「彼は間違いなくMVPに値する」 ドクターJの愛称で知られるNBAレジェンドのジュリアス・アービングが、古巣であるフィラデルフィア・76ersで今季大活躍を見せるジョエル・エンビードをこう称した。昨季、自身初の得点王に輝いたエンビードは今季も絶好調だ。ここまでリーグトップの1試合平均33.2点(3月24日時点)をマークし、2年連続得点王を視界に捉えている。 日本時間3月3日(現地2日)から21日(同20日)にかけては10試合連続で30点超えをマークし、ウィルト・チェンバレンやアレン・アイバーソンが持っていた8試合連続を塗り替えてフランチャイズ最長記録を樹立した。18日に『NBA.com』で公開されたMVP争いの最新ランキングでは2年連続で同賞に輝いているニコラ・ヨキッチ(デンバー・ナゲッツ)を抑え1位に浮上している。
NBA7シーズン目を迎えた29歳のビッグマンは、今季リーグにさらなるインパクトを与えている。昨年11月14日(同13日)のユタ・ジャズ戦ではキャリアハイとなる59点をマーク。さらにこの試合では11リバウンド、8アシスト、7ブロックも記録し、50点・10リバウンド・5アシスト・5ブロック以上をクリアしたリーグ史上初の選手となった。 攻守ともにNBA最高レベルにあるエンビードだが、今季は特にオフェンスで圧倒的な支配力を発揮している。ペイント内得点は14.8点(リーグ8位)、ポストでボールを受けてからは4.6点(リーグ2位)とビッグマンらしい数字も残しつつ、さらに7フッターながら3ポイント成功率(35.1%)とフリースロー成功率(85.5%)も高水準。得点エリアが広く、得点ランクでトップ立っているのも頷ける。
なかでも止めるのが最も困難なエリアが、フリースロー近辺のいわゆるエルボーからの攻撃だ。エルボーでボールを受けてからの得点はリーグトップで、2位(5.5点)のニコラ・ヨキッチ(デンバー・ナゲッツ)に差をつける。また、同エリアでファウルを受ける回数も0.9回で1位(2位はサクラメント・キングスのドマンタス・サボニスで0.5回)と、エンビードにとってのホットスポットとなっているのだ。 「ヤニス(アデトクンボ)やヨキッチ以上にゲームプランを難しくさせる男」(リック・カーライル/インディアナ・ペイサーズHC) 「ジョエルを守るのはチャレンジ。1対1で彼を守れる選手はいない」(マイケル・マローン/ナゲッツHC) 「リーグで最も支配的な選手はエンビードだ」(ルディ・ゲイ/ユタ・ジャズ) 対戦相手の指揮官や選手から出るこういったコメントも、エンビードがいかに脅威を与える存在であるかを物語っている。
そんなエンビードを中心に、76ersが目指すのは1983年以来の優勝だ。エンビードの相棒であるジェームズ・ハーデンは現在アシストランキングのトップで、同一チームから得点王とアシスト王が生まれることになれば41年ぶりの快挙となる。 軸となる2人以外にも平均20点を記録する若手のタイリース・マクシーや、万能戦士のトバイアス・ハリスが得点面で支え、PJ・タッカーやディアンソニー・メルトンら、ディフェンス職人もしっかりと役割を果たすなどチームバランスはリーグ有数。フランチャイズ最後の優勝を経験しているアービングも「今年のチームは私が見てきたここ数年でベストだ」と、古巣の40年ぶりとなる王座奪還に期待を寄せる。
現在イースタン・カンファレンス3位の76ersは、26日(同25日)にフェニックスへと乗り込み、ウェスタン・カンファレンス4位のサンズと激突する。サンズのケビン・デュラントは欠場予定だが、ファイナルで顔を合わせる可能性もある強豪との試合は要注目だ。この一戦は両チームにとってバックトゥーバック(2日連続での試合)の2戦目。ふくらはぎに軽度の張りがあるエンビードの状態も気になるが、バックトゥーバックの2戦目でリーグトップの33.9点をマークしているだけに活躍に期待だ。 ■【THE MATCHUP】フィラデルフィア・76ers対フェニックス・サンズ 日時:日本時間3月26日(日)午前11時 会場:フットプリント・センター 解説:佐々木クリス / 実況:田中大貴 視聴可能プラン:LEAGUE PASS