誰もが認める“キング・オブ・バブル”。デイミアン・リラードの闘志は衰えない【杉浦大介コラム vol.31】

快進撃もここまでだろうか――。 8月22日、オーランドで行われたウェスタン・カンファレンス、プレイオフ第1ラウンドの第3戦でロサンゼルス・レイカーズに敗れ、ポートランド・トレイルブレイザーズは1勝2敗となった。第1戦こそ勝ったものの、トップシードのレイカーズに地力の差を見せつけられ始めた感がある。特に第3戦ではレブロン・ジェームズが38得点、12リバウンド、8アシストといよいよ全開モードになった兆しがあるだけに、今後はさらに厳しい戦いが待っていそうだ。 今シリーズの開幕前、NBAレジェンドのチャールズ・バークレーは「ブレイザーズがレイカーズに勝つ」と言い続けてきた。実際にブレイザーズの爆発力を評価する関係者は少なくなかったが、蓋を開けてみれば、ザック・コリンズの負傷離脱といったアクシデントもあって戦況は芳しくない。レブロン、アンソニー・デイビスの支配力は健在とあって、上位シードが順当勝ちを飾りそうな雰囲気が漂い始めている。 しかし、まだ終わったわけではない。絶好調のエース、デイミアン・リラードの存在に、微かな希望を見出すファンは多いはずだ。 「もっとひどい状況だったことだってある。次の試合に勝たなきゃいけないというだけだ。次、勝てばシリーズはタイ。そうなれば大丈夫だよ」 “デイム”なら本当にやり遂げてくれるかもしれない。本人の言葉通り、今夏のブレイザーズとリラードは、今よりもっと厳しい位置からも見事に這い上がって来たのだから。

レイカーズとのシリーズは1勝2敗と黒星が先行している。しかし、リラードにあきらめるという選択肢はない

シーディングゲーム最後の3戦で驚異の平均50点超え

ディズニー・ワールドの通称“バブル”で行われたシーディングゲームを通じ、リラード以上に輝いた選手はいなかった。再開後の8戦では平均37.6得点、9.6 アシストと活躍し、シーディングゲームのMVPを獲得。なかでも印象的なのは、8月8日のクリッパーズ戦に敗れて以降の鬼気迫るプレイだ。 クリッパーズ戦は大接戦になったが、第4クォーター残り18.6秒でリラードが2本のフリースローを外したことが響いてブレイザーズは惜敗。勝負強さで知られるリラードのまさかの失敗に、クリッパーズのベンチでもパトリック・ベバリー、マーカス・モリスといった選手たちは大喜びだった。この時点でブレイザーズはバブルで2敗目を喫し、追い上げもここまでと思ったファン、関係者がほとんだだったろう。 ただ、すぐに雪辱を誓ったリラードは、その後とてつもない大爆発を見せる。9日のフィラデルフィア・76ers戦で51得点を挙げると、2日後のダラス・マーベリックス戦では61得点。さらにプレイイン・ゲームズへの出場がかかった8月13日のブルックリン・ネッツ戦でも42得点、12アシストをマークし、波乱のシーディングゲームを締めくくった。最後の3試合でのリラードは、なんと平均51.3得点(FG成功率56.0%)、9アシスト。シーズン再開前は8位のグリズリーズに3.5ゲームだったチームを、一躍プレイオフまで押し上げる立役者となったのだった。

■ブレイザーズとグリズリーズのプレイイン・ゲームズを観る

チームメイトのカーメロも大絶賛

これまでのリラードは押しも押されもせぬスーパースターではあったが、リーグでも一握りの超人気選手とは言えなかったかもしれない。ポートランドという小規模都市に本拠地があること、ファイナル進出経験がないことなどが災いし、“クロスオーバー(全国区)の一歩手前”という印象があった。 そんなリラードが、パンデミック下での獅子奮迅の活躍によって話題の中心となっているのだ。なかでもネッツ戦でハーフコート付近から決めた超ロングジャンパー“ロゴ・スリー”はネット上でも拡散し、今夏最大級のハイライトシーンとして繰り返し流されるようになった。 その過程で、大ベテランのカーメロ・アンソニーからは「今まで一緒にプレイした選手で一番だ」という褒め言葉を頂戴した。『ESPN』に至っては、「現在のリラードはリーグのベストプレイヤーか」というウェブ上ディベートを展開。リラードが現役最高の選手かという問いにはやはり否定的な答えが多かったが、ニック・フリーデル記者のこんな答えに納得する人は多いのだろう。 「現時点で、リラード以上にチームにいて欲しいと思う選手はいない。彼はブレイザーズを押し上げ、プレイオフに進み、レイカーズを倒すために必要な自信をチームに植え付けた。リラードこそが“キング・オブ・バブル”だ」

カーメロに「今まで一緒にプレイした選手で一番」と言わしめたリラード。頼れるベテランとともに、1回戦突破を叶えられるか

「どこが相手でもチャンスはあると思っている」

もちろんいかに“キング・オブ・バブル”とはいえど、短期間にできることは限られている。シーディングゲームから瀬戸際の戦いを続けてきたあとで、プレイオフにじっくりと照準を合わせてきたレイカーズに勝つのは並大抵の難しさではない。 先述の通り、コリンズが今季終了のケガを負ったのに加え、リラードも第2戦で左手の人差し指を脱臼。リラードとのケミストリーの良さでも知られ、シーディングゲームとプレイイン・ゲームズの9試合で平均18.1得点(FG成功率50.4%)、11.4リバウンドを挙げたユスフ・ヌルキッチも疲れが目立つ。しばらく絶対に負けられない戦いを繰り返してきた疲労の蓄積と消耗が、そろそろ吹き出してきているのだろう。 ただし、そんな苦しい状況下でもブレイザーズに希望があるとすれば、やはりリラードの神通力なのではないか。 「レイカーズが第1シードなのには理由がある。世界最高の選手を擁しているんだからね。ただ僕たちも第8シードだからといって、簡単に負けるためにここまでハードに戦ってきたわけではない。どこが相手でもチャンスはあると思っているよ」 シーディングゲームのクリッパーズ戦後と同様、瀬戸際に追い詰められても“デイム”の闘志は衰えてはいない。 このままプレイオフの第1ラウンドで敗れても、再開後のリラードのプレイが素晴らしかったという評価が変わることはない。オーランドで最もステイタスを上げた選手であり、その劇的なプレイはファンに記憶されるはずだ。それに加えて、もしもここからレイカーズをさらに追い詰めるようなことがあれば――。その時には、“キング・オブ・バブル”は“レジェンド・オブ・バブル”となり、リラードの夏は長く語り継がれていくことになるのだろう。 プロスポーツは再開しても、依然としてコロナ禍の重苦しさが消えない。そんななか、人々は心からエキサイトし、感動できる劇的な何かを求めているのも事実だ。だからこそ、難しいのは百も承知だが、もう一度、リラードが主演をつとめるドラマが見たい気もするのである。


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杉浦大介:ニューヨーク在住のフリーライター。NBA、MLB、ボクシングなどアメリカのスポーツの取材・執筆を行なっている。『DUNK SHOOT』、『SLUGGER』など各種専門誌や『NBA JAPAN』、『日本経済新聞・電子版』といったウェブメディアなどに寄稿している。

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