オフに大型補強を敢行したフェニックス・サンズと、躍進した昨シーズンのメンバーの引き止めに成功したロサンゼルス・レイカーズ。八村塁(レイカーズ)と渡邊雄太(サンズ)の日本人2人が所属する両チームは、ともに開幕直前は優勝候補に挙げられていた。しかし、蓋を開けてみるとサンズは4勝4敗、レイカーズは3勝5敗とともに期待されたような戦績を残せていない。 そんななか八村と渡邊も、それぞれ新たな挑戦の時を迎えている。
八村はフリーエージェントになった今年7月に、3年5100万ドルでレイカーズと再契約を締結。また、その後は大黒柱のレブロン・ジェームズと共にトレーニングを実施し、充実したオフを過ごした。 しかし、開幕最初の3試合でキャリアワーストの平均14.7分、8.3点、FG成功率42.1%、3リバウンドと精彩を欠き、思うようなインパクトを残せず。起用法も基本的にジェームズのバックアップ役に限られ、試合終盤ではベンチを温めることが多かった。3戦目のサクラメント・キングス戦で初めて第4クォーターでコートに立ち、そのクォーターだけで8点を記録。浮上のきっかけを掴むが、その試合で左目を負傷。それ以後、脳震盪プロトコルにより4試合の欠場を余儀なくされた。
そんな八村は日本時間11月9日(現地8日)のヒューストン・ロケッツ戦で復帰し、シーズンハイの24点、8リバウンド、FG成功率71.4%(10/14)をマーク。オフェンスでは序盤から自らボールを要求するシーンも多く、アグレッシブに得点を狙いにいく様子が垣間見えた。また、ディフェンスでも積極的にリバウンド争いに絡み、ブロックも記録するなど攻守で奮闘した。 試合には94-128で敗れたが、八村は「休んでいる間、自分がどうやればフィットするかを考えながら試合を観ることができた。今日はよりハードにプレイし、ベンチからエナジーをもたらしたかった」とチームの力になる方法を模索していたことを明かし、それを可能な限り再現して見せた。そのパフォーマンスにはダービン・ハムHC(ヘッドコーチ)も「大敗のなかで希望の光は塁だ。試合はほぼ決していたが、試合勘を取り戻すために長くコートに立たせたが良い感じだった」と賛辞を送っている。 ベンチの平均得点でワースト2位(24.3点)に沈むレイカーズにおいて、八村の復帰は追い風になるはずだ。怪我でフルメンバーが未だ揃っていないチーム状況もあり、復帰戦で見せたようなエネルギッシュなプレイをコンスタントに披露できれば、自ずと出場時間も増えていくことが期待できるだろう。
出場機会が限られている八村とは対照的に、渡邊はここまで自己最多の出場時間を記録している。全8試合でプレイし、キャリアハイとなる平均19.9分出場とロールプレイヤーとして存在感を発揮。質の向上は必要だが、クローズアウトに来たディフェンダーに対してドライブを仕掛ける場面も増えるなど、NBAではこれまでに見せてこなかったプレイにもトライしている。 サンズのフランク・ボーゲルHCは「細部に注意を払っていて、集中力が高い。闘争心も強く、戦術を誰よりも理解している」と渡邊を称賛。全試合で第1クォーターから起用されていることからも、指揮官からの信頼が感じられる。
順調なスタートを切った渡邊だが、シーズンを通して安定した出場機会を確保するためにも、最大のセールスポイントである3ポイントの成功率向上は欠かせない。今季は成功率が34.4%と、44.4%を記録した昨季から大幅に落ちている。特に決めるべきワイドオープンのショットの精度低下(昨季51.8%→今季21.4%)は気がかりだ。 また、課題にも挙げられているオンボールディフェンスの改善も重要だろう。1対1の場面では抜かれて得点を許すシーンが散見され、相手チームに狙われることも少なくない。カバーリングは上手いだけに、ストッパーとしても貢献できるようになれば、3&Dとしてサンズにおいてもポジションを確保できるだろう。 八村と渡邊は日本時間11月11日(土)正午に、今シーズン2回目の直接対決を控えている。さらなるステップアップを期す2人の活躍に期待だ。 ■ロサンゼルス・レイカーズ対フェニックス・サンズ 日時:日本時間11月11日(土)正午 会場:フットプリント・センター 解説:佐々木クリス / 実況:加藤暁