「この夏、プレシーズンを通じてルイは素晴らしかった。練習の成果が出ているし、今シーズンが楽しみだ」 ワシントン・ウィザーズのブラッドリー・ビールが、シーズン開幕前の会見で4年目を迎える八村塁への期待を口にした。エースの言葉通り、八村はプレシーズン4試合で平均14.8点、7.5リバウンドと安定したパフォーマンスを披露。シーズン開幕後もセカンドユニットの得点源として、2試合目から6戦連続で2桁得点を記録。日本時間11月2日時点でチーム4位の平均11.1得点とまずまずの滑り出しを見せている。
とはいえ、あくまでも“まずまず”という印象が拭い切れないのも事実だ。2019年のNBAドラフト1巡目全体9位でウィザーズに指名された八村は、今季がルーキー契約の最終年。ドラフト同期ではザイオン・ウィリアムソン(全体1位指名。ペリカンズ)、ジャ・モラント(同2位。グリズリーズ)、RJ・バレット(同3位指名。ニックス)、ディアンドレ・ハンター(同4位。ホークス)タイラー・ヒーロー(同13位。ヒート)、ジョーダン・プール(同28位。ウォリアーズ)などが、すでに大型契約を締結しているなか、八村は開幕までにチームとの延長契約を結ばず、来夏には制限付きFAとなる。 八村も3シーズンで通算平均13点、5.2リバウンド、1.5アシストと、数字上は及第点以上の活躍を見せている。ただ、延長契約が結ばれなかったということは、現時点でチームの期待値に到達していないということなのだろう。もちろん安定した得点力があると同時にまだ伸び代のある八村に、来夏ウィザーズを含めどこかから声がかかるのはほぼ確実だ。しかし、チームを背負うような存在ではなく、もしかしたら代替が利く選手というのが、現時点におけるウィザーズのフロント陣の評価なのかもしれない。さらにステップアップしてその評価を覆すためにも、日本の至宝にとっては今季が正念場となる。
シックスマンという立場上、八村に求められるのは試合の流れを変える活躍だ。昨季から控えに回った八村について、ウィザーズの解説を務める元NBA選手のドリュー・グッデンは「ルイは自分の新たな役割に慣れ、快適にプレイしているように見える」と評価している。しかし、今季は20点以上を記録した試合がまだなく、出場時の得失点差を表すプラスマイナス値も-12.4でチーム最低。直接的に勝利に貢献するようなパフォーマンスはまだ見せられていない。 得意のミッドレンジに加えてペイントへのドライブ、ポストプレイ、3ポイントシュートと様々な得点スタイルを持つだけに、それを試合を通して発揮できるかがポイントになってくるだろう。ウェス・アンセルドJr.ヘッドコーチの起用法にも影響されるところではあるが、八村を使わざるを得ないような活躍を見せたいところだ。
ここまで30分以上の出場がない八村だが、その要因はディフェンスにあると言われている。昨季はリーグワーストレベルの守備力だったウィザーズだが、今季はディフェンシブ・レーティングがリーグ10位(110.1)と健闘中だ。しかし、その中で八村は守備での貢献度を示すDES WS(ディフェンシブ・ウィン・シェア)が、平均10分以上出場している選手中チーム最下位に落ち込んでいる。 その影響からかクラッチタイムでは、デニ・アブディアやウィル・バートンに出場機会を許す場面が多い。指揮官も「オフェンス面ではかなりの成長は見られるが、まだディフェンス面で改善が必要」と守備での貢献を求めている。 開幕4戦で3勝と出だしは良かったウィザーズだが、現在は3連敗中と元気がない。シックスマンとしてその悪い流れを一変させるような活躍を攻守で見せることができるか。 ■【THE MATCHUP】ブルックリン・ネッツ対ワシントン・ウィザーズ 日時:日本時間11月5日(土)午前8時 会場:キャピタル・ワン・アリーナ 解説:佐々木クリス / 実況:永田実