ルーキーオブザイヤーファイナリスト、トレイ・ヤング

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当たり年となった2018年入団のルーキー達。スロベニア出身の若きスター、ルカ・ドンチッチに目が行きがちだが、後半戦の巻き返しにより、一気にルーキーオブザイヤー候補に名乗りを上げたもう一人の若きスターがいるのをご存知だろうか。全体5位指名を受けた、トレイ・ヤングだ。今回は、現代風なプレイスタイルで次々と新記録を樹立し、アトランタ・ホークスで既に司令塔を任せられているスーパールーキー、トレイ・ヤングの実力に迫りたい。

スーパースターの片鱗を見せた、記録尽くしのルーキーイヤー

米国時間5月21日に、2018-19シーズンのNBAオールルーキーチームが発表された。全体1位指名でフェニックス・サンズへ入団したディアンドレ・エイトンをはじめ、トップ5指名メンバーがいずれもNBAオールルーキーファーストチームに選出された、大変珍しい年となった。こちらは、マイケル・ジョーダンやアキーム・オラジュワンがドラフトをされた1984-85シーズン以来34年ぶりのことだ。どのプレイヤーも納得の選出とあって、能力値の高さが伺える、豊作年と言えるだろう。 その中でも、ドラフト当日のトレードからNBAのキャリアがはじまったルカ・ドンチッチとトレイ・ヤングはそれぞれ満票を獲得。序盤から強いインパクトを与えていたドンチッチがルーキーオブザイヤーの最有力とされていたが、オールスター後には平均24.0得点、9.0アシスト以上の成績を残し、勝負強さも見せたトレイ・ヤングが一気に株を上げ、1999-00シーズンのエルトン・ブランドとスティーブ・フランシス以来のダブル受賞もあるのではないかと噂されている。 レブロン・ジェームズ ヤングは大学1年時に得点とアシスト部門でNCAA史上初となる2冠王を達成。その実力は折り紙付きとされたが、188cmという小柄な体格がネックとなり、NBAでの活躍が疑問符されながらの入団となった。特にディフェンス力には難があり、NBAへの適応には時間がかかるだろうとの不安の声が上がった。しかし入団したアトランタ・ホークスは再建中ということもあり、若手に伸び伸びと経験を積ませるスタイルが功を奏してか、持ち前のオフェンス力は見る見る向上した。 さすがはステフィン・カリー2世と呼ばれるだけあり、無限とも呼べるシュートレンジからクイックモーションで放たれるスリーポイントは相手に大きなダメージを与える。また、切れ味の鋭いカットインからのフローターシュートはもはやヤングの十八番と言えよう。同時に、ヤングの魅力はそのアシスト力にもある。シーズンを通して8.1アシストを記録したわけだが、相手をあざわらうかのように裏を突く鋭いパスは、今後ゲームを支配する力へと変わってくるに違いない。 そんなヤングだが、3月1日のシカゴ・ブルズ戦では49得点、16アシストを達成。今季のルーキー最多得点を記録すると同時に、ホークスの新人得点記録を塗り替えた。また、45得点、15アシストを記録したリーグ史上初のルーキーともなった。3月9日のブルックリン・ネッツ戦では23得点、10リバウンド、11アシストで、ルーキーとしてホークス史上初となるトリプルダブルも達成。シーズンを通しては、通算1,400得点、600アシストを記録し、こちらはオスカー・ロバートソン以来の快挙となった。人気を呼ぶ派手なプレイスタイルと数々の記録は、今後スーパースターへの道を歩む選手のルーキーシーズンにふさわしいものとなった。

ホークス浮上のカギを握る若手集団のポテンシャルとは

NBAのチームの中でも古い歴史をホークスは、絶頂期と低迷期を繰り返している伝統的なチームである。ここ2年は低迷が続いているが、つい3年前までは10年連続でプレイオフへ進出する東の強豪であった。プレイオフでレブロン・ジェームズの壁を突破することは出来なかったが、2014-15シーズンには球団記録のシーズン60勝を上げた。当時チームに在籍していたアル・ホーフォード、ポール・ミルサップ、ジェフ・ティーグ、カイル・コーバーの4選手がオールスターに選ばれるという華々しいシーズンを過ごしていたのだ。 今シーズンは残念ながら30勝に届かなかったが、トレイ・ヤングを中心に、今のホークスには将来有望な若手が各ポジションに揃っている。チームの得点王であり、インサイドの要であるジョン・コリンズ。攻守のバランスが取れた成長著しい3年目のトーリアン・プリンス。ヤングと同期で、平均約10得点を稼ぐ赤毛のシャープシューター、ケビン・ハーター。そして、ホークスへの移籍を機にシュートレンジを広げたビッグマン、アレックス・レンなどだ。ケント・ベイズモアとマイルズ・プラムリーの高サラリーはもったいない気はするが、それでもサラリーキャップが十分に空いているホークスは、ケビン・デュラントなどの全盛期を迎えているスーパースターの獲得に名乗り上げることも十分に可能な状況である。その上、大物が潜む今季のドラフトで、全体8位と10位指名の二枠を持っているということは、一気に選手層を厚くできる手段も有しているとも言えよう。 今季の活躍ぶりからも、トレイ・ヤングやジョン・コリンズを中心とするチーム作りを選択することは間違いない。ターンオーバーの回数などは改善の必要性があるが、1試合平均113.3得点という数字からも分かる通り、得点力、特にアウトサイドからの攻撃力はあのゴールデンステイト・ウォリアーズに並ぶレベルにあり、現時点で既に申し分ないレベルと言えよう。問題はヤングの弱点であるディフェンス力にある。個々の意識の改善とスキル向上により、現メンバーでも成長余地は十分に残されている。攻撃面はヤングに任せながらも、ウォリアーズで言う、ドレイモンド・グリーンやアンドレ・イグダーラのようなエースストッパーを任せられるディフェンシブな選手がいると、戦績は大幅に改善することが見込まれる。 ルーキーシーズンの後半から、既にNBAへの適応力を1歩高めたと言えるヤング。その証拠に、3月単月の勝敗は7勝8敗と、チーム勝率を5割前後まで引き上げており、個人成績と相まって、スーパースターの片鱗を現し始めたと言えよう。超ロングスリーを放つなど、一風変わった現代風NBAのスタイルを既に確立しており、そのプレイがリーグの代表選手であるカリーに近しいことから、今後の成長を期待せずにはいられない期待のホープだ。 そんなヤングだが、参考にする選手はクリス・ポールや、過去に2年連続でシーズンMVP受賞歴のあるスティーブ・ナッシュなど、どちらかというと堅実派なポイントガードだというのだから面白い。両選手とも、NBAというリーグではアンダーサイズなのは間違いない。しかし、それでもコート上で絶対的な支配力を持つリーダーシップや、得点源となるバリエーション豊富なレイアップやフローターシュートを武器にするなど、ヤングにとって参考とすべき点が多かったのだろう。ヤングは、スーパープレイヤーを見習い、しっかりと基礎を身に着けたからこそ、その後、自身の特徴を捉え、高いレベルで生き抜く独特の術を手に入れたのかもしれない。 ポール、ナッシュ共に、他選手の能力やチーム力全体を引き上げる力を有しているポイントガードであることで有名だ。既にアシスト力という意味では申し分ないヤングだが、今後は両選手を見習い、チーム力を引き上げ、ホークスを再びリーグを代表する強豪へと押し上げられるかがキーとなるだろう。ホークスが未来を託すスーパースターへと成長できるか、期待値の高さゆえ、真価が問われる数年が続きそうだ。

NBAライター ゆーきり 幼少期の10年間をアメリカで過ごす。初めて行ったNBA観戦で間近で見る選手に強い衝撃を受けNBAにどっぷりのめり込み、自身もバスケットボールを始める。ファン歴は20年を超え、これまでの自身の知識を発信しNBAファンを増やしたいという想いから、ブログ「NBA journal」を開設。現地の情報をもとに、わかりやすくもマニアックな内容を届けることを意識し、日々奮闘している。

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