球団社長としては能力のなかったマジック・ジョンソン

マジックの肩書きは「President of Basketball Operations」。バスケットボールオペレーション社長、つまりはチームの競技運営に関わる全て:GM任命やヘッドコーチ、選手のスタッフィング、他チームとの移籍交渉やFA選手リクルーティング、チームの強化戦略・方針策定等、の全権を委任されている職である。

チーム強化の全責任を負っているこの職務は相当な業務量とプレッシャーがかかるものであり、自チームのGMとは一蓮托生だ。日々他チームの球団社長やGM、選手のエージェント等との交渉、会食を重ねて他球団から細かい情報を仕入れたり、かなりの献身が強いられる業務。相手チームとの駆け引き、政治的な動きなども日常茶飯事であろう。

しかし当のマジックは、自身のサイドビジネス(ドジャーズの共同球団オーナーやベンチャー投資等)やレイカーズ以外の選手との交流に精を出し、選手強化の仕事はほとんどGMのロブ・ペリンカに任せていたという。辞任会見でも「ベン・シモンズを指導したい」「ドウェイン・ウェイドの最終引退試合に出席したい」が、今のポジションだと出来ないということに不満を持っていたようで、これではチームを何より一番に考えて強化策を練る球団社長は務まらないだろう。

唯一の功績である、レブロンをレイカーズに連れて来させた事は評価できるが、今や平均20得点以上を上げて他チームで大活躍するジュリアス・ランドル(現ニューオリンズ・ペリカンズ)やディアンジェロ・ラッセル(現ブリックリン・ネッツ)も早々に見切りをつけて手放すという判断ミス。ネッツで大活躍したディアンジェロに対しては、「レイカーズにいた頃は未熟だった」と、当時2年目で20歳だった選手を「未熟」だから放出したと発言した事は球団社長として選手を見る目が無いと言われても仕方なく、更にアンソニー・デイビス一人獲得するために「レブロン以外誰でも差し出す」姿勢も球団社長として疑問符が付く行動だった。

2年前のオフにFAでポール・ジョージを獲得し損ね、昨オフもレブロンの脇を固める陣容を全く作れなかった(シューターを取らず、US$20M近くの大枚を叩いて峠を越えたレイジョン・ロンドやジャベール・マギー、ランス・スティーブンソン等を獲得するという謎)のは、どう見てもチーム編成・強化戦略の失敗で、責任は球団社長にある。

どうやらマジックは自分がレイカーズにいる事とチームがロサンゼルスにある事で、黙っていても選手は自分達から来ると勘違いしていたのだろう。マジック自身が変われなかった事、これまでの「スマイル」と優しい人柄、皆から好かれる「マジック」でい続けたいと思っていた事が、マジック体制レイカーズ失敗の最大の原因だと考える。

今シーズンのレイカーズ 一体何があった⁉

コービー・ブライアントの引退を機に再建モードに入ったレイカーズは、その命運を魔法使い、アービン・「マジック」・ジョンソンに託す。2017年シーズン途中に突如マジックが球団社長に就任し、当時GMだったミッチ・カプチャックを即座に見切り、旧知の仲であるロブ・ペリンカをGMに就かせ、万全のマジック体制で新生レイカーズが始動。

数年で優勝チームに建て直すと意気込み、ドラフト上位でポテンシャルの高い若手を次々と指名し、昨シーズンオフにはついに待望のレブロン・ジェームズもチームに加入し船出は順調。今年こそウェストの強豪チームの仲間入りを果たし、来シーズンにはタイトルコンテンダー(優勝争いするチーム)になる、そんな目論見だったはずだ。

とにかく今シーズンのレイカーズはジェットコースターの様な、目まぐるしいシーズンで、上げればキリがないほど負の要因があったのは間違いない。しかし蓋を開けてみれば、シーズン当初こそ順調にプレーオフ進出圏内にいたものの、クリスマスゲームのレブロンの怪我をきっかけに失速。レブロン欠場中の17試合で11敗と負け込み、その後も度重なる有望若手選手たちの怪我(ロンゾ・ボール35試合、ブランドン・イングラムは30試合、カイル・クーズマは22試合欠場)。トレード期限直前に起きたアンソニー・デイビス移籍騒動に端を発したケミストリー崩壊。チームのシューティング成功率(3P成功率はリーグ全体で29位)とディフェンスの悪さ(1試合平均失点はリーグ全体で21位)、ルーク・ウォルトンHCに対するレブロンの不信感、そして挙げ句の果てには、マジック自ら職場放棄とも取れるレギュラーシーズン直後の「球団社長辞任」。

しかし本当のレイカーズ失墜の大きな原因は何だったのか?それは間違いなくレイカーズ王朝復活のために救世主としてレイカーズにやってきた2人、球団社長マジック・ジョンソンと「キング」レブロン・ジェームズと言わざるを得ない。

影の見え始めたレブロンの破壊力と影響力

かつてキャブス時代のチームメイトだったケビン・ラブは、レブロンとプレーする事に関して「相当なResilience(耐性・逆境を跳ね返す力)が必要」と話している事から分かる様に、レブロンはマイケル・ジョーダンやコービー・ブライアントと似たように、自分自身にも厳しいが、時にはそれ以上に他選手に厳しく当たる事で有名だ。ただそれでも、他の選手が「レブロンに付いていきたい」「レブロンとプレーしたい」と思うのは、それはレブロンが紛れもなく世界最強のバスケット選手だったからであり、レブロンに付いていけば「勝つ」事が約束されていると思えたから。

しかし今シーズンのレブロンはどうだろうか?これまででは無かった怪我での長期欠場(キャリアワーストの55試合出場)や頻繁に見られる怠慢なディフェンス、クラッチタイムでのシュート・プレーミスの多さも目立ち、また年齢的な衰えも指摘され始め、これまでの圧倒的な存在感、影響力が薄れてきている。

そこに加えて、今シーズンはチームメイトへの明らかにフラストレーションの溜まった仕草やポーズ、ベンチでの孤立やチームメイトへの距離を置く姿勢など、若手選手の見本となるエース・リーダーとしての資質にも疑問符を投げかけられている。

また、今シーズンレイカーズの決定的なケミストリー崩壊を助長した「アンソニー・デイビス移籍」騒動は、レブロンの大失態と言える。

表向きのニュースは、「アンソニー・デイビスが2020年以降の契約延長拒否を正式にチームへ伝えた」という事だが、この発表のタイミングはトレード期限の約2週間前だった。ちょうどレイカーズの調子が上がらずトレードでレブロンの脇を固める陣容をどう作れるか、というニュースが多く占めていた時期。しかもデイビスのエージェントは、レブロンの高校時代からの旧友であり、「LRMRマーケティング」というレブロンのマーケティング会社を一緒に立ち上げたリッチ・ポール(レブロンのエージェントでもある)。この騒動の全てをレブロンが裏で糸を引いていたと言われても仕方がない。

実際にこのトレードに関してどこまでレブロンが具体的にトレード選手まで上げてマジックと話したかは定かではないが、この騒動の期間、レイカーズがレブロンを除く全ての選手をトレード候補としてあげたのは確か。若手選手に向けて「今はSNSで言われていることに構わずプレーに集中しろ」と気にするそぶりは見せたが、当のトレード候補だった選手達は集中できるはずもなく、この騒動を境にチームワークは崩壊。3月に入ってから5連敗を期したところでプレーオフの可能性もほぼなくなった。

トレード期限直前でクリッパーズに移籍した22歳の有望センターのイヴァン・ズバックは「クリッパーズでのプレーが楽しいし、チームの仲が良く家族みたい」とレイカーズとのギャップを語っていたり、ロンゾ・ボールもシーズン後のあるメディアでのインタビューで「トレード候補にみんなの名前が載っていてあの期間はみんなソワソワしていた」と話している。

珍しく「レブロン劇場」のシナリオ通りに進まなかった今シーズン。34歳と年齢による肉体的衰えと怪我によって、絶対的キングの存在感が揺らぎ始めてきたからこそ、レブロン自身が新しいリーダーに生まれ変わらなければ、どんなに陣容を固めようと来シーズンのレイカーズ王朝復活も、またおとぎ話に終わってしまうだろう。

DJ Kim

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