リーグ最強のディフェンダー、新天地でラプターズを牽引するカワイ・レナード

シェア

リーグで5本の指に入る男の静かなる復活

長らくリーグNo.1プレイヤーとして君臨するレブロン・ジェームズ。そして、僅差で追随するNo.2プレイヤーのケビン・デュラント。そのデュラントも、スコアラーという枠組みでは歴代No.1との呼び名が高いほどの攻撃力の持ち主だが、そのトップ2プレイヤーでさえ、マッチアップを嫌がる現役最高のディフェンダーこそ、カワイ・レナードなのだ。 身長は201cmとスモールフォワードにしては平均的なレナードだが、ウィングスパンは221cmと長く、更には異様に手が大きい。手の甲はあのシャキール・オニールに並ぶと言われ、28cmにも及ぶことから、クロー(カラス)というニックネームが付くくらいだ。その手の大きさから、マッチアップする選手は皆揃って異様に手が伸びてくると言い、最もマッチアップしたくないディフェンダーとしてよくレナードの名前があげられるほど。 複数ポジションを難なく守ってしまうレナードだが、あのクリス・ポールやステフィン・カリーがスティールをされたり、デュラントやジェームズ・ハーデンがブロックされるハイライトは、相手ディフェンダーがレナード以外の時にはお目にかかることはほとんどないだろう。 そんなレナードだが、NBAへの入団を果たした2011年以降、グレッグ・ポポビッチHCの指導の下、着実にディフェンス力を磨いた。そしてビッグスリーとして長らくサンアントニオ・スパーズを率いたトニー・パーカー、マヌ・ジノビリ、ティム・ダンカンからエースの座を引き継ぐこととなる。 元々学生時代からディフェンス力には定評があったが、プロキャリアをスタートさせて以降も、努力を惜しまない性格は変わらなかった。試合前には映像を通して相手チームのオフェンスのシステム、そして個々のプレイまで研究、分析することを欠かさないという。 レナードは入団3年目の2014年にはプレイオフファイナルでレブロン・ジェームズ率いる当時のディフェンディングチャンピオン、マイアミ・ヒートを破り、早くも優勝を経験している。ファイナルで敵チームに合計70得点差をつけての優勝とあって、当時のスパーズのチーム力がいかに高かったかをまざまざと確認できる数字だが、その中でも攻守に渡って活躍し、レブロン・ジェームズとの白熱したマッチアップを繰り広げたレナードがファイナルMVPに輝いた。 22歳という若さでのファイナルMVPの受賞はマジック・ジョンソンに次ぐ記録である。その後、翌年の2015年より2年連続でNBA最優秀守備選手賞に輝くと、オールスターにも名を連ねるようになる。こうしてスパーズの顔のみでなくリーグを代表するプレイヤーへと進化を遂げたのである。 レナードは持ち前の長い腕と大きな手に加え、一瞬も気を抜かない集中力の高さから、これまで幾度となく相手エースを苦しませてきたのだが、彼の持ち味はそのディフェンス力だけではない。スティールからの速攻で最前線を走ったかと思えば、アイソレーションからは高確率でミドルジャンパーを沈める。 スリーポイントも年々上達し、本人は辞退したものの、実はオールスターのスリーポイントコンテストにも招待されているほどだ。ちなみに、レナードは過去にアメリカ代表チームも辞退している。注目されることを好まない性格あってのことなのか、本人はその間もワークアウトを行っていたという。昨年、あの神様マイケル・ジョーダンがレナードに対して、現リーグで最高の2Way(攻守に優れた)プレイヤーであると主張するほど、その実力は折り紙付きで、怪我なく過ごすことができれば今もリーグで間違いなく5本の指に入るプレイヤーなのだ。 そんなレナードだが、21年連続プレイオフ進出中の強豪スパーズのフランチャイズプレイヤーとして、今後もチームを引っ張り続ける存在であり続けるだろうという誰もの予想を裏切り、このオフシーズンに急転直下でトロント・ラプターズへ移籍することとなる。

キャリアを変えるターニングポイントとなった2018年

レナードは2018年のオフにチームとスーパーマックス契約ができる条件が揃っていた生え抜き選手。契約延長どころか、キャリアをスパーズで終えてもおかしくない選手と見られていたのだが、咋年の右大腿四頭筋のケガのリハビリ方法に関してチーム側の考え方との相違から徐々に確執が生まれ、レナード自らトレードを直訴したと報じられた。 その後、トロント・ラプターズに9年在籍したデマー・デローザンとサンアントニオ・スパーズに7年在籍したレナードという、フランチャイズプレイヤー同士が絡むトレードが実現され、レブロン・ジェームズのロサンゼルス・レイカーズへの移籍と並ぶ今オフのビッグニュースとなった。 レナードは地元ロサンゼルスへの移籍を希望していたとの噂もあり、トロント・ラプターズへの移籍が決まった際には本人のモチベーションが危惧された。しかし開幕から猛ダッシュを見せるラプターズを見れば、その問題は解決されたと見ていいだろう。 今シーズン、ラプターズは球団史上最速で20勝をあげており、当初イースタンカンファレンスで期待値の高かったボストン・セルティックスやフィラデルフィア・セブンティシクサーズを差し置き、序盤戦で再び東の大本命と呼ばれる存在に返り咲いた。 レナードは休養日を設け、コンディションを見ながらの出場だが、カイル・ラウリー、サージ・イバカ、ヨナス、バランチュナス等ベテラン勢が息を吹き返している。更にはMIP級の活躍を見せるパスカル・シアカムをはじめとする若手の成長あって、今シーズンのラプターズは球団史上最強のロスターを要していると言っても過言ではない。 特に、ベテラン勢の活躍は、少々マンネリ気味にあったチームの雰囲気を払拭したレナードの功績によるものが大きく、デローザンと比較し、ボールを保持し過ぎないプレイスタイルも、周囲のメンバーに良いリズムを与えているのかもしれない。 今季は王者ゴールデンステイト・ウォーリアーズへ対しても2連勝しており、チームの現状を考えると、現時点ではレナード獲得は誰が見ても成功と言えるだろう。だが、問題は今シーズン終了後にフリーエージェントとなる権利のあるレナードを引き留められるかどうか。今のところレナードもチーム、そしてバスケットを愛する街の雰囲気を気に入っており、マサイ・ウジリ球団社長も契約延長に自信を覗かせている。ラプターズの命運を握る最終的な決断がいつ下されるか、レナード獲得を目論む他チームからしても目が離せないところだろう。 レブロンがウェスタンカンファレンスへ移った今季だが、イースタンカンファレンスの上位チームは決して油断ならない相手である。ヤニス・アデトクンボ率いるミルウォーキー・バックス、カイリー・アービング率いるボストン・セルティックス等を抑え、昨季の59勝をも超えるポテンシャルを秘めたチームは、果たしてプレイオフでどこまで勝ち上がれるだろうか。その結果こそ、レナードを引き留める一番の材料となるはずだ。 スパーズ時代は少しの笑顔を見せただけでチームメイトにいじられていたレナード。ポポビッチ・ヘッドコーチからも、嬉しい時は笑っていいんだぞと言われるほど。長年、自らの性格を理解してもらい、自身が率いたスパーズとの決別は本人にとっても苦しい出来事であったに違いない。 ラプターズ移籍後のメディアデーでは、突然大きな声で笑いだすレナードの姿があり、周囲を驚かせたが、それは本人が古巣へ対して、自分自身が着実に前へ進んでいるということをアピールした結果だったのかもしれない。 現地時間の1月3日に移籍後初めて、スパーズの本拠地であるAT&T CENTERにレナードが姿を現す。ブーイングが起こることが予想されるが、そんな中、東のトップチームを率いるレナードが古巣へ対してどのような分析を行い、戦い方をするのか。年明け早々、因縁対決のビッグイベントがNBAファンを沸かせてくれるに違いない。

NBAライター ゆーきり 幼少期の10年間をアメリカで過ごす。初めて行ったNBA観戦で間近で見る選手に強い衝撃を受けNBAにどっぷりのめり込み、自身もバスケットボールを始める。ファン歴は20年を超え、これまでの自身の知識を発信しNBAファンを増やしたいという想いから、ブログ「NBA journal」を開設。現地の情報をもとに、わかりやすくもマニアックな内容を届けることを意識し、日々奮闘している。

運営ブログ『NBA Journal』はこちら

関連タグ

チーム

  • スパーズ
  • ラプターズ

選手

  • Kawhi Leonard

キーワード

  • 特集全般
  1. NBA Rakuten トップ
  2. 特集一覧
  3. リーグ最強のディフェンダー、新天地でラプターズを牽引するカワイ・レナード