フェニックス・サンズは2000年代初頭、破壊力抜群の「ラン&ガン」スタイルを武器にリーグを席巻した。それでもカンファレンス決勝の壁を越えられず、2010-11シーズン以降はプレイオフに進出できない状況が続いているが、当時司令塔を務めたスティーブ・ナッシュが、師弟関係にあったマイク・ダントーニHC(ヘッドコーチ/現ヒューストン・ロケッツHC)と“黄金期”を回顧している。 現代とは異なり、2000年代初頭はまだ平均100得点以上のチームは少なく、平均100失点以下のチームが大半と、ハーフコートゲームがメインの戦術だった。そのなかで、サンズは速攻と3ポイントを織り交ぜた「ラン&ガン」スタイルで平均110得点近い攻撃力を誇り、ロサンゼルス・レイカーズやサンアントニオ・スパーズと白熱のライバル関係を築いた。 当時のサンズにはナッシュのほか、ショーン・マリオン、ジョー・ジョンソン、アマレ・スタッダマイアーとオールスター選手が揃っていたが、カンファレンス決勝の壁は越えられず。2007-08シーズンにダントーニHCが退任となり、「ラン&ガン」スタイルは頂点にたどり着けぬまま、終焉を迎えてしまった。 『TNT』の『Inside The NBA』で対談した2人は、「ラン&ガン」スタイルを極限まで追求しなかったことを後悔していることを明かした。 「我々はなぜ、バスケットボールコミュニティとして数学を理解しなかったのですか? 3ポイント成功33%は2ポイント成功50%よりいい。我々はなぜそれを知らなかったのですか?」 ナッシュにこう尋ねられたダントーニHCは、すべてが上手くいかなかったことを認めた。 「怖かった。『お前たちにはできない』『お前たちは勝てない』と言われていたからね。勝てなかった理由は、我々が自分たちの道を突き進まなかったからだろう。アクセルをもっと強く踏むべきだった」 近年ではステフィン・カリーとクレイ・トンプソンの“スプラッシュ・ブラザーズ”を擁するゴールデンステイト・ウォリアーズが5年連続でNBAファイナルに進出し、3度のリーグタイトルを獲得。速攻と3ポイントを主体とする彼らのスタイルは当時のサンズを彷彿させるものがあるが、ダントーニHCは自分たちが優勝していたかもしれない可能性についても語っている。 「それから我々(サンズ)は伝統的なスタイルに立ち返った。もし、自分たちの道を突き詰めていれば、ゴールデンステイトの前に我々がゴールデンステイトになっていただろう」 それに対し、ナッシュも「速くプレイせず、もっと3ポイントを打たなかったことが、僕らの成功を制限していたと思います」と自身の見解を述べている。 スポーツの世界に「たら」「れば」は禁物だが、当時サンズが極限まで「ラン&ガン」を追求していたら――。そう考えを巡らせるファンも少なくないだろう。