【NBA Rakuten解説者インタビュー】佐々木クリスさん 「河村選手の成長スピードは本当に目覚ましいものがある」

「NBA Rakuten」の解説でもお馴染みのバスケットボールアナリストの佐々木クリスさんにインタビュー。2024-25シーズンにおける注目チームや、河村勇輝と八村塁について語ってもらった。※インタビューは12月18日、NBAカップ決勝戦の解説後に実施。

NBAカップはマニア心をくすぐる大会

――決勝戦の解説をしていただきましたが、今回で2回目となったNBAカップはいかがでしたか? 佐々木:1年目は名門ロサンゼルス・レイカーズが優勝し、長らくリーグの顔だったレブロン・ジェームスがあれだけ意欲を燃やして、史上初の試みであるトーナメントで優勝を飾ったことも相まって、ビジネス的にも、ファンのエンゲージメント的にも、大きな成功を収めたと思います。その流れが2年目に繋がったと感じています。 アナリストとして見ると、レギュラーシーズン中の12月開催ではあるものの、少し先のプレイオフを覗き込むような、選手たちが気迫あふれるプレイを見せてくれたのが印象的でした。2年目も大きな成功と言えるでしょう。観る側としても、非常に充実感を得られるトーナメントでした。 ――ノックアウトトーナメントに入ってからは、負けたら終わりの状況で、選手のプレイにも変化があったように見えました。 佐々木:そうですね。レギュラーシーズン中はどうしても移動や連戦で、自分たちのコンディションにしか意識を向けられない時間帯が多いのですが、ノックアウトトーナメントに入ってからは、プレイオフほどではないにしても、対戦相手に合わせた戦略や、より詳細なスカウティングが見られるようになりました。例えば、ヒューストン・ロケッツがオクラホマシティ・サンダー戦で普段と違う守り方をしたり、各チームが相手の強みを消すために様々な工夫を凝らしていました。 また、チーム作りの観点で見ても、今日のサンダーのように、今のチームに何が足りないのかを、プレイオフさながらの緊張感の中で見つけることができる機会になったと思います。ヘッドコーチやGM(ジェネラルマネージャー)が、トレードなどのチーム編成を考える上でも、非常に参考になるのではないでしょうか。そういった意味でも、マニア心をくすぐる大会だったと思います。

ノックアウトラウンドでは、一発勝負ならではの緊張感あふれる戦いが見られたNBAカップ

「NBAはディフェンスをしないからつまらない」という先入観を覆すサンダー

――NBAカップが終わり、レギュラーシーズンの前半戦も終盤に差し掛かってきていますが、ここまでで印象に残ったチームは? 佐々木:たくさんありますが、まず西ではサンダーですかね。昨シーズンもウェストで1位を獲得し、今シーズンは多くの人がエースのシェイ(ギルジャス・アレクサンダー)をMVP候補に挙げ、そしてチームも西の1位になると予想する中で、その期待にきっちり応えているのはすごいことだと思います。 現在のサンダーのディフェンシブ・レーティングは103.1(スタッツは12月17日時点のもの)で、これはリーグ平均よりも9ポイントも低い数字です。トラッキングデータがある過去28シーズンを見ても、平均との開きが一番大きいシーズンになるかもしれません。 NBAをあまり見ない方の中には、「NBAはダンクや3ポイントばかりで、ディフェンスをしない」というイメージを持っている方もいるかもしれませんが、NBAカップで対戦したロケッツやマーベリックスとの試合を見ても分かるように、サンダーは「NBAはディフェンスをしないからつまらない」という先入観を率先して覆してくれるチームだと思います。

――東のチームはどうでしょうか? 佐々木:東は難しいですね。さすがボストン・セルティックスという感じもしますが、もちろんクリーブランド・キャバリアーズも面白い。ただ、キャバリアーズは年内のスケジュールを見ると、1位は堅いだろうなと思っていました。本当に試されるのは年明け以降、プレイオフに入ってからだと思います。 直近で言うとアトランタ・ホークスはここ1か月ぐらいで特に勢いがあり、上位争いをかき回す存在になりつつあります。ジャイアントキリングを起こす可能性も、十分に秘めていると思います。 これまではトレイ・ヤングの個人技に頼るチームでしたが、今シーズンは、チームとしてよりバランスの取れた戦い方ができるようになっているように感じます。大きな違いで言うとジェイレン・ジョンソンのような、プレイメイクもできる万能フォワードが現れたことです。MVPは難しいかもしれませんが、オールスターのポテンシャルを持った選手ですね。時に彼がバックアップポイントガードのような役割をこなすこともあります。 また、ベンチスコアもリーグ上位に位置しています。これまでトレイ・ヤングに頼る部分が大きかったですが、彼が絶好調でなくても、チームとして力を発揮できているのは大きな成長です。彼らの進化には、改めて大きな期待をしてしまいます。

昨季王者セルティックスや、絶好調のキャバリアーズに対しても勝利を挙げているホークス

河村選手の適応スピードは想像をはるかに超えている

――日本人選手では、河村勇輝選手(メンフィス・グリズリーズ)が今シーズンからNBAに挑戦しています。ここまでの活躍をどう見ていますか? 佐々木:河村選手は2ウェイ契約ながらも、NBAのコートで存在感を示しています。渡邊雄太選手も1年目は15試合程度、2年目でも18試合程度しか出場機会がなかったことを考えると、河村選手の成長スピードは本当に目覚ましいものがありますね。NBAのコート内外での文化、環境への適応力は想像をはるかに超えていますね。 ――ここまで期待以上の活躍をしている河村選手が、今後NBAの本契約を勝ち取るために必要なことは何でしょうか? 佐々木:河村選手は自身で「ホップ、ステップ、ジャンプ」という3か年計画を立てているそうです。1年目はGリーグ、2年目は2ウェイ、そして3年目に本契約。そのホップを飛び越えて2ウェイ契約を勝ち取ったわけですから、ある意味ここからは全てボーナスポイントだと思います。 Gリーグでは彼のスピードについていける選手はいませんし、アシストもGリーグでトップです。彼のコートビジョンは、NBAの中でも突出しています。その中でもNBA定着、本契約に向けては、ペイントアタックやペイント内での得点力が重要になってくると思います。 NBAでは193cmのガード選手や、ウイングスパンが210cmもあるフォワードの選手などとマッチアップすることがあります。Bリーグでは185cmのガード選手に対してシュートまで持ち込むことができていたのが、NBAの選手はより高い運動能力とサイズで対応してくるので、シュートを打つことすらままならない状況もあるでしょう。そこをどのように打開していくかが、今後の課題だと思いますね。

目標となる本契約獲得に近づくためにも、河村にとってペイントアタックはカギとなる

――八村塁選手は、レイカーズで主力選手として定着しています。彼の活躍についてはどう見ていますか? 佐々木:河村選手が挑戦してくれたことで、NBAを見始めた日本のバスケットボールファンも増えたと思いますが、改めて日本のスターである八村選手が、まだ他の日本人選手が到達していないレベルで、安定して活躍しているのは素晴らしいことだと思います。 レイカーズのチーム事情もあり、35分、40分と出場する試合も珍しくなく、NBAのコートで長いプレイタイムを得られることは、バスケットボール選手にとって一番のKPIだと思います。それだけレイカーズからも期待されているでしょうし、彼のようにサイズとフィジカルを兼ね備えた選手は、ロスターにあまりいないので、彼が安定して、ディフェンスで成長できるかが、今のレイカーズの伸び代になっていると思います。 ――最近ではディフェンス面でのタスクが増えているように見えます。 佐々木:そうですね。相手の攻撃の起点となる選手に対するディフェンスの選択肢が少ないという状況から、八村選手をボールマンにつけ、オールスイッチで数的有利を与えないように守備をする、という戦術をJJ・レディックHCは採用するようになりました。 チーム全体のディフェンシブ・レーティングは大きく向上しているわけではありませんが、八村選手がそのようなディフェンスの戦術の一翼を担うというのは、非常に重要なことだと思います。スクリーンマネジメントや、より高いコミュニケーション能力が求められるタスクもこなしていくことで、八村選手はさらに成長していくでしょう。

NBA観戦は身を委ねて楽しんで

――最後に、12月も終わりに近づき、まもなくクリスマスゲームがありますが、注目している試合やポイントなどあれば教えてください。 佐々木:やはりレイカーズ対ウォリアーズは、レブロン・ジェームズとステフ・カリーというNBAの顔として活躍してきた2人が激突するので注目です。 また、ミネソタ・ティンバーウルブズ対ダラス・マーベリックスも、西の覇権争いに加わってくるであろうチーム同士の対戦なので見逃せませんね。今はまさに、NBAの中で世代交代が起こっている最中だと思うので、アンソニー・エドワーズとルカ・ドンチッチといった、次世代のスターたちのプレイも必見です。 さらに、ウェンバンヤマのような新たな才能が、クリスマスゲームという特別な舞台で、どのようなパフォーマンスを見せてくれるのかも楽しみです。また、試合そのものとは別ですが、クリスマスゲームでは新しいシグネチャーシューズを披露する選手もいたりするので、そういう点にも注目したいですね(笑)。 クリスマスゲームは、カップ戦とは少し意味合いが違ってくると思いますが、NBA選手にとっては特別な舞台です。そういった高揚感も、画面越しに感じられるのではないでしょうか。 ――プレイだけでなく、そういった試合を取り巻く状況や、選手たちの物語にも注目すると、よりNBAを楽しめそうですね。 佐々木:そうですね。ハイライトに出てくるような、NBAの超人的なプレイは誰が見てもすごいと感じるものだと思います。NBA初心者の方も、NBAを観戦する際は細かいことは気にせずに、身を委ねて楽しんでもらえればと思います。 私の仕事は、そこから一歩、二歩先に引きずり込むこと。ハイライトだけでなく、そのプレイに至るまでのプロセスや、選手たちがどれだけ知性的で複雑な駆け引きをしているか、そこまで見られるようになると、よりバスケットボールを楽しめると思います。中継を楽しみながら、そういった点にも注目していただけたら嬉しいです。


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