「僕をオープンにしてくれる」。好漢ケンバ・ウォーカーが古豪の未来を照らす【杉浦大介コラム vol.6】

数字以上に際立つ勝負所での強さ

開幕2戦目から破竹の10連勝――。NBAが誇る名門チーム、ボストン・セルティックスが絶好のスタートを切っている。 11月17日のサクラメント・キングス戦で連勝はストップしたが、それでも10勝2敗はイースタンのベストレコード。そんなチームの牽引車となっているのが、新加入のケンバ・ウォーカーだ。稀有な得点力が自慢のケンバは、今季もここまで平均24.5得点、5.1リバウンド、4.6アシストの好成績をマークしている。しかし、そうした数字以上に際立つのが、勝負所での圧倒的な強さだ。 「ゲーム終盤のケンバは素晴らしい。彼が重要な得点を挙げてくれるから、いつもチャンスがあるように感じることができている」 ブラッド・スティーブンスHCがそう語る通り、ケンバが最終クォーターの大活躍でチームを勝利に導いたゲームは枚挙にいとまがない。 11月11日のダラス・マーベリックス戦では、一度はリードを奪われた第4クォーターの中盤、わずか1分10秒の間に3本の3ポイントシュートを立て続けに成功させた。15日のゴールデンステイト・ウォリアーズ戦でも、第3クォーター終了時点でわずか6得点(FG1/10)ながら、最終クォーターだけで14得点(FG5/8)。チームの逆転勝利に大きく貢献したこの2試合の働きは、現役屈指の“クラッチプレイヤー”と呼ばれるに相応しいものだった。 最終クォーターの平均得点は8.7(11戦終了時点)で、ヤニス・アデトクンボ(ミルウォーキー・バックス)、デイミアン・リラード(ポートランド・トレイルブレイザーズ)、カワイ・レナード(ロサンゼルス・クリッパーズ)、ジェームズ・ハーデン(ヒューストン・ロケッツ)に次ぐリーグ5位。特に3ポイントの成功率は53.6%(15/28)を記録している。ゴードン・ヘイワードが故障離脱後もセルティックスが勝ち続けているのは、ケンバの働きによるところが大きいのは明白だ。

特別待遇を受けても謙虚さを忘れないケンバ

「アグレッシブに攻めて、正しいプレイをしようとした。それよりもチームメイトたちがよく動き、僕をオープンにして、スクリーンもセットしてくれたんだ」 25得点をマークしてまたも勝利の立役者になった13日のウィザーズ戦後、そうやってチームメイトたちを褒め称えていた姿も印象的だった。ホームゲームの際、今季のセルティックスではスティーブンスHCとケンバだけが会見室を使用してメディアの質問に答えるのが恒例となっている。そんな特別待遇を受けても、ケンバは自身のプレイよりも、真っ先にチームメイトを讃えることが多いのだとか。 「みんなが良いプレイをしている。今日もジェイレン(ブラウン)が22得点、ジェイソン(テイタム)が23得点、(マーカス)スマートが17得点、エネス(カンター)が17得点、カーセン(エドワーズ)が18得点。さらにブラッド(ワナメイカー)が10得点を挙げ、VP(ビンセント・ポアリエ)も良いプレイをしてくれた。ここまでは楽しくプレイできているから、続けていきたいね」 こんなスーパースターが仲間たちに好感を持たれているのは当然だろう。ESPNのテレビ解説を務めるティム・レグラーは、先日、「今のセルティックスには昨季のチームにはなかった喜びが感じられる。ケンバが適切なプレイをして、相手の注意を引き付けているのが大きい」と番組内で述べていた。

昨シーズンまではシャーロット・ホーネッツでプレイしたケンバ。移籍の際には、オーナーのマイケル・ジョーダンから「彼は常に品格をもってホーネッツとNBA、シャーロットの街を代表してくれた」と賛辞を贈られている

「試練を経験した時、どうやって対処できるかが大事」

振り返れば昨季。開幕前はイースタンの優勝候補筆頭に挙げられたセルティックスだったが、蓋を開けてみれば迷走した。なかなかチームがかみ合わず、プレイオフ・カンファレンス準決勝でミルウォーキー・バックスに惨敗。そんなチーム内で、気分屋のエース、カイリー・アービングの統率力不足が取りざたされたのは記憶に新しい。 昨オフにアービングがFAでブルックリン・ネッツに去り、新たなチーム作りを余儀なくされた2019-20シーズン。セルティックスに必要なのは、常にポジティブで、リーグ最高級の好漢として知られたケンバのようなリーダーだった。 もちろん、セルティックスがこのまま絶好調で突っ走るとは限らない。今季のチームにはサイズ不足という明白な弱点があり、ジョエル・エンビードのようにパワフルなビッグマンを持つチームには苦戦する可能性は高い。総合力では依然としてバックス、76ersよりも下という見方があるのも頷ける。また、現在は過密日程のウエスト遠征の真っ最中であり、20、22日に対戦するロサンゼルス・クリッパーズ、デンバー・ナゲッツといった強豪チームには苦しむかもしれない。 ただ、たとえそうだとしても、今季のセルティックスには昨季以上に大きな伸びしろがあるように思える。ブラウン、テイタムがさらに成長し、故障離脱中のヘイワードも年末には復帰してくる。マーカス・スマート、ダニエル・タイスといった仕事人たちも頼りになる。そして何より、コートの中央には最高級のクラッチプレーヤーであり、優れたリーダーでもあるケンバがいるのだ。 「遠征中こそ互いに多くを学べる。試練を経験した時、どうやって対処できるかが大事なんだ。僕はチームを一丸にしていきたい」 そう語るケンバの向こうに、セルティックスの明るい未来が見えてくる。今季は楽しいシーズンになりそうだ。昨オフ、この選手に4年1億4100万ドルの新契約を与えたことは、チームにとって最高の選択だったのかもしれない。

杉浦大介:ニューヨーク在住のフリーライター。NBA、MLB、ボクシングなどアメリカのスポーツの取材・執筆を行なっている。『DUNK SHOOT』、『SLUGGER』など各種専門誌や『NBA JAPAN』、『日本経済新聞・電子版』といったウェブメディアなどに寄稿している。

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