NCAAバスケットボール基礎知識 前編

3月といえばMLBが開幕する時期だが、アメリカのスポーツ界で言えばNCAAバスケットボールの「マーチマッドネス/March Madness」が何よりもメディアの注目を集め、スポーツファンを熱狂の渦に巻き込むコンテンツとして有名だ。最近はNCAAディビジョン1(以下「D1」)でプレーする日本人選手も増えている。 去年までNCAAD1に所属していた渡邊雄太選手(元ジョージワシントン大学)や、もはや説明不要のゴンザガ大のエース・八村塁選手、D1でプレーする八村選手と今年から同じカンファレンスに所属するポートランド大学の渡辺飛勇選手や同じくフレッシュマンのテーブス海選手(ノースカロライナ大ウィルミントン校)など。そのため、日本でのNCAAバスケットボールに対する認知度や注目度は増してきていると言える。ただ日本人選手の事はある程度知っていても、まだまだNCAAバスケットボール自体をよく知らないという日本のバスケ・スポーツファンは多いのではないか。 「そう言えば渡邊雄太選手が数年前にNCAAのトーナメントで優勝してたけど、あれって凄いんじゃないの!?」 「この前八村選手が何かのトーナメントで優勝してMVP取ったけどあれは何!?3月にトーナメントってやるんじゃないの??」 「ってかそもそもマーチマッドネスって何?ディビジョン1?カンファレンス??」 そんな疑問が、日本人NCAA選手の活躍に伴い多くなっているのではないか。 という事で、今回は前半と後半の2回に分けて「NCAAバスケットボール基礎知識」と題してNCAAの基礎の基礎を紹介していきたいと思う。

NCAAディビジョン1

アメリカの大学バスケットボールにはいくつか連盟・団体あるが、このNCAA(National Collegiate Athletic Association)が最も高レベルでビジネス規模が大きい。 NCAAはD1~D3まであり、文字通りD1が最高レベルのリーグである。奨学金制度の充実度や予算規模、スポーツプログラムや施設面が優れている学校が所属し、それより劣るのがD2・3と理解して構わない。現在NCAAバスケットボールのD1は353校あり、その353校が32のカンファレンスにわけられている。 過去には高校から直接NBAへ入ることが許された時期もあり、レブロン・ジェームズやケビン・ガーネット、コービー・ブライアントなどNCAAを経ずにNBAで活躍したスーパースターや、海外リーグや国際大会で実力を証明しNBAでスターダムにのし上がった選手たちもいるが、昨今NBAで活躍するほぼ全てのスター選手はこのD1でのプレーを経ていると言って良い(過去にはレジェンド選手のアール・モンローや守備の達人ベン・ウォーレス、デニス・ロッドマンなどD2を経てNBA入りしスーパースターになった選手たちもいるが、これはかなり珍しいケース)。

カンファレンス

前述したようにそのD1には32のカンファレンスが存在し、353校が地域ごとに、1カンファレンスあたり8〜16校ずつに分かれてレギュラーシーズンを戦う。レギュラーシーズンは11月初旬から翌年3月初旬までの4ヶ月間。各大学やカンファレンスによって試合数には多少ばらつきがあるが27〜37試合程度を戦う。(同カンファレンス内同士は大体14〜18試合戦う)続いて3月初旬から中旬にかけて各カンファレンス内でトーナメントを行い、32の優勝校が決定する。その後に行われるセレクションサンデーでこれまでの成績をもとにもう36校が選ばれる。計68校がNCAAトーナメント「マーチマッドネス」に出場するのだ。

【NCAA D1バスケットボール概要】 1. カンファレンス

353校が所属(2019年2月1日現在) 地域ごとに32のカンファレンスが存在

2. レギュラーシーズン

11月初旬から翌3月初旬 各カンファレンス内の学校との対戦を中心にシーズンを通して27〜37試合 11月・12月に招待制トーナメントあり(レギュラーシーズン試合の一環。今シーズンは27の招待試合計162校が参加) 冒頭で紹介した八村塁選手(ゴンザガ大)と渡辺飛勇選手(ポートランド大)は、アメリカ内では地理的に近い場所に位置するため、同じ「ウェストコース」というカンファレンスに所属している。先日この2校が対決し、日本人対決が実現したのは記憶に新しいだろう(八村選手が17点9リバウンド、飛勇選手が8点6リバウンド、ゴンザガ大の勝利)。 ただこの「ウェストコース」カンファレンスは、実はD1内カンファレンスの中でレベル的には「中の上」程度の評価で、強豪校ひしめく東側にレベルの高いカンファレンスが多い。上記表1の通り、ACCやBIG10、SECなど代表的なカンファレンスは、西側より東側に多く集まっていると言える。 レギュラーシーズンの多くはカンファレンス内の学校との対戦が多く組まれるが、もちろんカンファレンス外の学校との試合も組まれる。例えば昨年11月に八村塁選手率いるゴンザガ大が、来年NBAドラフト1・2位指名確実と言われるザイオン・ウィリアムソンとRJ・バレット率いるランキング1位(当時)のデューク大を破ったのは日本でも大きなニュースになった。デューク大は地理的にはゴンザガの真反対の東側(ノースカロライナ州)に位置し、最も強豪校がひしめくと言われる「アトランティックコースト」という別のカンファレンスに所属している。

ノンカンファレンストーナメント

そんな「ゴンザガ大がデューク大を破ってトーナメント優勝、八村塁がMVP!」という見出しのニュースが日本のスポーツメディアを騒がせたが、このニュース、いまいちぴんと来ていない人が多いのではないだろうか。 「トーナメントって3月じゃなかったけ?」 「八村がデュークを破ってMVPという事は全米ナンバーワン選手って事?」 などのような疑問が湧いてくるが、実はある意味そうとも言えるが実態はそうではない。 NCAAバスケは11月にレギュラーシーズンが開幕、その後すぐ訪れるThanks Giving休暇期間中に、D1カンファレンス外の学校が招待されて行われるトーナメントがいくつもある。トーナメントによって歴史や成り立ち、招待学校数、大会形式、期間などまちまちだが、今シーズン(2018-19)は27の招待トーナメントがあり、クリスマス期間に行われる3つを除き全てが11月のThanks Givingウィーク前後に行われている。 もちろんD1の全学校がこのトーナメントに招待される訳ではなく、D1の中でも中堅以上の強豪校が選ばれ、カンファレンス外の学校と各トーナメントの優勝を狙う。このトーナメントは、強豪校にとっては3月のNCAAトーナメントで当るかもしれないカンファレンス外の強豪校と戦えるチャンスであり、実力を試し合う良い実戦機会になる。また中堅校にとってもカンファレンス外の強豪校を倒す事で名を挙げ、勝敗だけで判断されない「ランキング(*)」上位に上がるためのポイントを稼ぐ良い機会なのだ。 *NCAAランキングは単純に勝敗だけでなく、ランキング上位の強豪校との勝敗、試合内容や点差(スタッツを元に質の高い試合かどうか)、ホームかアウェーか、注目度など様々な要因を鑑みたテクノロジーツールを元に決める。 基本的にほぼ全てのトーナメントがESPNやリージョナルネットワークでテレビ放映される程注目を浴びるているが、中でも近年かなりの強豪校が集まるトーナメントとしてレベル・注目度が最も高いと言われているのが、八村がMVPを獲得したこの「マウイインビテーショナル/Maui Invitational Tournament」なのだ。

マウイインビテーショナルで全米トップレベルの実力である事を示した八村塁

今年のマウイインビテーショナルは、あのランキング1位のデューク(当時)と3位のゴンザガ、8位のオーバーン大に古豪アリゾナ大が招待され、事前からかなり注目度の高いトーナメントだった。しかもプレシーズン~開幕してからの数試合で異次元の身体能力を見せるザイオン・ウィリアムソンと、常にドラ1候補と言われていたRJ・バレットの効果で、デューク大には以前にも増して高い注目が集まっていた。しかも無敗同士で迎えたゴンザガ大と決勝戦で相見えるという事でESPNでも事前からかなり番宣され、全米バスケファンが固唾を見守る試合となったのだ。 もちろん強豪とは言えたった8校しか参加していないトーナメントである事、まだシーズン開幕当初という事で実力を計りきれていないところでの対戦だったため客観的な評価が難しい時期ではあったが、あの決勝戦で全米大注目のランキング1位デューク大を破って、しかもMVPまで取ったのだから、八村の評価は瞬間風速的には最高レベルになった事は間違いない。その後もコンスタントに活躍を続け、チームも勝利を重ねているだけに、あそこで受けた評価・活躍はフロックではないという事は証明されている。 後はこの「マウイインビテーショナル」の歓喜を、来たる3月の「マーチマッドネス」で再現し、日本人が誰もまだ成し遂げた事のない「NCAAトーナメント優勝」を実現して欲しいと願う。次回のNCAAバスケットボール基礎知識編は、そのNCAAトーナメントの基礎情報、これまでのNCAAでプレーした日本人選手も絡めておさらいしようと思う。

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