(現役最長はスパーズのグレッグ・ポポビッチHCの22シーズン)。スポールストラHCは、今シーズン中に16勝するとキャリア通算500勝に到達する。現役のヘッドコーチで通算500勝以上を達成しているのは、ポポビッチHC、ドック・リバースHC、カーライルHC、マイク・ダントーニHC、ネイト・マクミランHCの5人だけだ。

ミルウォーキー・バックス

・ホークスで5シーズンに渡って指揮を執ったマイク・ブーデンホルツァー氏が、今シーズンからバックスのヘッドコーチを務める。彼は、ホークスを4回プレーオフに導き、2014-15シーズンにはコーチ・オブ・ザ・イヤーにも輝いている。ブーデンホルツァーHC在任中、ホークスは球団史上最も充実したレギュラーシーズンを送っていたと言える。ヤニス・アデトクンボというスター選手を擁するタレント豊富なバックスなら、彼はすぐにでも成功を収めるだろう。 ・クリス・ミドルトンは決して派手な選手ではないが、彼の貢献度は非常に高い。セルティックスと対戦した今年のプレーオフで、ミドルトンは57.7%という高いフィールドゴール成功率で1試合平均23.4得点を記録している。また、彼はディフェンスも上手く、パスを優先するチームプレーヤーでもある。今シーズン、彼がNBAオールスターに初選出されるだろうと、多くの識者が予想している。ミドルトンは『バスケットボール・ウィズアウト・ボーダーズ(BWB)』に積極的に参加していることでも知られている。彼は、今年のNBAアフリカ・ゲームズでプレーした他、2年前にオーストラリアで初開催されたBWBキャンプにも参加している。 ・バックスは、今シーズンから『フィザーブ・フォーラム』という新しいアリーナでプレーする。このアリーナは現地8月26日からオープンしている。これまでの30シーズンは、彼らはブラッドリー・センターをホーム・アリーナとしていた。

ニューヨーク・ニックス

・ルーキーのケビン・ノックスは、ラスベガスで開催された今年のNBAサマーリーグで大活躍した。8月に19歳になったばかりのノックスは、開幕早々から、クリスタプス・ポルジンギスを怪我で欠くニックスで大きな役割を担うだろう。彼の父は、かつてNFLのフロリダステイトで1年だけプレーしており、ワイドレシーバーとして優勝に貢献している。軍人である祖父がアフガニスタンで戦死したことが、アメリカ代表チームでプレーしたいと願うノックスのモチベーションになっている。(彼は何度か国際大会に出場している。) ・2013年のNBAドラフト1巡目全体9位指名でプロ入りしたトレイ・バークは、2017年のプレシーズン期間にニックスを解雇されている。その後、彼はニックス傘下のNBA Gリーグチームで圧倒的なパフォーマンスを見せ、今年1月にコールアップを受けた。昨シーズン、彼は、自身の5シーズンに及ぶNBAキャリアで最高のプレイを披露し、42得点や15アシストを決めることもあった。25歳のバークは、今シーズンの開幕戦で先発ポイントガードの座を争う存在になっている。 ・新たにニックスのヘッドコーチに就任したデイビッド・フィズデールHCは、ロサンゼルスのサウスセントラル地区で育った。当時、彼の近所にはWNBAのレジェンド選手のティナ・トンプソンが住んでおり、彼らはトンプソンの兄弟を交えて良くピックアップゲームを楽しんでいたそうだ。フィズデールが育った地区は治安が悪いことで有名で、彼の祖父をはじめ、友人や親族の多くが銃で命を失ったそうだ。フィズデールは社会問題に対する啓蒙活動を積極的に行なっており、NBAヘッドコーチという自らの立場を活かして、恵まれない状況にあるマイノリティーの若者達に救いの手を差し伸べようと努力している。

オーランド・マジック

・ルーキーのモー・バンバと2年目のジョナサン・アイザックは、2人ともドラフト6位という高順位で指名された期待の若手選手だ。今年のトレーニングキャンプ開始時点で、2人は若干20歳だった。彼らはニューヨークの出身で(バンバはハーレム出身、アイザックはブロンクス出身)、2人とも7フッターで手足の長さと運動能力を兼ね備えている。彼らの成長と、彼らがエースのアーロン・ゴードンと上手く融合できるかどうかが、今後のマジックの長期的な鍵になるだろう。 ・スティーブ・クロフォード新HCは、2007年から2012年までマジックのアシスタントコーチをしていた。当時、マジックは4年連続で50勝以上をあげ、5年連続でプレーオフに進出し、2009年にはNBAファイナルにまで駒を進めていた。クロフォードがマジックのアシスタントコーチを務めた最後のシーズン(2011-12シーズン)以降、マジックはプレーオフに進出していない。直近の5シーズンは、彼はホーネッツのヘッドコーチをしていた。彼がNBAのヘッドコーチを務めたのは、この時が初めてだった。 ・球団創設30周年を祝し、マジックは新しいロゴとスローバック・ジャージーを発表した。マジックの共同創設者のパット・ウィリアムズ氏は、現在も副社長としてチームに残っている。もう1人の共同創設者のジミー・ヒューイット氏は、2017年にマジックの殿堂入りを果たしている。

フィラデルフィア・76ers

・昨シーズン、シクサーズはレギュラーシーズン終盤の16試合を全勝した。16連勝というのは、球団史上最長の連勝記録だ。もしシクサーズが今シーズンの最初の4試合に勝つと、レギュラーシーズンに20連勝を達成したNBA史上7番目のチームになる。 ・ジョエル・エンビードが、今シーズンのMVPを狙っていることを公言した。プロ入り2年目の昨シーズン、彼はNBAオールスターゲームに先発し、オールNBA・セカンドチームとNBAオール・ディフェンシブ・セカンドチームに選出された他、最優秀守備選手賞投票の2位にランクしている。バスケットボール・ウィズアウト・ボーダーズで才能を見い出されたカメルーン出身のエンビードは、今オフに開催されたNBAアフリカゲーム2018に参加し、世界中の若者が自分と同じようなチャンスを得るための手助けをしている。 ・シクサーズの更なる躍進のキーになるのは、ベン・シモンズ(昨シーズンの新人王)とマーケル・フルツ(2017年のNBAドラフト1位)がどれだけジャンプシュートを上手くなっているかだろう。シモンズは、昨シーズン、1試合平均15得点以上、8リバウンド以上、8アシスト以上を同時に達成した。この記録を達成したNBAのルーキーは、シモンズとオスカー・ロバートソンの2人しかいない。だが、彼は昨シーズン1本もスリーポイントシュートを決めていない。フルツは、昨シーズンのレギュラーシーズン最終戦でトリプルダブルを達成し、NBA史上最年少のトリプルダブル達成者(19歳)になった。だが、肩の怪我により14試合にしか出場できなかったせいもあるが、彼もまた昨シーズン1本もスリーポイントシュートを決めていない。

トロント・ラプターズ

・今オフにラプターズのヘッドコーチに昇格し、NBAヘッドコーチとして初のシーズンを迎えるニック・ナースHCは、海外やNBA Gリーグでの豊富な経験を持っている。ラプターズのアシスタントコーチを務めた昨シーズン、彼はラプターズのオフェンス戦術に多大な影響を与え、球団記録となるシーズン59勝の達成に大きく貢献した。昨シーズンのコーチ・オブ・ザ・イヤーを受賞したドウェイン・ケイシー前HCの跡を継ぐナースHCは、長きに渡ってラプターズを支えたデマー・デローザンとのトレードでスパーズから獲得したスーパースター選手のカワイ・レナードと共に、ラプターズの新時代を作り上げる。 ・カメルーン出身のパスカル・シアカムは、ラプターズの選手になるまでに紆余曲折を経験している。そもそもシアカムは、家族からの勧めで渋々バスケットボールを始めた選手だ。そんな彼に転機が訪れたのは、2012年に南アフリカで開催されたバスケットボール・ウィズアウト・ボーダーズ・キャンプに参加した時のことだ。このキャンプをきっかけに、彼はアメリカに移り住むことを決意し、あっという間にニューメキシコ州立大の先発選手にまで上り詰めたのだ。彼が2016年のNBAドラフト1巡目全体27位でラプターズに指名された時、「息子がNBAでプレーする姿を見たい」と願っていた彼の亡き父の夢は叶えられたのだ。プロ入り2年目の昨シーズンにシアカムは急成長を遂げ、NBAでも有数の素晴らしい控え選手となった。 ・2017-18シーズンのシックスマン賞投票で3位にランクインしたフレッド・バンブリートは、彼の継父のジョー・ダンフォース氏への感謝を忘れていない。バンブリートの実父は、1999年にドラッグを売買している最中に銃殺されている。20年以上に渡って警官をしているダンフォース氏が育ててくれたおかげで、バンブリートはロックフォードの街で道を踏み外さずに真っ当に成長することができたのだ。ウィチタ州立大で活躍したにも関わらず2016年のNBAドラフトで指名を受けられなかったバンブリートだが、すぐにラプターズの主要選手になることができた。今夏、彼はチームと新たな契約を結ぶことにも成功している。

ワシントン・ウィザーズ

・4回のNBAオールスター出場歴を誇るデマー・デローザンがウェスタン・カンファレンスに移籍したことで、ブラッドリー・ビールがイースタン・カンファレンスのベスト・シューティングガードになる可能性が出てきた(ペイサーズのビクター・オラディポなど、他にも候補はいるが)。昨シーズン、NBAオールスターに初出場したビールは、レギュラーシーズンの全82試合に出場し、シーズンの約半分を負傷欠場したオールスター選手のジョン・ウォールの穴を埋める活躍を見せた。25歳のビールは、今まさに絶頂期を迎えつつある。 ・オーナーのテッド・レオンシスは、今オフにドワイト・ハワードとオースティン・リバースを獲得し、手堅くチームを補強した。新たに先発センターを務めるハワードは、昨シーズン、50試合以上に出場して16得点以上、12リバウンド以上を記録した。昨シーズンのNBA全体でこの記録を達成したのは、ハワードとカール・アンソニー・タウンズ(ウルブズ)の2人しかいない。リバースは、クリッパーズでプレーした昨シーズンに、キャリアハイの1試合平均15.1得点をマークしている。ハワードとリバースが、コアメンバーのジョン・ウォール、ブラッドリー・ビール、オット・ポーターJr.、マーキフ・モリス、ケリー・ウーブレイJr.らに加わることで、ウィザーズはイースタン・カンファレンスの1位を狙えるチームになった。 ・ウィザーズ傘下の『キャピタルシティー・ゴーゴー』が、今シーズンからNBA Gリーグに参戦する。ゴーゴーの参戦により、Gリーグのチーム数は27チームになる。ゴーゴーのゼネラルマネージャーを務めるのは、かつてNBAやNBA Gリーグでプレーした経験を持つポップス・メンサーボンス氏だ。彼は、数少ないイギリス出身のNBA選手のうちの1人だった。

NBAジャーナリスト/イラストレーター 西尾瑞穂 雑誌・テレビ・インターネット等の媒体で活動するフリーランス・イラストレーター。イラストを通じてNBA選手やNBA球団と親交を深めており、NBAの現役選手に頼まれてイラストを制作する機会も多数。ファン歴25年以上という熱狂的なユタ・ジャズのファンだったが、最近ではイラスト制作をきっかけにチームと密接な繋がりを持つようになり、昨年はジャズの球団社長から直接依頼を受けてチームの公式イラストを制作した。NBAジャーナリストとして8年前からNBAの現地取材をスタートし、NBAオールスターゲームは毎年現地で取材している。

関連タグ

キーワード

  • 特集全般
  1. NBA Rakuten トップ
  2. 特集一覧
  3. NBA2018-19シーズン開幕特集【注目トピック イースタン・カンファレンス編】