サンタクロースのような髭がトレードマークのジェームズ・ハーデン。アンソニー・デイビス同様、最初は少し変わった選手がいると違和感を覚えた人もいるかもしれないが、今や止めようのないスコアリングマシーンへと成長を遂げた。

その得点力はマイケル・ジョーダンやコービー・ブライアントと比較されるレベルにまで到達し、今季は王者ゴールデンステイト・ウォーリアーズをチャンピオンの座から引きずり下ろす算段をつけているに違いない。驚異的な個人技でヒューストン・ロケッツを栄冠の座へと導くか。そんなロケッツの絶対エースの活躍ぶりに迫りたい。

現役No.1スコアラーへの軌跡

ジェームズ・ハーデンの得点力は既に学生時代から定評があり、NBA入団後もその力を疑う者はいなかった。1966年に設立されたシアトル・スーパーソニックスがオクラホマシティへ移転し、2シーズン目となる2009年にオクラホマシティ・サンダーへの入団を果たしたハーデン。

シーズン得点王に輝いたケビン・デュラントをはじめ、ラッセル・ウェストブルック、ジェフ・グリーン、サージ・イバカなど、タレント溢れる若い布陣を要するサンダーは、彼の入団年から一気にウェスタンカンファレンスの強豪へとのし上がることになる。ハーデンは数年間、ベンチからシックスマンとしての出場が続き、時に限られた出場時間ではあったものの、試合の流れを変える貴重な存在としてチームを支え続けた。

2011-12シーズンには初戦で前年優勝チームのダラス・マーベリックスを4連勝でスウィープし、カンファレンス準決勝ではコービー・ブライアント率いるロサンゼルス・レイカーズに快勝。カンファレンスファイナルではリーグ最高勝率を収めたティム・ダンカン、トニー・パーカー、マヌ・ジノビリ率いるサンアントニオ・スパーズを破り、早くもファイナル進出を果たすことになる。

ファイナルではレブロン・ジェームズ率いるマイアミ・ヒートに敗れはしたが、デュラント、ウェストブルック、ハーデンというビッグ3は、ヒートのレブロン、ドゥエイン・ウェイド、クリス・ボッシュのスリーキングスに次ぎ、爆発力のあるトリオとしてリーグに強いインパクトを与えた。

この活躍が続けば、きっと数年以内に必ずやサンダーに優勝トロフィーがもたらされる、そのように強く期待を寄せたファンも多いはずだ。しかし、ファイナル進出後のオフに早くもサンダーはハーデンを放出する決断を迫られる。

2012年、新シーズン開幕3日前にして、ハーデンはヒューストン・ロケッツへトレードされた。ハーデン、そしてサンダー側も契約延長には前向きだったものの、既にデュラント、ウェストブルックとMAX契約を結び、イバカとも高額契約を済ませていたサンダーにとって、ハーデンを繫ぎ止めるほど十分なサラリースペースが残っていなかったのだ。

ハーデンへ対しては最大限譲歩した金額を提示したものの、結局折り合いがつくことはなく、交渉決裂の数時間後に合計7選手、3つのドラフト指名権を絡める大型トレードが発動された。

トレードの数ヶ月前にシックスマン賞を受賞し、五輪アメリカ代表に選ばれた男は、急転直下で新天地でのプレイを強いられることになったわけだが、それはハーデンにとって、真のキャリアの幕開けであり、才能が開花される転機となった。

トレード直後、開幕戦から得点を量産したハーデンは、平均得点を前年から約10得点もジャンプアップさせ、初のオールスター出場、オールNBA 3rdチームへも選出されるなど、移籍初年度からスーパースター並みの活躍を見せた。ハーデンの場合、急激な成長というよりも、実力を発揮できる環境が整ったことがスタッツ向上の主要因だが、何よりもチームを勝利に導く力があることを証明できたことが、周囲の評価へと繋がった最も大きい要因だろう。

独特なリズムと巧みなボールハンドリングでゴール下まで一気に突き抜けるペネトレイション。変幻自在なステップバックから繰り出されるスリーポイント。インサイド選手がカバーにいくとアリウープパスに繋がり、ガードがダブルチームに向かえば他のシューターへのアシストに繋がってしまう。

ファウルをもらうスキルもずば抜けており、仮にシュートが不調でもコンスタントに20得点を稼ぐ力を持っている。もはや止めようのないハーデンのオフェンススキルはリーグNo.1と言っても過言ではなく、1on1で止められる選手ではないと、他チームのディフェンダーは口を揃えて言う。咋プレイオフ、王者ゴールデンステイト・ウォリアーズに王手をかけた実力は本物だったのだ。

2014年にはデュラントが持ち前の得点力でMVPを獲得。2017年にはトリプルダブルマシーンへと成長したウェストブルックがMVPを受賞。そして昨年、初の得点王を獲得し、チームをリーグ最高勝率へと導いたハーデンが遂にMVPの座を勝ち取った。

サンダー時代、最も爆発力のあるビッグ3として君臨したトリオは、それぞれ新しい環境で全盛期を迎えている。もしも彼らが同じチームでプレイしていたら、どれほど末恐ろしいチームになっていたのだろうと寒気がするが、今は最高レベルのライバル対決を繰り広げ、リーグを大いに盛り上げてくれているので、その姿を見るのもまた面白い。

急浮上するチームと共に、2年連続MVP獲得なるか

昨シーズンに王者ウォリアーズをあと一歩まで苦しめたロケッツは、シーズン開幕前にはウォリアーズと並び、ウェストの優勝候補として挙げられていた。トレバー・アリーザ、ルーク・バー・ア・ムーテという守備の要を失ったものの、ラストピースとしてカーメロ・アンソニーを加え、話題性としては抜群のスタートを切った。

しかし、予想に反してチームは低迷。案の定、守備が崩壊し、平均失点が昨季と比較し7点近くも跳ね上がった。また、カーメロもシステムにフィットせず、僅か10試合で見切りをつけられる始末で、勝率は5割を切り、一時はウェスタンカンファレンスで14位まで順位を下げた。その後、主力のクリス・ポール、クリント・カペラの欠場もあり、優勝はおろか、プレイオフ進出すら厳しいチーム状況に、今シーズン中の浮上は難しいのではないかという声が囁かれ始めた。

しかし、一人の男がこの流れを断ち切ることになる。絶対的エースのハーデンが孤軍奮闘し、得点を量産することでチームを牽引。12月13日のロサンゼルス・レイカーズ戦から32試合連続で30得点オーバーを記録し、ABAとNBA統合後の30得点以上の連続試合数の記録を大きく塗り替えた。

コービーの16試合、デュラントの12試合、そして、ジョーダンの11試合という記録を簡単に飛び越え、平均得点もジョーダンの1986-87シーズンの平均37.1得点に迫る勢いから、最近では歴代No.1スコアラーの議論に仲間入りを果たす形となっている。既に今シーズンも50得点以上の試合が6試合、うち60得点以上の試合もあるのだから驚きである。チームも上位に食い込んできており、遅ればせながらロケッツは前評判通りの立ち位置に軌道修正できた形となった。

現在、勢いに乗るチームの出場メンバーを見ると、ハーデン、ポール、ゴードン、オースティン・リバース、ジェラルド・グリーンと明らかにガード多用型のスモールラインナップだということが分かる。パワーフォワードのP.J. タッカーも登録上の198cmより明らかにアンダーサイズで、新加入のケネス・ファリードも十分なサイズがあるとは言い難い。それでも彼らは同カンファレンス上位チームのウォリアーズ、デンバー・ナゲッツとの相性も良く、直近ではイーストの上位チームにも連勝を収めている。

そのアンダーサイズをカバーするカギは間違いなくスリーポイントにある。ロケッツはスリーポイント試投数、成功数ともに2位のミルウォーキー・バックス、3位のウォーリアーズを大きく引き離しトップに躍り出ている。2本に1本はスリーポイントを打つチームスタイルは、ストレッチ4、5スタイルを取り込むチームが多い現リーグでも群を抜いている。

シュートが苦手なケネス・ファリードですら加入以降はスリーポイントを打ち始めており、チームはインサイドの物足りなさをものともしていない。12月19日のウィザーズ戦では26本のスリーを沈め、1試合スリーポイント成功数で歴代新記録を樹立したことも記憶に新しい。No.1スコアラーの座を争うハーデンを中心にまとまりを見せたチームは、必ずやプレイオフを盛り上げてくれる存在となるに違いない。

ハーデンのステップバックスリーは今や十八番と呼べるプレイだが、最近ではその度合いが過ぎ、12月18日のユタ・ジャズ戦では、ハーデンをガードするリッキー・ルビオに対し、ステップバックを2回繰り返したような動きでファウルをもらうという事態が発生した。明らかにトラベリングなこのプレイは波紋を呼び、後日NBAの審判の公式Twitterアカウントで誤審だったと認められたくらいだ。

他にも、ハーデンはオフェンスに重きを置くことからディフェンスはサボりがちで、その様子を何度もNBA選手にとって不名誉な賞となるShaqtin’ A Foolで取り上げられている。
話題性と言う意味でも抜群のセンスを持つハーデンだが、それほど皆からの注目度が高い選手であることは間違いない。

トヨタ・センターで髭のグッズをつけ、ハーデンを応援するのも良いが、実はハーデンはオフの間にプロ・アマリーグの「Drew League」にもよく参戦している。こちらのリーグは入場料が無料なので、気軽に、しかも間近でハーデンのプレイを見ることが可能なのだ。是非、その機会があれば、審判でも捉えられない彼の巧みなステップにも注目しながら、NBAの得点王を観戦していただきたい。

NBAライター ゆーきり

幼少期の10年間をアメリカで過ごす。初めて行ったNBA観戦で間近で見る選手に強い衝撃を受けNBAにどっぷりのめり込み、自身もバスケットボールを始める。ファン歴は20年を超え、これまでの自身の知識を発信しNBAファンを増やしたいという想いから、ブログ「NBA journal」を開設。現地の情報をもとに、わかりやすくもマニアックな内容を届けることを意識し、日々奮闘している。

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