チャンスを生かした元得点王。脇役として輝きを放つカーメロ・アンソニー【杉浦大介コラム vol.11】

“ザ・ガーデン”で喝采を浴びたかつての英雄

2020年1月1日。ニューヨークで行われた今年初の試合で、最大の歓声を浴びたのはかつてのヒーロー、カーメロ・アンソニー(ポートランド・トレイルブレイザーズ)だった。今季開幕の時点で、そんなシナリオをいったい誰が想像できただろうか。 昨年11月、ブレイザーズの一員としてNBA復帰を果たしたカーメロは、以降、予想以上の働きでチームに貢献してきた。現地1月20日のゴールデンステイト・ウォリアーズ戦を終えた時点で、平均16.2得点、6.3リバウンドをマーク。特に今季6週目(11月25日~12月1日)には、平均22.3得点、7.7リバウンド、2.7アシストをマークし、35歳にしてウェスタン・カンファレンスの週間最優秀選手賞に輝いている。 そんなカーメロが、古巣で盛大なスタンディング・オベーションを浴びたのが、先述した元旦のゲームだった。オールスター選出10度というリーグ史に残るスコアラーの帰還に、普段は厳しいニューヨーカーも盛大な拍手を送ったのである。 「ファンの愛情が感じられた。会場のファン、そして街全体が、『帰ってきたんだ』という気持ちにさせてくれた」 2017年まで6シーズン半にわたり在籍したニックスを離れて以来、カーメロがマディソン・スクウェア・ガーデンでプレイするのはオクラホマシティ・サンダー時代に続いてこれが2度目だった。久々の“ザ・ガーデン”への登場で、この時点で今季最多の26得点をマーク。昨年11月中旬、クリスタプス・ポルジンギス(ダラス・マーベリックス)の凱旋試合の際には大ブーイングを浴びせ続けたニックスファンも、カーメロのことは大歓声で迎え入れた。 試合前の選手紹介時から始まり、ボールを持っても、得点をしても、ニューヨーカーの愛情表現は途切れることがない。チームは敗れたものの、カーメロも気持ち良さそうにコートでの時間を過ごしていたのが印象的だった 「感情を説明するのは難しいよ。これまでもずっと愛してもらっていたと感じている。何年も過ごしたアリーナで、愛情を感じられるのは良いものだった。ただバスケットボールがプレイしたかった。このコートに立てるのは特別なことだよ」

“誰からも必要とされない期間”を経験

ここに辿り着くまで、カーメロは厳しい時間も味わってきた。2017年のオフにニックスからサンダーにトレードされるも、新天地で大きな成果は挙げられなかった。昨季はヒューストン・ロケッツと契約したが、10試合に出場したのみで戦力外に。その後はなかなか所属先が見つからず、NBAキャリアはもう終わったかと思えた。 「(所属チームが決まらない間も)俺は常に自分を信じていた。自分を信じ続け、精神的に準備した。強くあり続け、やらなければいけないことをぼやるのがどれだけ難しいかを、人々は理解できないと思う」 ニューヨークでカーメロはそう述べていたが、他のインタビューでは“一時は復帰を諦めかけた”、“心が折れかけた”ことも認めている。これまで常にスター街道を歩んできた稀代のスコアラーにとって、“誰からも必要とされない期間”が辛いものだったことは、想像に難くない。 全盛期のカーメロは紛れもないスーパースターではあったが、突っ込みどころも少なくない選手ではあった。アイソレーションを執拗に好み、平均4アシスト以上のシーズンはゼロ。もともと周囲を巻き込むことが不得手だった上に、得意とするミッドレンジゲームは現代のNBAで非効率的とみなされるようになったのであれば、加齢とともに職場を見つけるのが難しくなったのは理解できる。サンダー時代には控えへの“降格”を笑い飛ばしたこともイメージ的にマイナス。そうした悪い流れの中で、NBAからフェイドアウトしても誰も驚きはしなかっただろう。 しかし、今季ブレイザーズでビッグマンのケガ人が続出したことが、カーメロ復帰への追い風となった。パウ・ガソルが退団し、ザック・コリンズ、ユセフ・ヌルキッチも長期離脱。フォワードの層が慢性的に薄くなった状況下で、辛抱強くコンディションを保っていたカーメロに白羽の矢が立ったのだ。

キャリア晩年に訪れた苦しい時期を乗り越え、NBAに返り咲いたカーメロ。献身的なプレイでブレイザーズを支える

新境地を見出したベテラン・ロールプレイヤー

ついに戻ってきたNBAのビッグステージ。復帰後のカーメロは先述の通り、多くの人が予想した以上にハイレベルのプレイを続けている。3ポイント成功率(37.4%)は2014-15シーズン以降ではベスト。特筆すべきは、今のカーメロは自身の力と立ち位置を理解し、主軸とは言えない立場を受け入れているように見えることだ。 平均得点はデイミアン・リラード、CJ・マッカラムについでチーム3位。もうオールスターレベルの選手ではなくとも、エースの背後で得点力を供給するベテラン・ロールプレイヤーとして新境地を見出した感がある。しばらくプレイできず、自分を見つめ直した期間が、今のカーメロにプラスに働いている部分もあるのだろう。 「私は彼が“勝者”ということはわかっている。批判されることもあるが、彼は毎日ジムにきて練習する選手。毎日だ。休みは取らないし、可能な限り多くのゲームをプレイしてきた」 1月3日のウィザーズ対ブレイザーズ戦の前のこと。カーメロがNBA入りしたのと同じ2003年にナゲッツのアシスタントコーチとなった、ウィザーズのスコット・ブルックスHCはそう述べていた。 付き合いの長いカーメロを絶賛するブルックスHCの気持ちはわかるが、“勝者”という部分に同意しないファンも多いかもしれない。これまで多くの栄誉を手にしてきたカーメロだが、ファイナル進出の経験はなく、ニックス時代もチームを上位へ導けなかったからだ。 しかし、再びコートに立てる喜びを感じさせている今季は、そんな評価を多少なりとも変えるチャンスではある。ケガ人続出の影響もあって、ブレイザーズはウェスタン・カンファレンス10位と低迷中。それでもタレントは依然として豊富なだけに、今後への期待感は消えていない。リラード、マッカラムとともに、カーメロも後半戦でチームをプレイオフ圏内に引き上げる手助けができれば――。 「ブレイザーズが彼にチャンスを与えたことは大きい。(カーメロは)あと2~4年はしっかり活躍できる選手だと私は思っている」 今季がカーメロにとっての“お別れツアー”になると考えている関係者が少なくない中で、ブルックスHCは現役続行に太鼓判を押していた。恩師の言葉通り、帰ってきたスコアラーは来年以降もコートに立ち続けるのか。キャリアの終盤にきて、心身両面で成熟した姿を誇示できるのか。その答えはわからない。ただ、現時点でひとつだけはっきりしているのは、今では本当に多くのファンがカーメロの帰還を喜んでいて、まだまだ活躍してほしいと願っているということである。

杉浦大介:ニューヨーク在住のフリーライター。NBA、MLB、ボクシングなどアメリカのスポーツの取材・執筆を行なっている。『DUNK SHOOT』、『SLUGGER』など各種専門誌や『NBA JAPAN』、『日本経済新聞・電子版』といったウェブメディアなどに寄稿している。

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コメント(20件)

  • 020
    あつし
    1か月前

    いい記事!

    0
  • 019
    SGA推し
    1か月前

    OKC時代にやって欲しかったわ。頑なにベンチ起用を拒んで駄々こねてたし、UTAとのPOのシリーズでは大事な場面では下げられて不貞腐れていた。だから今でもあまり良い印象は無い。

    1
  • 018
    太郎
    1か月前

    勝てないスターより勝たせる脇役の方が語り草になる。メロ頑張って👍

    4
  • 017
    シマ
    1か月前

    ベテラン、経験があるが故の葛藤、年齢からくる肉体的、精神的な衰えそれらの事実を受け入れてから改めてカムバックするメロの姿に称賛と尊敬を覚えます❗

    0
  • 016
    シャイシャイ
    1か月前

    メロ!!!

    1
  • 015
    ワチワチワチントン〜🍟🐉
    1か月前

    メロ、カッコええっす💪

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