ついにあの男がコートに帰ってくる。 ゴールデンステイト・ウォリアーズ(29勝9敗)のクレイ・トンプソンが、日本時間1月10日(現地9日)のクリーブランド・キャバリアーズ(22勝17敗)戦で約2年半という空白の期間を経て復帰を果たす。
実に941日ぶり。復帰までの道のりは長く厳しいものだった。2019年6月14日(同13日)のNBAファイナル第6戦で、左ひざ前十字靭帯を断裂。そこから1年以上リハビリに費やし、復帰目前となった翌年の11月19日(同18日)には、ワークアウト中に今度は右足のアキレス腱断裂と度重なる悲劇に見舞われた。 負傷のニュースには多くのファンが悲痛の声を上げたが、当然ながら最も辛い思いをしたのはトンプソン本人だった。そんな瞬間が垣間見えたのが、11月28日(同27日)のポートランド・トレイルブレイザーズ戦での出来事だ。ウォリアーズが勝利した試合後、1人30分以上ベンチに残り座っていたトンプソン。選手はロッカールームに戻り、観客もほとんどが帰ったなか、頭からタオルを被り、仲間とともにプレイできない悔しさから涙を流していたのだ。その後、トンプソンを心配し戻ってきたステフィン・カリー、ドレイモンド・グリーン、そしてスティーブ・カーHC(ヘッドコーチ)に連れられてロッカーへと戻ったが、トンプソンのバスケットボールに対する情熱があふれ出たシーンだった。 その日トンプソンについて聞かれたカーHCは、涙の理由をこう説明している。 「過去2シーズンでどれだけのものを失ったかを、彼は考えずにはいられないんだ。彼は本当にバスケを愛しているからね。だから、プレイできずチームを助けられなかったのは、本当に辛かったと思う。彼は繊細かつ感情的で、とても人間的。練習が好きで、チームと戦いたいのに、それを2シーズンも奪われていたんだ。もちろん(今日のように)落ち込む日もあるさ」
怪我で離脱する以前、NBA屈指のツーウェイ・プレイヤーとして知られ、攻守にわたりウォリアーズの3度の優勝に大きく貢献したトンプソン。代名詞はカリーにも勝るとも劣らない3ポイントで、1試合最多3ポイント成功数(14)の記録を保持。それ以外にも第3クォーターまでで60点を挙げたり、1クォーターだけで37点を叩き出すなど、数々の伝説を残している。そんな稀代のシューターの復活は、現在リーグ首位の座を争うチームをさらに勢いづけるはずだ。 気になるのは、負傷以前に見せていたプレイを再現できるかだろう。これについては元チームメイトのマット・バーンズが、「クレイとステフにとってシュートを打つのは、自転車に乗るような感覚。復帰しても全く問題ないと思う」と完全復活に太鼓判を押している。本人も練習で3ポイントシュートを24本連続成功させるなど、「いい感じで状態は上がっている」と準備は万全のようだ。 カーHCによれば、出場時間は15〜20分程度になるという。限られたプレイタイムのなかで、トンプソンが活躍できるかは分からない。ただ一つ確実なのは、不屈の精神でコートに戻ってきたその勇姿は、多くの人に勇気を与えるということだろう。